語り部は悪魔と本を編む/川添枯美


語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)
語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年9月刊。
ラノベ作家デビューを目指す青年と、彼の恋人である担当編集者の奮闘を描く物語。
これまで読んできたラノベ作家モノでも出版界隈の厳しいお話はたくさんあったけれど、本作はとりわけシビアにエグく感じました。
主人公の扱いは私が読んだなかでは一番酷かった気がする。
夢があるんだかないんだか・・・・・・でもこの作品の心理描写は好きです。リアルなつらみを感じる。

☆あらすじ☆
恋する二人vs悪魔編集長!? 今””一番応援したい””出版業界の恋と戦い!
拾い上げ作家の中村雄一は、ある日理想に限りなく近い女性、絵美瑠と出会い、交際することになる。作家と編集者としても頑張っていこうと誓い合うも、二人の前にはデビューを阻む悪魔のような編集長が立ちはだかる!

以下、ネタバレありの感想です。

 

私がこれまで触れてきたラノベ作家モノの中でも、なんだか嫌な感じのエグさがあるな・・・・・・と思ってしまったのは主人公・中村雄一の経歴のせいなんでしょうね。

ラノベ作家デビューを目指す22歳のフリーター。

この一文に当てはまる作家の卵はきっと他にもいるんだろうなぁ。
別に作家を志していなくても雄一の気持ちは容易に想像できるから、「俺もう二十二歳かよ」という言葉に詰め込まれた雄一の焦燥感が真に迫って感じられるのかもしれません。

 

更にその焦燥感にエグみを感じさせるのは、デビュー前でありながら編集者に3年間も飼い殺しにされてきた、という事実。
こんなことって本当にあるの・・・?
就職することもなく、他の出版社に投稿することもなく、ひたすら神田の下について読まれもしない原稿を3年も書き続けてきたのは雄一自身の選択の結果ではあるのだけど、それにしたって酷くない・・・?
いや、就職して働きながら・・・っていうことなら、実際にこういうことも多いのかな?
ワナビではないデビュー前作家の扱いがにわかに気になってきました。
ラノベ作家モノでデビュー前を扱った作品ってあんまり読んだことがなかったし、あっても主人公は高校生(そして学生時代にデビューを決める)とかだったり。
だからこそ雄一の置かれてきた状況にゾッとしてしまいます。こわいせかいですね・・・・・・

 

「人生をかけてラノベ作家を目指す」と書けば聞こえは良いけれど、その夢を追うことの不安感や焦燥感を正面からとても丁寧に描いていく作品でした。
正直、本作を読んでラノベ作家を目指したいと思う人がいるのか少し気になる。「とりあえず就職だけはしとくかな・・・」って思う人は多そう。
そう思わずにはいられない話がとても多いんですよ・・・・・・昔の知人と音信不通とか彼女との収入格差とか。
そのへんシビアにリアルでひやぁ〜〜ってなりましたww

 

「夢を追うこと」の負の側面を丁寧に丁寧に掘り下げていく一方で、「夢を追うこと」の純粋さや熱さ、格好良さも描かれていくのだけど、バランス的には負の側面に少し傾いてしまうイメージ。
ネガティブな話と同じくらいポジティブな話もリアル寄りにしてほしかったかな〜
微妙に理想論っぽく終わった気がするのは、奮起!→デビューの間が空白にされちゃったからでしょうか。ダメ出しからのリテイクをもっと見たかったかも。

 

あと、なんだかんだ言って神田の手のひらの上っていうのがやたら嫌な後味になるんですよね。
このひと、すごい人なのかもしれないけれど私の中の編集者のイメージは悪くなったなぁ・・・・・・
編集者が片手間に叩き潰して生き残ったら作家、みたいな。こえーよ!

 

それはさておき、雄一と恋人・絵美瑠のラブコメはすごく好みでした。

マンガみたいな出会いで恋に落ちて、偶然にも仕事のパートナーになって、ふたりで「悪魔」に立ち向かって絆を深めていく――

王道のラブロマンスって感じで、読んでてニヨニヨしまくり。仲良しなふたりがとても可愛かったです。
作中で「人間の女性を美化した偶像」云々とか言われていたけど絵美瑠は割とそういうとこありますよね。
あの性格の美人で過去に何もないとか夢が詰まってるよ!
でも絵美瑠が男性経験豊富だったら複雑な気持ちになったに違いないので、このオチにバンザイです。

 

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