ルパンの娘 (講談社文庫)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
評価:★★★★☆
2017年8月刊。初出は講談社単行本2015年8月刊。
互いの素性を知らないまま恋に落ちた、泥棒一家の娘と警察一家の息子。
ロミジュリな恋の行方を描く一方で、ヒロインの祖父が殺害される事件の謎を追っていく物語です。
ラブストーリーの筋で進みつつ、濃すぎる二家族がわちゃわちゃするホームドラマなミステリーでした。
両家族共に実に生き生きしています。家族みんなが入り乱れるクライマックスのドタバタ感はすごく楽しかった!
謎も二転三転して面白いのだけど、ラストは「お前らいい加減にせぇよ」と思わずにいられませんw
そのくせ憎めないところがタイトル負けしてなくて良し!
☆あらすじ☆
三雲華は恋人の桜庭和馬の家に挨拶に行くこととなった。ついに桜庭家に到着した華は、玄関の家族写真を見て唖然とする。全員が警察の制服らしき服装に身を包み、それぞれ敬礼のポーズをしている。華が育った三雲家は、代々泥棒を生業としており、一家全員が盗人だ。その数日後、荒川の河川敷で男の焼死体が見つかり、和馬は現場に急行した。その被害者は華の祖父、三雲巌だった。次々と出てくる新たな謎に1ページも目が話せない!
以下、ネタバレありの感想です。
代々泥棒稼業を営む一族である三雲家の娘・三雲華。
ある日、華は公務員だと聞いて付き合っていた恋人・桜庭和馬が捜査一課の刑事であると知るとともに、彼の実家が代々警察官を輩出している警察一家だと知らされるのです。
将来を考えていた和馬といずれ別れなければならないと暗い気持ちを抱える華。
一方、華の祖父・巌が何者かによって顔を潰されて殺害されたことから和馬は事件の捜査に乗り出すことになり、華もまた独自に祖父の事件の真相を追うことを決意し――というストーリー。
ロミジュリ的なラブロマンス、ほっこり賑やかなホームドラマ、二転三転するミステリーの3本の軸が絶妙に交錯してひとつの物語を紡いでいる作品でした。
話の中心にあるのは「誰が、どうして巌を殺したのか」という謎なのだけど、その真相に迫るなかで巌の過去や三雲家と桜庭家の意外な接点が浮かび上がってくることに。
過去が現在の状況に影響し、華と和馬を取り巻く状況もどんどん変化していき、胸の痛くなる決別から痛快な家族ドラマへと繋がっていくストーリーはとてもとても良かったです。
この作品、ロミジュリ的なラブを期待して読んだのだけど、思った以上に家族の物語として秀逸。
結婚するカップルを取り巻く2つの家族の事情が面白すぎるんですよねぇ。
片や泥棒一家、片や警察一家ということで、両家族の性質は真逆。
個人主義で自由に生きてる三雲家に対し、桜庭家はすぐ家族会議を始める堅物な家庭。
それでも共通するのはそれぞれの家族に対する温かい愛情だと思います。
おせっかいなところも多々あるのだけど、その遠慮のなさが逆に心地良く感じました。どちらの家族も魅力的!
そんな両家が暗黙のうちに協力して連携プレーを魅せるクライマックスは最高でした〜
めちゃくちゃドタバタしてるんだけど、人情味あってとても好き。
特に華の両親は最高です。自分の親だと嫌だけどw
ミステリー自体も面白かった!
「顔を潰された死体」が出てくるとすぐ入れ替えトリックを思いつくんだけど、「えっ、本当に死んだの!?」っていうところからの二転三転がグイグイ読ませる。完璧に騙されましたw
推理が少し荒っぽいかな?と思う箇所も、最終的には全部綺麗に詰めてあったと思います。
ただ、正直、おじいちゃんたちの思惑は「もて遊びやがって・・・!いい加減にしろ!」とか思いましたけどね!
なんだろうなぁ、この手のひらの上で転がされた感じ。
確かにキューピッドだけど「面白そうだと思った」が8割方本音でしょ?なんて迷惑な!
悔しいなぁ。なんか憎めなくてかわいいな、とか思ってしまうから余計に。
ヒールなのに愛嬌ある感じがまさしくルパン。
ぐぬぬってなるのも楽しい結末でした。
久しぶりにたいまどうがくえんを読み返しました。
あの雰囲気がやっぱり好きです(笑)
茶一こりんさん、コメントありがとうございます。
対魔導学園!
懐かしいです〜〜(というほどでもないですねw)
私も最初から読み返したいなぁ。
あの作品はじっとりとしたダークさがとても好きでした!