妻を殺してもバレない確率/桜川ヒロ


妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)
妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

評価:★★★★☆
2017年10月刊。
未来予測を確率で表示するシステムにまつわる、7つのオムニバスストーリー。
どの短編もあたたかくて優しいお話ばかりでした。
表題作の妻を殺そうとする夫の話と、事故で歩けなくなった陸上選手の話が特に好き。
未来予測というギミック以外はベタなストーリーラインなのだけど心理描写が上手くて登場人物たちにスッと感情移入してしまうんですんですよね。特に後者のエピソードは泣いた・・・

☆あらすじ☆
第5回ネット小説大賞のグランプリ受賞作
未来に起こることの確率が調べられるとしたら、あなたは何の確率を調べますか?
時代遅れの政略結婚で、好きでもない女性と夫婦になってしまった男性。彼女との暮らしに苦痛を感じていた彼は、あるときから『妻を殺してもバレない確率』を調べるようになった。確率は低いが、うまくいけばこの無意味な生活を終わらせられる……。
『確率』が繋ぐ人と人との不思議な縁。
表題作以外にも「明日、世界が終わる確率」「あの子が同じ電車に乗ってくる確率」「彼が奥さんと別れる確率」「娘に彼氏ができる確率」「空から女の子が降ってくる確率」「私が一生独身の確率」など、読めば心が晴れやかになる7つの短編からなるオムニバス作品。

以下、ネタバレありの感想です。

 

政略結婚で「妻」となった女性を愛せない夫が、未来予測システムで戯れに調べ始めた「妻を殺してもバレない確率」。
弾き出された数値を堂々と妻に告げる夫と、そんな彼に余裕たっぷりに「殺される前に陥落させればいい」と飄々と応じる妻の、不思議と心地よい会話が楽しめるエピソードでした。

このお話、妻に対して複雑な気持ちを抱く夫の変化がすごく丁寧で好きです。

最初はただ頭から拒絶して、でも妻自身を知っていくうちに興味を抱きはじめて、だんだんと二人の時間に愛おしみを感じ、しかし自分の本心に気づいた時には「今さらどうすればいいのだ」という葛藤を抱く羽目になる。

不器用で自業自得だとも思うけれど、彼の繊細な心に共感もできるから頑張ってほしいと思わずにいられません。因果応報みたいな終盤の展開では、ようやく素直になれた夫の想いの強さに感動しました・・・・・・

このエピソード、なんか見覚えがあると思っていたのだけど以前にWEB版を読んでいたみたいです。
ほぼ忘れてたから初読みたいな気持ちで楽しみましたw

読み終わって「すごく良い話だけど、ここまでそっけない夫を思い続けた妻の気持ちが知りたかったなー」とWEB版のときも思ったんだったなぁ。

 

怖い顔がコンプレックスの男子高校生が、生徒手帳を拾ったことをきっかけに強気な少女と出会い、彼女の抱えている事情を知っていく――というエピソード。

「あの子が同じ電車に乗ってくる確率」とかどうやって弾き出してるんだろうと思いつつ、低い数値に消沈する心が数値の上昇とともに高揚していく表現がすごく好きです。
これは他のエピソードでも同様なのだけど、この作品の特色だと言えるんじゃないかな。確率が確信に変わる瞬間の気持ちの昂ぶりに私まで盛り上がってしまうんですよね。

 

将来有望な陸上選手が、事故によって歩くことすらできなくなった。
そんな彼女が抱える絶望感を端的に表現しているのが、手慰みで調べた「明日、世界が終わる確率」。

今の自分に価値を見つけられない絶望感を、50%の確率で明日滅びるらしい世界の運命に委ねる。
その投げやりな振る舞いに心が痛くなります。死にたい死にたいって嘆くよりも生きるか死ぬかを確率任せにする無気力さが辛い。積極的に死にたいっていうよりも「もうどうにでもなぁれ」って感じの方がわかりみが深い・・・・・・

そんな彼女を救う「タマちゃん」との交流には、じんわりと心が温かくなりました。
正直ベタなんだけど、タマちゃんの優しさが伝わってくるのと絶望から心を癒やされていく主人公の心情に感情移入しすぎてラストはポロッと涙がこぼれました。こういうの弱い・・・・・・

しかし父は許すまじ。

 

好きな人は既婚者でした――というエピソード。

主人公の詩織がわざと片思いの信吾さんと奥さんを不仲にさせようと誘導して自己嫌悪におちるシーンが印象的でした。
なんてズルいことを・・・と思うし、その主人公の行動が即座に「彼が奥さんと別れる確率」に反映されてるのが怖すぎて。なんというか、自分が狙った方向に進んでかを確認するのに便利なアイテムですよね。怖い。

ちなみに不倫モノは苦手なのでラストはホッとしましたw
失恋で少しだけ自分を好きになれた詩織がその後ちゃんと結婚できる相手と出会えたと分かるところも含めてスッキリ。

 

ボーイ・ミーツ・ガールの定番ネタも、未来予測システムにかかれば数値によって予測が立てられるんですね!

このエピソードは特に何か思うところはなかったのだけど、進路や将来に悩む少年少女の繊細さがすごく丁寧に描写されているところが好きでした。

 

娘との仲が上手くいかない悩める父親の物語。

VRのSNSって近未来SFって感じあるな〜とか思ったけど、よく考えたらPSVRが発売された今、やろうと思えば【TOY-BOX】って近いうちに実現できるのでは?
せっかく買ったPSVRはあんまり使ってないんだけど、こういうVR型SNSなら興味ある!!

このエピソードはとにかくパパの可愛さが詰まってました。実際、こんな喧嘩腰でコミュニケーション取ろうとしたりネトストみたいなことしたりネカマ化した父親とか嫌われるだろうけどw

「当たり前だろう。親子なんだから!」にはキュンとした〜

 

ひぃ〜〜〜w
なんて怖い確率を調べるんだww

このエピソード、結婚紹介所の成果を報告する女子会の様子が『深夜のダメ恋図鑑』を思い出した楽しかったです。男を値踏みする女はダメなんだと思うけど、バサバサ切っていく様がなんか楽しくてw

冒頭に繋がるオチも良かったなぁ〜
少女漫画な出会いと少女漫画な再会は、ベタだけど、ベタだからこそ良い!

 

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