旧暦屋、始めました (ハヤカワ文庫JA)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
前巻の感想はこちらから
評価:★★★★☆
2017年9月刊。
天才和裁士の青年・琥珀と着物が苦手な女子大生・八重が、着物にまつわる様々な謎を解き明かしていく連作短編ミステリ第2弾。
今回も着物や日本文化にまつわる様々な薀蓄が語られ、奥が深くてオシャレな和の世界観にワクワクしました。
着物や季節にかけたなぞなぞも、旧暦屋に次々と舞い込むミステリーも相変わらず面白い。この作品は教養と茶目っ気のバランスが最高です。
そして琥珀と八重の恋の行方も気になる本作。
相変わらず琥珀さんの八重への想いは粘着質というかなんというか。着実に囲い込みが進んでる・・・!
それと文体がさらに軽快になった気がします。弾むような語り口が可愛くて癖になります。好きだ〜(*´∀`)
☆あらすじ☆
親元を離れ、奈良で大学生になった八重。それを追うように天才和裁士・琥珀は近くで着物の店“旧暦屋”を開いた。バイトを引き受けた八重と和の知識豊富な琥珀の元には次々と着物を巡る事件が持ち込まれる―人形に隠されたメッセージや模様柄が語る恋の罠、“旧暦屋にない密”の謎…いつも思わせぶりな琥珀に心揺れてしまう八重。古都に恋の花は咲くのか?アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作『花を追え』続篇登場。
以下、ネタバレありの感想です。
物語の舞台は仙台から古都・奈良へ。
琥珀が開いた旧暦屋で臨時のアルバイトを引き受けたものの、未だに着物への苦手意識を捨てられない八重。
そんな八重の尻込みもなんのその、「八重さんがいつ落ちるか楽しみだなあ」なんて言いながら琥珀は相変わらず小粋なアプローチを続けているのです。
琥珀さんの恋心って、良く言えば気が長く、ぶっちゃけて言えば相も変わらずの粘着質w
冒頭の祭文の嘆きに笑ってしまいます。確かに初心ゆえの根拠のない自信なのかもしれない。
とはいえ、これも健気な恋心だと言えるのではないでしょうか。うん。対策実行委員さん、がんばって!
これで八重にその気がなければ話は別だけど、逃げ腰ながら八重も着物に興味を持ちはじめて、現在進行形でどんどん知識をため込んでいるわけですし。
まぁそれも全部琥珀さんが仕向けてるんだけど。由依さんがちょっと心配そうに八重を見る気持ちもわかるw
これって外堀から埋められているようなものですからねー。
でもそこに八重が特に不満を覚えていないなら良いのです。
今はまだハッキリしない関係だけど、琥珀と八重のゆっくりとした関係がこれからどうなっていくのか楽しみだ!
そんな焦れったい八重と琥珀のもとに次々と舞い込むのは、「着物」と「季節」にまつわる謎の数々。
これがまたオシャレ!もうほんとオシャレ!!
前巻もそうだったけれど、日本文化に根ざした小粋な謎掛けの数々にワクワクします。
オシャレといっても外見を華やかに整えるだけでなく、それを着たり着せたりする人たちの、深い教養に基づくユーモアな掛け合いが最高なんですよね。
ていうか、ほんと、この作品に出てくる皆様の教養の深さに震えるんですけど・・・・・・
八重が一番何も知らないみたいな位置づけだけど、和歌や俳句の一節を聞いてすらすら答えが出てくるあたり侮れない。
「受験で勉強した」という言葉でさらに震えます。どんな受験ですか。私も受験は一通り経験したはずなんだけどな・・・!
終盤に向かって加速していく「裏で糸を引いているのは誰だ?」という駆け引きも、応酬がハイレベルすぎて感心しきりでした。
相手の理解を前提にメッセージを投げ合ってるけど、一方の教養が足りずに受け取り損ねたらどうするつもりだったんだ・・・?(その不安が出てきたのが、くゆりさんのくだりだったけど)
でも名探偵が何人もいるかのような、高度ななぞなぞ合戦と心理戦はとても面白かったです。勉強になりましたw
ラストが気になる引き方だったので、おそらく3巻も出るのでしょう。
「八重さん大事の誰か」って誰のことなんだろうなぁ。
出番があった割に存在が微妙に浮いてたニィさんあたりが気になるところ。
というわけで次巻が楽しみです。