ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!?/仲村つばき


ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)

ひみつの小説家の偽装結婚 恋の始まりは遺言状!? (コバルト文庫)

評価:★★★★☆
2017年10月刊。
面白かった〜!
ビーズログ文庫で活躍中の仲村つばきさんのコバルト文庫デビュー作。
これぞ少女小説!と言いたくなる丁寧で王道の偽装結婚ロマンスでした。
がけっぷち小説家の未亡人と、亡夫の遺言により彼女の再婚相手に選ばれた騎士。
故人によって引き合わされた二人が、共通の趣味を通じて少しずつ互いを理解し絆を深めていく物語です。
ヒロインが「ひみつの小説家」であることが物語の可愛いスパイスとなっていたと思います。オチまで可愛い!

☆あらすじ☆
覆面小説家のセシリアは、没落貴族の両親から逃れるために後見人の騎士ヒースと名目上の結婚をしていた。だがヒースが亡くなり、遺言でヒースの部下クラウスと再婚させられる羽目に。その上次の小説大賞を獲らなければ契約を切られる危機に陥る。が、最初は喧嘩腰だったクラウスがセシリアの小説のファンだとわかり、ふたりの気持ちは次第に近づいて…。
にせもの夫婦の間に芽生えた、本物の恋。文学少女と堅物騎士のラブロマンス!

以下、ネタバレありの感想です。

 

故人が残した手紙が少しずつ届き、それが残された生者を新しい人生へと導く。

 

感動系ストーリーでたまに見かけるモチーフですが、本作では「いくつかの遺言状」という形で、主人公・セシリアに対して亡き夫・ヒースが遺した言葉が少しずつ届けられていきます。
「夫」といっても保護者という意味でしかない名目上の結婚相手。余命がはっきりしていたぶん、生前にきちんとお別れを済ませていたのでしょう。
「死者からのお手紙」という設定の割に物語は感傷的になりすぎず、ヒースの残した優しいお節介にクスリと笑える雰囲気だったのがすごく良かったです。悲しいのは苦手なので・・・w

 

さて、元夫が遺した茶目っ気たっぷりの「遺言状」によって再婚相手を用意させられてしまったセシリア。
女流作家が不利なお国柄ゆえに「セオ」という男性名義を使って小説家をするセシリアは、作品が売れないせいで次の小説大賞を獲らなければ契約を切られるという崖っぷち状態。
今までの自分の作風でいいのか、どんな物語を書けばいいのかと迷うセシリアの前に現れたのが再婚相手である騎士・クラウスなのです。

 

ヒースの遺言状に振り回され第一印象も良くない者同士だった二人が、読書という共通の趣味と偽りの結婚生活の中で少しずつ心を通わせていく様子は王道ながら丁寧で、とても素敵でした。
読書を通して互いの存在が新たな居場所になっていることを表現しているくだりが特に好き。

クラウスにとって読書とは、箱庭だった。
本のページをめくることは、美しく手入れされた庭を逍遥する行為に似ていた。景色を楽しませてくれるが、どこへもつながることはない。
(中略)
セシリアの言葉は、箱の外へ繋がる鍵となる。
それはまさに青天の霹靂だった。(181頁)

クラウスの「読書は箱庭」という表現、すごくしっくりきます。私にとっての読書もそういうところがあるから。
近くに語り合える人がいなくても読書はとても楽しめるし、その完結した世界も大好きだけど、誰かと感想を楽しく共有できた時は「物語の世界がさらに大きく広がっていく」感覚があるんですよね。あれはなんとも言えない快感だったりする。

だから読書会が二人の絆を築いていくっていうの、本当にすごく理想的な関係だし素直に良いなぁと思えました。本の趣味が似ているとか羨ましい!

 

「セオ」の熱心なファンであるクラウスに正体を隠したままというハラハラドキドキもすごく楽しかったです。
色々な理由があって正体バレを避けていたわけだけど、あの瞬間の彼女にとって「作家としての自分を肯定してくれる存在」がどれだけ救いになったことでしょう。
「正体をバラすべきでない理由」があったのは、天とヒースが厳しい人生を生き抜いてきたセシリアへ与えたご褒美だったんじゃないかな。正体が分かっていたらあそこまで素直な賞賛はもらえなかったわけですし。
ラストのオチも可愛かったなぁ。「ずるくないか?」っていうクラウスの恨み節にキュンとしましたw

 

本当に素敵な少女小説だったなぁ〜(*´∀`)
セシリアの持つ感傷的な部分とクラウスの持つ感傷的な部分が癒やし合い、互いの夢を叶えていくというロマンチックなストーリーは最後まで心地よかったです。

 

とはいえ物語のMVPは間違いなくヒース!

名脇役は音もなく去り、カーテンコールで舞台上に姿を現すのがおきまりだ。

最高かな???

 

仲村さんの次回作も楽しみに待っています。

 

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