異人街シネマの料理人3/嬉野君


異人街シネマの料理人(3) (ウィングス・ノヴェル)
異人街シネマの料理人(3) (ウィングス・ノヴェル)

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2017年10月刊。
祖父から受け継いだミニシアターを守る女子高生が主人公のシネマ・ミステリー第3弾。
いよいよ物語が大きく動きはじめました。
登場人物たちが日本を飛び出し舞台が世界へと移ったことで、どことなく『金星特急』を彷彿とさせるスケール感が。楽しい・・・!

☆あらすじ☆
冬基とカイの不和は決定的に。もはや対決は避けられないのか?舞台は日本を離れ、ヨーロッパ、そして中央アジアへ―。美味しいご飯と名画と謎。シネマティック・ミステリー緊迫の第3巻!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

ついに壊れてしまった桃の平穏な日常。
そのきっかけとなったのは、冬基の母が遺した日記でした。

日記にあった「冬基を愛せない理由」に、何とも苦しい気持ちになります。
でもあんなに分かりやすく「母親が好きな甘えん坊の息子」を演じられたら不気味に思う・・・かも・・・・・・いや、だって、7歳でしょ・・・?
冬基、なんて末恐ろしい坊っちゃんだったんだ・・・・・・

 

ただ、それ以上に気分が悪くなったのは自殺の理由だったりして。

剛太郎おじいちゃん、もはや悪魔だよ・・・・・・女を何だと思ってるんだ・・・・・・
これは孫息子から憎悪のこもった足蹴りを食らっても仕方ないでしょ。
敬老の精神とかこの人には持てないです。むりむり。

 

そんなわけで母の抱いていた恐怖心と祖父のクソ外道っぷりのダブルパンチによって、ポーンとネジが外れてしまった冬基。
真実を知るために桃を引き取った彼からすれば計画通りだし、ある程度予想していたことではあったのかもしれないけれど、それでも内心のダメージは計り知れないほど大きかったことでしょう。
冬基は母の気持ちを最初から知っていたというけれど、「平気だったはずがない」「辛くないはずがない」という桃の推測どおりの心境になっているのでは?無自覚かもしれないけれど。
人の心の機微に誰よりも敏いのが桃だから、きっと彼女の言葉が正しいんだろうなぁ。

 

なんだかんだ言って冬基が桃のことを気にかけているのは、打算がもちろんあるにせよ、彼もまた「家族」というものに対する複雑な感情を持て余してるからなのでは・・・・・・とか思うのは穿ちすぎでしょうか。
クズの祖父、クズの父、被害者であり愛を与えてくれなかった母、愛を奪った養子の弟。
こんな悲惨な家庭環境で育った冬基にとって、素直に血の繋がりを(ちょっと嬉しそうに)認めることができる桃は、彼自身も予想していなかったほど大きな存在になっているんじゃないかとも思うんですよね。
終盤で桃と同年代の女の子に無意識に優しくしようとしているのって、そういうことじゃないの??

 

冬基は桃の存在をカイに対する「触媒」に仕立てあげたわけだけど、果たしてそれはカイに対してだけ効果のあるものだったのか。
桃を甘く見たらいけない。あの子は作中最も恐ろしい女の子だと思うのですよ・・・!(ワクワク)

 

ついつい冬基のことを語りすぎてしまったけれど、一方、カイの事情についても大きく踏み込む展開に突入しました。
公安が出張ってきてテロリスト云々の展開になってきたのはドキドキするのだけど、ちょっと待って??その前に待って???
サラッと流されたけど桃ってテジェン人のハーフなの?????(その話、前巻までに出てきました?)
もしかして桃とカイは異父兄妹だったりする????
血筋的な意味でも、桃をかすがいにして3人が本当の兄妹として繋がったりするのでしょうか。

 

前巻の感想では「カイと桃のラブ的な何かが・・・」とかいう願望を吐いてしまったけど、どうもこのシリーズは「家族」の物語として描いていくような気がしてきました。
あくまで「2人の兄と1人の妹」が自分たちの血筋と素性にまつわる謎を解き明かしていく物語なのか。
桃が大切にしたいのは「家族」なのだから、そこに色めいた感情は介入しないのかもしれない。
それでも良いなぁと今回の桃の健気さを見て感じました。

 

冬基が祖父への復讐を果たし、カイの目的の不穏さが隠しきれなくなりになり、事態が動き出したことで崩れつつある家族の絆。

果たして桃は家族を取り戻すことができるのでしょうか。
上に書いたように桃の存在感はカイだけじゃなく冬基にとっても大きくなっていそうだし、あとは彼女の頑張り次第だとも思うんですよね。

華麗なる女スパイのごとく(真礼は勿論すごいけど、桃のちょっとしたアシストはJKの機転じゃない・・・!)公安を出し抜いた桃なら、きっと2人の兄の手綱も取れるはず!
日本を飛び出し、ヨーロッパと中央アジアへと舞台を広げ、因縁の地にたどり着いた第3巻でしたが、さてさて物語はどこへ向かうのか。
なんだか内容的に次で完結でもおかしくない気がするけれど、続きもすごく楽しみです。

 

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