錬金術師と異端審問官はあいいれない/藍川竜樹


錬金術師と異端審問官はあいいれない (コバルト文庫)
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評価:★★★☆☆
2017年10月刊。
平民出身の成り上がり異端審問官と空気の読めない貴族令嬢が、異端の疑惑がある猟奇事件の謎に挑むミステリー。
オカルト事件を科学捜査で解き明かすミステリーって好きなんですよねぇ。本作も世界観を壊さない程度に科学的アプローチを試みているのは良かったです。司祭ヒーローの清濁併せ呑む感じも好きですね。男女バディっていうのがすでに好き。
ただ、ヒロインの一部行動に「ん??」と引っかかったのは残念だったり・・・・・・
ちなみに糖度はほんのり程度ですが、ラストの切なくて優しい余韻は素敵でした。

☆あらすじ☆
異端審問官のジルベールは猟奇事件に関わっていると噂される悪名高き貴族、ヴォワール辺境伯レオンを生け贄を用いて黒魔術を行った疑いで告発する。法に守られた貴族を裁く絶好の機会だと勇むジルベールだが、異端であるかどうかを客観的に判断する錬金術師のマリーは、現時点では、証拠が足りないと追加調査を行うことを進言する。融通の利かないマリーと共に再調査に向かうジルベールだが?KY令嬢と平民出エリートが猟奇的事件に挑む!凸凹コンビの錬金ミステリー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

養父母を異端の濡れ衣によって殺された過去を持ち、通常の法で裁けない悪徳貴族を裁くために異端審問官となった平民出身の司祭・マティアス
侯爵令嬢という肩書を利用するつもりで錬金術師・マリーを指名したマティアスは、空気を読まず融通がきかないマリーに辟易しながらも、彼女と一緒にとある猟奇事件の調査を行うことになるのです。

 

科学の光でオカルトの闇を照らす、というタイプのミステリーって楽しくて好き。
本作も大げさなギミックこそなかったけれど、科学ミステリーの面白みはあったと思います。
金髪の少女に異常な執着をみせる変態辺境伯とそれを告発しようとする身内の男爵の関係性も、ベタに見せて少し捻ってあるのが楽しかったです。

 

ただ、最後のアレは個人的に納得できないなぁ。
レオンが異端審問の罠に引っかかったのって、薬を使った上でマリーが言葉で誘導したからですよね?
錬金術師(本作では科学者と同じニュアンス)としての倫理感が強くて「白を黒と言うことはできない」と言い張るマリーの頑なさが好ましいと思っていたのに、白だったものを無理やり黒にして証拠にしちゃうのはアリなんだ・・・・・・

うーん、うーん、嫡出偽装の暴露で止めておいた方がスッキリした気がするんですよねぇ。
無理やり言わせた感のある「神の冒涜」は、もっと他のやり方はなかったのかとモヤモヤしました。

 

前話で少し触れた、マリーの母の死を引き起こした異端事件の謎を解き明かすエピソード。

マリーのためにお膳立てするマティアスの何気ない優しさがかっこよい。
探偵役はマリーだけど、マリーにできない根回しとかマリーのミスをカバーしたりとか、マティアスの有能相棒っぷりが半端ないんですよね。
お互いの足りない部分を補い合える良いバディだと思います。素敵。

 

この事件の謎も面白かったなぁ。褐色火薬ってそのまま褐色火薬として本当にあるんですね。
ウィキってみたら過渡期の火薬なんだとか。勉強になりました。

 

マリーの「人の顔を認識できないトラウマ」についても、前話だとあまり上手く活用できてない設定だと思っていたのだけど、今回の父と娘のエピソードにはすごく綺麗にハマっていたと思います。
顔を見ないと分からないことってあるのかもしれません。もしくは、顔を見れば簡単に分かること。心にすれ違いがあるのなら、尚更でしょう。
「ああ、自分はどうしてこの人の顔を見ることができなかったのだろう」っていうマリーの後悔が切なかった・・・・・・

 

切ないといえば、エピローグのマリーとマティアスの穏やかなティータイムも切ない。
パパの後押しがあるから何とかなるんじゃないかとも思うのだけど、マティアスは平民出身の司祭で、マリーは侯爵令嬢。しかもマリーは婿が必要な跡取り娘。
身分が違いすぎて二人が恋人となるような結末が想像できません。今だけの関係なのかな・・・?
ラストの二人は幸せそうなんだけど、儚く溶けるメレンゲ菓子のイメージが強すぎて切なさの高まりがしんどい。だけど、それが「この時間のかけがえのなさ」を引き立てていたのは素敵でした。

 

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