うそつき、うそつき/清水杜氏彦


うそつき、うそつき (ハヤカワ文庫JA)
うそつき、うそつき (ハヤカワ文庫JA)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年10月刊。初出は早川書房2015年11月刊。
第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。
首輪型嘘発見器の装着を義務付けられた国を舞台に、非合法な首輪除去技術を持った少年の苦悩を描いた物語です。
「苦悩と成長」と帯にはあったけれど、これを成長譚として読むのはオススメできないかなぁ。
様々な公的サービスと紐付けられ、命すら首輪に握られたディストピアSFとしては面白かったけれど、正直この後味はめちゃくちゃ苦手。
うーん、面白かったけどモヤモヤする・・・・・・

☆あらすじ☆
国民管理のために首輪型嘘発見器着用が義務付けられた世界。少年フラノは非合法の首輪除去で日銭を稼ぐ。強盗犯、痣のある少女、詐欺師など依頼人は様々で危険は日常茶飯事だ。だが彼にはある人のためにどうしても外したい首輪があった。それがフラノを首輪と彼自身の秘密へ導く……愛を乞う少年が辿り着く衝撃の結末とは? 小説推理新人賞とダブル受賞でデビューした超大型新人による第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。

以下、ネタバレありの感想です。

 

「自身に対し、疚しさを感じているか」を基準として、装着者が嘘をつけばランプが赤く光る「首輪」。
国民はその装着を義務付けられ、公共交通機関や各種福祉サービスなどを首輪で紐付けることで政府は行政を運営している。
そして首輪を外す行為は絶対に許されず、首輪の破壊行為を首輪が感知すれば治安局が駆けつけるだけではなく首輪に内蔵されたワイヤーが装着者の首を締め付けて命を奪う。
さらに週に一度保全センターでバッテリーを交換しなければやはりワイヤーが作動するため、国民は外国に逃げることもできない。

 

ひや〜〜〜〜ディストピア〜〜〜〜!

 

この作品の世界観が明かされる度に、あまりの窮屈で非人道的な管理社会っぷりにゾッとしました。
恐ろしいのはこんな世界なのに暴動も起きず人々が普通に生活していること。
首に縄をかけられた状態だから仕方ないにしても人間の適応力ってやばいなと思わずにいられません。
ワイヤー内蔵ってことが文字通り致命的だけど、それ以前にこの首輪は嘘発見器なんですよ?
自分が嘘をついたら、それが文字通り「真っ赤な」嘘だってことが相手にバレバレなんですよ??(しかも鏡がなければ自分自身は確認できない鬼畜仕様)
嫌すぎる・・・・・・わざとランプを赤く光らせてクソ客に対応するマニュアルがあるホテルとかでてきたけど、そんな殺伐とした世界で生きていくの辛すぎる・・・・・・

 

さて、そんな恐ろしい世界で、非合法に首輪を除去する仕事に手を染めているのが主人公・フラノ
物語は18歳現在の彼と、まだ仕事を始めたばかりの16歳の頃の彼のエピソードを交互に語りながら、「この世界で首輪を外そうとすること」に対するフラノの葛藤と苦悩を描いていきます。

 

これがまぁ鬱々とした話でして。
首輪を除去しようとする(正確には外殻だけ残して嘘発見器、ワイヤー、バッテリーを除去)フラノの行為は「首輪の破壊行為」に他ならず、その失敗は依頼者の死に直結するわけです。
フラノの除去作業は常に成功するとはいえず、何人もの死を生み出した「失敗」を踏み越えながら、フラノは先へ先へと進んでいきます。
絶対に攻略できない首輪を装着した親友を見殺しにしてしまったり、良かれと思って首輪を外した少女を死に追いやったりしながら。

物語の中で語られるエピソードの多くはフラノの心に焼き付いた失敗談ばかりなので、作品全体の雰囲気は憂鬱なもの。
それに加えて、フラノの未熟な独り善がりの報いとか(ユリイの話はほんときつかった)、誰も彼もが首輪のあるなしに関係なく「うそつき」ばかりだとか、もう読んでるだけで気持ちが落ち込んでしまう・・・・・・

 

その雰囲気は最後まで変わることなく、本当にこれは「成長」の物語だったのかな?と首を傾げたくなります。
だって、彼はこの物語の中で様々な真実に触れた結果、何を手に入れたというのでしょうか?
知りたくもない嘘を知り、見たくもない赤いランプを見て、自分の信じた正義の間違いを知り、そこから何を学んだというのでしょう。

なんだろうなぁ。

首輪除去という行為に対する師匠の言が全て正しかったようなラストがきつい。
この狂った監視社会の揺るぎなさも、叶わなかった「ほんとうは生きたい」という願いも、なにもかもがきつい。

 

もっと頑張れば何か他にも読み取れるのかもしれないけれど、あまりにも救いがなさすぎて、もはやフラノについて考えるのが辛いです。
フラノのやってきたこと、彼の人生の意味とは何だったんだろう。
自分の過ちを知ることが「成長」だったのかな・・・?
それとも生きたいっていうシンプルな答えを見つけること・・・?

フラノがいなくなっても変わらず訪れる朝が、この先も変わることがない世界を象徴しているようです。
それってあまりにも残酷すぎませんか・・・・・・。
この虚無感、私は苦手。完全に好みの問題ですが、少年主人公でジュブナイルっぽさのある作品には少しでもいいから救いと未来をみせてほしかった。大人の欺瞞に子どもが押しつぶされる姿を見るのは心が痛すぎます。フラノはまだ18歳なんですよ・・・・・・

 

全てを失っても前を向いた主婦の話が、せめて過去じゃなく現在の話だったら読後感もマシだったかもしれないなぁ。(この後またフラノはドン底に堕ちることを考えると、あの主婦のくだりって何の意味があったんだ?)

 

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