【漫画】『菜の花の彼―ナノカノカレ―』14巻の感想


『菜の花の彼―ナノカノカレ―』コミックス14巻のネタバレあり感想です。
特に本誌掲載時からの加筆修正分について。
鷹人派の長文感想です。ご注意ください。

 

本誌掲載時の最終話の感想についてはこちらから

 

単行本14巻を読みました。
本誌掲載時の最終話のあまりの酷さに購入を迷っていたのだけど、結論としてこの14巻は読んで良かった。

 

大きな加筆修正ポイントは最終話の後半。

菜乃花が気絶した後の隼太と鷹人の会話は、もはや別物レベルといっていいのではないだろうか。

「あなたを好きになった綾瀬さんは これからもずっと 綾瀬さんの中に残り続ける」
「あなたを好きになった それが今は彼女の痛みじゃなく誇りになっている事も」

この隼太のセリフが新規に追加されたことで、その後の(本誌掲載時に私がブチ切れた)「悪い男になった気分だ」の意味合いがグッと深まっている。
菜乃花の中の「鷹人を好きになった気持ち」に対して、ちゃんと隼太が考えていることが伝わるから。
「悪い男になった気分」のコマも、隼太の表情がしっかり見えるよう修正されているため、この選択に対する彼の哀しみやもどかしさを感じられるんだよね。
ここで隼太の苦悩を読み取れたことで、本誌掲載時は拒否反応が出たラストの隼太と菜乃花に対しても嫌悪感が払拭された。
せめて二人は幸せになってね、と素直に思えるようになったのは本当に良かった・・・・・・

 

また、隼太に対して「は・・・っ」と鷹人が笑ったことの意味も激変。

「あいかわらずムカつく奴だと思ってな」って! この軽口は良いね・・・!

何も言わずにセリフを飲み込んだ本誌版と違い、単行本版は悪態をつく余裕があるぶん鷹人の気持ちが凪いでいるようにみえる。
隼太が菜乃花を連れて行くことへの悔しさは感じられるものの、本誌版に比べれば鷹人の隼太に対する劣等感はだいぶ和らいでいるように感じられる。これが切ないけれどホッとするんだよ・・・・・・

 

そして、そこからの鷹人のモノローグ。

菜乃花 いつか言ってたな
オレとの恋があったから 今の恋があるんだって
今はわかる 隼太との恋がなかったら 俺達はずっとすれ違ったまま
俺との恋もきっと無かった
(一つになって それでも俺を好きだった事を覚えていてくれるなら――・・・)
覚えていてくれるなら せめて  幼くて傷付けるしかできなかった俺じゃなく
わずかでも 心を重ねる事ができた男として
やさしく溶けて沈んでほしい
隼太に恋をして笑う お前の過去に。

このモノローグ最高かよ!!
これが読みたかったよ!
本誌連載を追って、気持ちが最高に盛り上がっていたあの時に!!

 

「菜乃花にとっての過去」でいることを拒絶し足掻いてきた鷹人が、自分の存在が菜乃花の「過去」となることを受け入れること。
「わずかでも心を重ねることができた」という事実を救いとし、それが菜乃花の中に「やさしく溶けて沈んでほしい」と願うようになれたこと。

鷹人の苦しい恋の答えとして上々ではないかと私は思う。
記憶喪失展開と菜乃花と鷹人の2年間は、この答えを出すためにあったのだと思えるから。無意味じゃなかった・・・!
かつては傷つけてでも自分を刻もうとした男が発した、「やさしく」という言葉に成長を感じる。

 

「菜乃花と隼太の恋」と「菜乃花と鷹人の恋」はどちらも切り離せないものであることを鷹人自身が受け止めたことで、『菜の花の彼』という物語全体も綺麗に総括できていると思う。

本誌掲載時は終盤の鷹人の想いが分かりにくかったし、「菜乃花が鷹人に恋したことの意味」について何も触れないからすごくモヤモヤしたんだよね。ここが加筆されて本当に良かった。
ファミレス回の名セリフをしっかり回収してくれて満足!

 

「もっと綺麗な花畑を」と淋しげに微笑む顔は切ないけれど、皮肉に歪んだ口元しか見えなかった本誌版に比べれば「ようやく恋を終われるんだね・・・」と温かい気持ちで鷹人を見送ることができた。
このモノローグは本当に泣ける。でもそれは本誌版のときのような悔し涙ではなく、やっと「出口」をみつけた鷹人に対する労いの涙です・・・・・・

 

新規追加された鷹人のモノローグがあることで、最後の菜乃花のモノローグに対する受け取り方もかなり変わる。
「隼太を好きな菜乃花」の中で鷹人の存在がしばらく溶けきれずに残っていたものの、メモ帳の花畑を見つけたことでようやく「やさしく溶けて沈む」ことができたのだろう。
鷹人との恋は、菜乃花の心の中で優しく溶け合って沈み、この先もう浮かび上がることはなくても、菜乃花の中から消えることもないのだと信じたい。

鷹人の音信不通に対する菜乃花の薄情さは変わらないのだけどね。
でも引き際の鷹人の気持ちを知っているから、本誌掲載時よりも菜乃花に対して優しい気持ちになれた鷹人贔屓の私です。

 

ついでに、本誌掲載時に悲鳴をあげた「虚ろな目をした喪服鷹人」も、単行本版では瞳にハイライトが追加されたことで「まだ痛みは残っているにしても、鷹人はゆっくりと前へ進んでいけるのだろう」と思えるようになった。
これは大きな違いだよ! ぜんぜん違うよ・・・!
喪服は着てるにしてもね。烏丸ァー・・・

 

もはや本誌版とは別物と考えるべき最終話だったと思う。
「菜乃花と鷹人が最後に話をせずに終わったこと」という最大の不満点は残ったものの、本誌版の地獄的救いのなさに比べれば単行本版の最終話はこの物語の結末として悪くないものだった。
まぁ、菜乃花にはもっと自分から行動してほしかったし、駆け足で唐突感があることは否めないのだけどね。
本誌版の感想で書き殴った不満は、今も私の中でくすぶってはいる。
それでも本誌版を読んだ時の暗澹たる気分よりは何万倍もスッキリした。

 

3人揃って最後まで自己完結しやがって!とも思うけれど(隼太も鷹人も、菜乃花の気持ちを聞かずに決めつけてることには変わりない)、それも本誌掲載時に感じたどうしようもない怒りではなく、「こういう拙さや青さがナノカレだったなぁ」という穏やかで愛しさのあるものへと変わった。
たくさん間違い続けた3人だったけれど、未来に幸せがあることを祈りたい。

 

うん。

色々と惜しい部分はあっても、私の中ではナノカレへの気持ちに決着をつけることができたと思う。

本誌掲載時にはどうしても思えなくて書けなかったことも、今なら書ける。

 

桃森ミヨシ先生と鉄骨サロ先生の次回作を楽しみに待っています!

 

 

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「【漫画】『菜の花の彼―ナノカノカレ―』14巻の感想」への2件のフィードバック

  1. みかこさん こんにちは。 ナノカレ最終巻読みました~!加筆修正どうなるのかドキドキしていたのですが、、、、読めて良かったです・・!! 
    個人的には、この加筆修正に、とても救われました・・!!!(´;ω;`) 本誌版を読んでたから尚更なのかもしれませんが・・。
    加筆の一連の流れがあるのとないのとでは、他諸々の受け取り方の印象が全然違って、本誌で読んでた他の話の印象も変わりました。

    (時系列がバラバラになってしまうのですが)追加された鷹人のモノローグが、ほんともう最高でした・・!!!このモノローグ、切ないけれど、本当に良かったですよね・・!!  「記憶喪失展開と~無意味じゃなかった・・・!」っていうみかこさんの感想にめっちや頷いてます・・!! 鷹人のモノローグが柔らかくて優しくて、ふわっと青空に花びらが舞う演出も良かったです・・。 本誌版は何もなかったので・・。

    あの「一つになって~それでも覚えていてくれるなら」にはやっぱり続きがあったのですね・・! あの続きが「せめて~」と続いていたのだとしたら、好きだから「出来なかった」って気づいた、もうあの時には、菜乃花の手を放す覚悟をしてたのかな・・?と思ったら切ない・・。81話ラストの表情にも切なくなってしまいました・・。 

    本誌版は、喪服姿で虚な目で去っていく鷹人に、83話で辿り着いたと思った優しい場所から、ひとりで昏い方に歩いていくようなイメージがあって、尚且つ10巻前半あたりの鷹人を思い出して、これからどうやって生きていくんだよ・・鷹人・・!!ってなってましたが、この気持ちに辿り着けたのなら、まだ胸は痛んでも、明るい方に進んでいけるのかな、と私も思いました・・・!! 
    この気持ちのあるなしで、見つめる瞳に苦さだけでなくいとおしみを感じるまである・・!(超個人的な見方ですが・・) 瞳の光、ほんと・・ほんと大事ですね・・!! 虚ろじゃない・・!!(´;ω;`) 印象が全然違いました・・!!  

    あと、隼太くんのセリフの加筆も良かったです・・!!「あなたを好きになった~誇りになっている事も」っていう隼太くんのセリフって、78話で菜乃花から、「鷹人を好きになった」っていうのを聞いたときにそう思ったのかな・・?と思いました。

    うまく言えないのですが、(鷹人を想ってた)菜乃花から「隼太くん」が「痛みじゃなく誇りになっている事」を感じ取って、鷹人にそれを言ってくれたこと、隼太くんが菜乃花の中の「鷹人を好きになった気持ち」を認めてくれたこと(何となくそこから目を背けてるような印象があったので・・)で、個人的にですが、鷹人の気持ちを救ってくれたような、そんなふうに思いました・・。
     
    この隼太くんのセリフがあるのとないのとじゃ「ずいぶん~気分だ」っていうのも意味合いが変わってきて、そのあとの間や、鷹人が笑った意味も変わって来ますよね・・!! 「しれっと分かったような口ききやがって」って思ってるとは思いますが・・w
    前回の時「前を向いて歩いていけるようなエピローグを・・!」って思ってたのですが、個人的に、今回の加筆で、何だかそれを読めたような気持ちになりました(^^)

    確かに変わってないところもあって、ほんと3人揃って自己完結だなっていうのも、すごく分かります。 私も本誌版で思ったところ、まま残ってるといえばそうなのですが、「やさしく溶けて沈んでほしい」っていう鷹人の心情を知ることが出来て、個人的には何だかとても穏やかに、お話を読み終われそうです・・。 そんな私も鷹人贔屓だからなのかなと思います・・。
      
    ちゃんと「過去になること」、受け止めて終わらせることが出来て、ほんとうに良かったです・・。 モノローグ最高でした・・。 先生方ちゃんと最後に寄り添ってくれた・・(´;ω;`) 

    出来たなら、私も本誌追ってるときに、この最終回が読みたかったです・・!! 長文失礼致しました。

    1. トウさん、コメントありがとうございます。

      >個人的には、この加筆修正に、とても救われました・・!!!(´;ω;`) 

      加筆修正、救われましたよね!
      正直たった4ページかそこらの加筆であの絶望感がどうにかなるとは思えなくて期待していなかったのですが、良い意味で裏切ってくれました・・・!
      本当に全然受け取り方が変わりますよね。

      >鷹人のモノローグが柔らかくて優しくて、ふわっと青空に花びらが舞う演出も良かったです・・。 本誌版は何もなかったので・・。

      あああ・・・わかります・・・!
      花びらは鷹人の恋が優しく散ったことの表現なのでしょうか。本誌版が文字通りの「無」であることと比べると、なんという温かさ・・・泣けますね・・・・・・

      >あの「一つになって~それでも覚えていてくれるなら」にはやっぱり続きがあったのですね・・! 

      続きありましたね!
      こういう形で繋げて使うことを予定した伏線だったなら、どうして本誌版でカットしたのか謎ですが、救われたのでもう良いですw
      トウさんの仰るように、あの願いを菜乃花に告げたときに鷹人の心は別れの方向に覚悟を決めていたのかもしれませんね。
      菜乃花に選択させるのではなく、自分が「過去」となることを初めから決めて烏丸のところに行ったのであれば、最終回であっさりと引いたことや隼太に菜乃花を追わせたことも納得できます。
      そして、そう考えるとやはり81話のあの表情は本当に切なくて胸が苦しくなりますね・・・(T_T)

      >本誌版は、喪服姿で虚な目で去っていく鷹人に、83話で辿り着いたと思った優しい場所から、ひとりで昏い方に歩いていくようなイメージがあって、

      本誌版の喪服鷹人は徹底して絶望感を背負ってましたからね。見てるだけできつすぎたし、希望が見えませんでしたよね。
      単行本版の鷹人に愛おしみを感じるというの、わかります!
      菜乃花への未練というよりも、終わってしまった恋を切なく見つめる感じ。鷹人の中で区切りがつけられたのだと、あの目の光があるだけで伝わってくる気がします。
      本当に印象が違いすぎて、安心しました・・・!

      >あと、隼太くんのセリフの加筆も良かったです・・!!

      隼太のセリフ追加も良かったですよね!
      私は本誌版はもう隼太のことが理解できなさすぎたのですが、単行本版でちゃんと気持ちを語ってくれて、ようやく以前のように彼に好感を持てるようになりました。
      たぶん隼太は菜乃花の「好き」という気持ちの重さを誰よりもわかってるんだろうなぁ、と私は受け取りました。以前は自分にも向けられていた気持ちだし「経験者は語る」的な(そこのところ、愛されてる人間の余裕みたいなものを感じて「ムカつく」って鷹人が軽口叩きたくなる気持ちがわかりましたwそして軽口叩けるくらいにスッキリしてる鷹人の雰囲気に泣ける・・・)
      本誌版では、隼太が菜乃花が鷹人を好きなことに対して何も触れないまま昔を取り戻そうとしているように見えてしまったのですが、単行本版でちゃんとフォローが入ってよかったです。
      鷹人の気持ちを救ってくれた、というのも分かります。隼太が菜乃花の鷹人に対する恋を肯定的に認めてくれたことで、鷹人の抱く罪悪感が和らいでるようにみえますからね・・・・・・

      >確かに変わってないところもあって、ほんと3人揃って自己完結だなっていうのも、すごく分かります。

      加筆修正は素晴らしかったけれど、やはり菜乃花と鷹人が二人で話し合って恋を終わらせるところが見たかったですよね。
      それがないから結局は自己完結のように見えてしまいますし。
      でも鷹人のモノローグから菜乃花のモノローグへと移ったことで、「鷹人と菜乃花が恋を終わらせる」という形にはなっているのかな、と。
      本誌版はその繋ぎがなかったから菜乃花と鷹人の恋がブツッと切れてるみたいに感じたのですが、単行本版はモノローグで繋いだことで、恋の終わり方が(間接的でも)優しかったのだと思います。

      >出来たなら、私も本誌追ってるときに、この最終回が読みたかったです・・!!

      ですよね!
      むしろ加筆修正箇所が最終回で一番重要なシーンだったのでは???と結構な疑問です。でも読めてよかった・・・

      拍手コメントもありがとうございます。

      私は割と鷹人の直感的な恋に共感していた人間だったので、最終回は本当に辛かったです・・・・・・この加筆修正で、たとえ報われなくても否定されたわけじゃないと分かってホッとしました。

      トウさん、ありがとうございます!いただいたコメントを読んで、ちょっと泣いてしまいました・・・w

      漫画の内容で気持ちを全否定された気分になるなんて、本当に恐ろしい漫画でしたよね・・・!
      でも鷹人と一緒に救われた気分になれる完結巻でしたね!これぞ真エンド!!

      励ましのお言葉、本当に嬉しかったです。ありがとうございました!!

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