茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず/石田リンネ


茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)
茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず (ビーズログ文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2017年7月刊。
「おこぼれ姫と円卓の騎士」の石田リンネさんの新作。
「ちょっと物覚えがいい」というチート持ち少女が、皇帝との出会いをきっかけに持ち腐れ状態だった宝の使い方を知り、自分の才能を開花させていく中華風ファンタジーです。
少女の立身出世物語の序章という感じ。これ1冊で綺麗に終わってはいるけれど、シリーズ化すればどんどん面白くなっていきそう。
前半は主人公の過剰な卑屈さにモヤっとしたのだけど、それを吹き飛ばす後半の爽快感は好みでした。

☆あらすじ☆
優しい笑顔と声の皇帝に(官吏として)寵愛されています!?
後宮の女官の茉莉花(まつりか)は『物覚えがいい』というちょっとした特技がある。
そんな彼女は、名家の子息のお見合い練習相手を引き受けることに。しかしその場にきたのは、お見合いをしてみたかったという皇帝・珀陽(はくよう)で!?
しかも茉莉花の特技を気に入った珀陽は「とりあえず科挙試験に合格してきて」と言い出し……!?
皇帝に見初められた少女の中華版シンデレラストーリー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の主人公は、人より「ちょっと物覚えがいい」という特技を持つ平民出身の後宮女官・皓茉莉花
お見合いの代役同士という形で皇帝・珀陽と出逢った茉莉花は、珀陽に才能を見出され、文官登用試験・科挙を受けるように強制されて――という感じで物語はスタート。

 

「ちょっと物覚えがいい」とか言ってるけれど、これ要するに瞬間記憶能力ってやつですよね。
その天賦の才能を茉莉花は「覚えることしかできない」と役立たず扱いしていて、「いらんならくれ!」と何度思ったことか・・・・・・その能力、めちゃくちゃ欲しいんですけど・・・・・・

 

とはいえ、「記憶できるだけで実践できない」ことは茉莉花の中では重度のコンプレックスとなっていて、それが原因で茉莉花の自己評価はかなり低いもの。
科挙受験用の学校・太学へ無理やり転入させられても、表面上は頑張りつつもいまいち覇気を感じない。「どうせ私には無理だし・・・」っていう自分への諦めが透けてみえるんですよね。
そこを突っ込まれて奮起する展開に入るまでは、茉莉花の過剰な劣等感と優れた才能とのアンバランスにモヤモヤしてしまいました。
うーん、茉莉花の劣等感を形作ってきた「周囲の期待と失望」の具体的なエピソードがあれば印象が違ったのかも。
こんなことがありました、とサラっと語られる程度なので彼女の卑屈さにあまり共感できませんでした。もう少し茉莉花の過去の掘り下げに尺を取ってほしかったかな。

 

そういう共感のしにくさもあってか、茉莉花の当たり障りない頑張り方が妙に鼻につくというか・・・・・・
正直これは一番近くにいた春雪がイラッとするのも分かるし、「お前、ふざけんなよ」って言いたくなる・・・・・・
だからといって春雪の陰湿なイジメは許されるものではないのだけど。
特にスランプ堕ちしてる学生に茉莉花をけしかけたくだりはちょっとなぁ。この後でツンデレ仲良し的な雰囲気を醸して有耶無耶にはなったものの、私は春雪をあまり好きになれないまま終わってしまいました。

 

そんな感じで中盤までの学園パートはなかなかにストレスフルだったのだけど、珀陽との距離が近くなることで茉莉花の意識も変わっていく中盤以降、物語は一気に面白くなっていきました。
特に子星に才能の使い方を教えてもらうシーンが良い。
無尽蔵に溜め込んでいける知識を自分なりにアウトプットするにはどうすればいいのか。
これこそが茉莉花の課題であり、膨大な知識を脳内でばーっと広げ、その点と点を繋いで答えを導き出していく、という思考方法はグッと心を掴まれました。
普通の人がやったらものすごく無駄の多い思考法だと思うけれど(普通はインプット段階で取捨選択するよね・・・)、一度で全てを完璧に覚えられる茉莉花だからこそ情報の処理だけに全力を注ぐことができる。絵的に映える「天才」の表現ですよね。こういうの好き!

 

そして終盤の展開も良い盛り上がり。
国の危機を救うため、珀陽に頼まれて文官のフリをする茉莉花。
ここまでくると茉莉花の有能さがいかんなく発揮され、(まだ少し自信が足りないところはさておき)将来の有能女性官吏の姿が見えるかのようでした。
ていうか着飾れば美女設定まであるのか・・・w

 

「官吏伝」というタイトルながら、この巻では未だ科挙を受験もしていないので「官吏」になっていない茉莉花。
もしシリーズが続くのなら、次は科挙の受験か、そこをサクッと飛ばして官吏になってからの茉莉花の話となるのでしょうか。
才能がある茉莉花に足りないのは経験値だけだと思うので、様々なトラブルに遭遇しつつ経験を積んでいく茉莉花の成長が読みたいです。続刊出るといいな。

 

あとはこの巻だけだと糖度はないに等しかったので、そのへんのラブ的な進展も気になります。
でも中継ぎの皇帝(世継ぎを作らない方針)と平民出身女性官吏の恋って、普通の身分差恋愛より大変な設定のような気が・・・?
今後どうなるのか楽しみです。

 

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