ぬばたまおろち、しらたまおろち/白鷺あおい


ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)
ぬばたまおろち、しらたまおろち (創元推理文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年9月刊。
第2回創元ファンタジイ新人賞「優秀賞」受賞作。
田舎の村で育まれる少女と白蛇の異類恋愛譚であり、妖怪たちが「魔女」になるための勉強に励む魔法学園ものであり、村に伝わる伝承の真実が明かされていく伝奇要素も強い現代ファンタジーな物語です。
もうね、こういうの大好きっっ!
ハリー・ポッターとRDG(レッドデータガール)を足して2で割った感じといえば、だいたいのイメージは伝わる気がします。
幼なじみ萌えは最高だったし、雪女やのっぺらぼうが箒に乗って空を飛ぶカオスで賑やかな世界観もすごく楽しい。
ジェットコースターな展開の先にある結末も、私的には期待通りだったので全くもって文句なしです。
1冊で綺麗に話は終わっているけれど、これはぜひシリーズ化してほしいなぁ。

ちなみに帯には「横溝正史?×ハリー・ポッター!」とあるのだけど、押し出すべきは横溝正史よりも荻原規子の方じゃないかと思ったり。児童文学に近い雰囲気の柔らかさがあるファンタジーなので。
そしてハリポタ・RDG好きはとりあえず本作を読んでほしい・・・!

☆あらすじ☆
両親を失い、田舎にある伯父の家に引き取られた綾乃には秘密の親友がいた。幼いころ洞穴で見つけた小さな白蛇アロウ。アロウはみるみる成長し、今では立派な大蛇だ。十四の夏、綾乃は村祭の舞い手に選ばれた。だが、祭の当日、サーカスから逃げ出したアナコンダが現れ村は大混乱に。そんななか、綾乃は謎の男に襲われるが、そこに疾風のように箒で現れ、間一髪彼女を救ったのは、村に滞在していた民俗学者の大原先生だった。綾乃はそのまま先生の母校ディアーヌ学院に連れていかれ、そこで学ぶことになるが、そこはとても変わった学校で……。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の主人公は、事故で両親を失った少女・深瀬綾乃
白い大蛇の幼なじみ・アロウ(雨太郎)と田舎で仲良く過ごしていた綾乃は、雨乞いの祭りで淵の主に襲われた事件をきっかけに、妖怪と人間が「魔女」になるための勉強をする魔女学校・ディアーヌ学院に編入することになる――というのが本作のストーリー。

 

476頁の物語に様々な要素がこれでもかと詰め込まれているので、一言で内容を説明するのが難しい作品だと思います。

 

綾乃とアロウの異類婚姻譚的な初々しい恋を描きつつ、「もしや人身御供?」とソワソワした気分にさせる村の雨乞い祭りが始まり、「怪獣大決戦だね」と作中でツッコミが入るほどの派手な妖怪バトルへと突入する伝奇要素の強い序盤。

アロウに背中を押された綾乃がひとり全寮制の魔女学校に編入し、箒の乗り方を学ぶ「ダンス」の授業で苦労したり、妖怪のルームメイトや同級生と仲良く学校行事に取り組んだりする魔法学園モノ特有の賑やかさが楽しい中盤。

そして、最初の事件と今までの全てが繋がることで、物語が壮大な輪をつくって完成する終盤。

 

ぶっちゃけ一つ一つの要素や展開に目新しさはないと言えるかもしれません。
終盤で明らかになるアロウの秘密や村の伝承の真相、綾乃の恋の行方は、うまく1本の筋にまとめてはいるものの、新鮮かと言われるとそうでもないですし。むしろ途中でオチは読める・・・・・・

 

ただ、おそらくこれは作者が好きなものをいっぱい詰め込んだ物語だと思うんです。そして読んでる私もそれが大好きなんです。
なんて幸せな関係なんだろう。
こういうのが読みたかったんだよ・・・!って愛を込めて叫びたい。

 

この作品の好きな要素はたくさんあるのだけど、まずは異類恋愛譚(異類婚姻譚)として大満足でした。
両親を亡くした綾乃の哀しみをアロウが癒やしていく関係性が素敵だし、神聖さを感じる豊かな自然の中でじゃれ合う二人の姿は微笑ましくてほっこり。
中盤は魔法学校へと舞台が移りアロウの出番が減るのだけど、学園での綾乃の言動の端々からアロウへの変わらぬ想いを感じるのにはキュンとしました〜。

 

それだけにアロウに入れ替わる形で綾乃と距離を縮めていく同級生・雪之丞の存在にヤキモキしてしまうんですけどね・・・・・・

 

雪之丞もまたアロウに負けず劣らず魅力的だから困るんだよなぁ!
ギスギスした出会いから始まるものの、読書好きという趣味や様々なイベントを通して良いコンビになっていく綾乃と雪之丞。
雪之丞が少しずつ見せ始める綾乃への想いや、徐々に強まる過保護な態度が可愛くて可愛くて(姉の存在感のせいか末っ子の弟っぽさが強いのも可愛い)
このツンデレめ〜ってニヤニヤしまくりでした(*´ェ`*)

 

タイトルの『ぬばたまおろち、しらたまおろち』が雪之丞とアロウのことを指している(正確には呪文だけど)と気づいたときなんか「うわぁ三角関係かよ〜〜幼なじみゴリ推し勢には辛い展開きた〜〜」とハラハラワクワクしたものですw
まぁそのハラハラは途中で「おやぁ?」と思った通りの展開に突入したことで喝采に変わるんですけど。
ある意味すごくベタなオチなんだけどこれを期待してた! ありがとうありがとう!

 

また、魔法学校モノとしてもすごく楽しめる作品でした。
魔女の学校が舞台なだけに、一番多く描かれていたのは箒を使った飛行を学ぶ授業「ダンス」
ハリポタのハリーは最初どんな風に空を飛んだんでしたっけ。本作の綾乃はそれはそれは苦労していました。
なかなか空を飛べなかった綾乃が初めて飛行に成功してコツを掴んだシーンは良かったなぁ。
「今ならアロウと一緒に飛べる」っていうのがもう・・・・・・飛べない理由も飛ぶ理由も全てアロウにあるところが素敵すぎますこれぞ純愛・・・!

 

綾乃を取り巻く魔女学校の生徒や先生や卒業生も個性的なキャラ揃いで、彼らが送る学園生活がとても賑やかで楽しそうなのも実に良い。
生徒のほとんどが雪女やのっぺらぼうといった妖怪なのだけど、文化祭に向けて一緒に練習に励んだり、恋の話題で盛り上がったりする姿は普遍的なもの。
それでいて魔法学校特有のギミックがたくさん投入されるものだから、その非日常な日常の風景にワクワクするしかありません。

遠足のノリで夜間飛行があったり(百鬼夜行のハプニング付き!)、校内にツチノコが現れて騒動を起こしたり、決闘騒ぎを起こした下級生を止めるために上級生が大蛇に変身したり――

和製ハリポタだ〜〜ってニヤニヤしながら読んでいました。こういうのほんと好き!

 

綾乃とアロウの人外恋愛譚から始まった物語は、様々な伏線を回収しつつ文句なしのハッピーエンドに着地。
綺麗に終わってるけど続きはあるのだろうか。
魔女学校ものとしてシリーズ化しても良いと思うんですよね!むしろシリーズ化しよう!?
神様や妖怪が入り乱れる伝奇要素付き和風魔法学園ものとか、1冊で終わるの勿体ないですって!

 

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