宝石商リチャード氏の謎鑑定5 祝福のペリドット/辻村七子


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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2017年8月刊。
美貌の宝石商と正義漢の大学生が宝石にまつわる謎を解き明かすミステリー第5弾。
前回で大きな山場を乗り越えた二人だけに、少し距離感も変わってきたような。
そして表紙は未来(就活)を考え始めた正義と過去のリチャードだったんですね。リチャード様はだらしない格好していると余計に艶めかしい・・・・・・

☆あらすじ☆
リチャードが抱えていたトラブルも一段落し、帰国した正義とリチャード。正義は大学三年生となり、周囲ではそろそろ就職活動が本格化し始めていた。そんなある日、銀座のエトランジェを常連客の乙村が訪れた。乙村は、片想いしていた女性からもらったという桜色のカメオをリチャードと正義に見せる。そして、そのカメオの謎を解いてみないか、と言い出して……? ジュエリー・ミステリ第5弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

大学3年生となったことで正義の就活がゆっくりとスタート。
うっすらと将来を考え始めた正義が出会ったのは、リチャードと関係のあるジュエリーデザイナー・浜田真夜だった―――というエピソード。

ちょっと印象的だったのは正義が人を名前で呼ぶのが苦手っていう話。
正義ってズケズケと他人事に首を突っ込む割には人間関係というか、人との距離感がよくわからない男なのかも?
ストーリーの構成上リチャードと一緒にいる場面ばかり描かれているけれど、リチャード以外に「親友」とか「恋人」とかいう存在を正義の隣にイメージしづらいんですよね。あんなに人懐っこいのに。

それはそうと自分が褒められたと勘違いした後に怒涛の訂正文を送りつけてくるリチャード氏が今日も可愛い。

 

「エトランジュ」の常連・乙村さんに異変が・・・? というエピソード。

父の後妻に恋をするっていうのは悲恋系でありがちなラブストーリーだけど、このエピソードはそれ自体よりも一段上の視点から哲学的な問答で進んでいくのが面白かったです。

「誰かを好きってことの本質は、自己満足なんじゃないか」

私はこういう発想に親しみを感じます。だって相手が本当は何を思っているかなんて想像するしかないのだし、それなら究極的に恋愛感情なんて自己満足とエゴイズムでしかないのでは。
「愛情」のなかに思いやりや優しさが存在するにしても、突き詰めて考えればそういう温かい感情だって「自分がそうしたい(してあげたい)からするってことじゃないの?」と思ってしまう。これもまた自己満足といえるのでは。
もちろん相手に迷惑をかけるのはいけないことだけど、それは理性の問題であって感情の話じゃないと思うし。

何の説明もなしにカメオだけを送りつけたお母さんの行動も私には自己満足に見えるけれど、そこに込められた想いがきちんと乙村さんに届いたことで自己満足は「優しさ」や「親愛」に変わって人を救える愛情として完成されたのだと思うのです。
自己満足な感情がどう変化するかって、受け取る相手次第なんだよなぁ。

case.1で真夜さんが言った「人や石の魅力が変化するのは見ている人が変わるから」という言葉を思い出すエピソードでした。

 

リチャードの過去編その1。
シャウルさんとの出会いを描くスリランカでのリチャードを描いたエピソード。

や、やさぐれてる・・・!
そしてリチャードのダメ男っぷりに親近感を抱いてしまいます。
振る舞いや見た目ほどパーフェクトヒューマンじゃないのは分かっていたけれど、レンジを爆発させたり台所を腐海化させるタイプの失敗はやらかさないと思ってました。この生き物、どこまで可愛くなるつもりか。

このエピソードではインドの女性たちの苦しみに胸が痛くなったのだけど、その苦しみを味わったモニカの強さには心が震えました。

「私の結婚は最悪だったけど、だからって私の人生全部が最悪になったわけじゃない。だって私は生きてるから」

絶望のドン底を味わっても、こんなにも前向きな言葉を発することができるって素晴らしい。見習いたいです。

それにしてもシャウルさんが目を離しているすきにケーキを消し去れるリチャードはマジシャンかな?( ˘ω˘ )

 

リチャードの過去編その2。
例の事件が起こる前、比較的平和だった頃の伯爵家と、そこで雇われていた日本人ガバネス、そしてリチャードの母のエピソード。

美しすぎる人に必死に頼まれると断れないっていうのが、そういう場面じゃないことは承知の上で笑ってしまうww
ここでもまた最初のエピソードの真夜さんの言葉を思い出しました。

「うちね、美しさはパワーやと思うの。『説得力』に一番近いかしらん。」

リチャードとカトリーヌはもはや宝石の仲間ですよね。
そういう価値観を共有できる智恵子さんと正義は似た者同士だと思います。だからリチャードは正義にすぐに懐いてたのかも?

 

クリスマスに居心地の悪さを感じた経験はあっても、このエピソードの中での正義の述懐は新鮮に感じました。
リア充爆発しろー!っていうのともちょっと違う疎外感ですよね。やっぱり正義ってどこか孤独が奥底にある人間なのかもって思ったり。

 

 

さて、いよいよ就活スタートした正義が、今後どうなっていくのか。
美しさに飽きることない正義なら宝石商に向いているのでは?布石が打たれた気がするので、彼の就活の行方が楽しみです。

 

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