リア充にもオタクにもなれない俺の青春/弘前龍


リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)
リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

評価:★★★☆☆
2017年9月刊。
最初はスクールカーストものかな?と思ったのだけど、読んでみると少し違う雰囲気。
どんな集団にも存在する同調圧力の苦しみ。その居心地の悪さに共感してしまう青春小説でした。
軽快なテンポで話が進むのでサクサク読めるし、ヒロインは魅力的。
好きなものに泣けるほどの愛を注ぐオタク女子は可愛いし、自分とは違う価値観を否定せずに受け入れてくれる優しいギャルは天使級に素晴らしい。
・・・・・・なのだけど、主人公だけはどうにも苦手でした。

☆あらすじ☆
リア充は読むな、オタクも読むな。これは俺たちの青春だ!
一奈々子。オタク女子。3ヶ月ごとに「嫁」が変わるタイプの絵師。おどおど小動物系の美少女。口には出さないけど、俺は密かに≪イナゴさん≫と呼んでいる。
上井恵久。リア充女子。カラオケでタンバリン叩いてた人。いつもいい匂いがするクール系の美少女。こっちも口には出さないけど、俺は密かに≪ウェーイさん≫と呼んでいる。
クラスこそ一緒だけど、イナゴさんも、ウェーイさんも、俺とは別世界の住人だ。リア充でもオタクでもない俺は、きっと深いかかわりを持つことなく終わるんだろう。
……そう思っていた。
あの夜、あの公園で、あんな秘密を知ってしまうまでは。
2017年、オタクがメジャーになりすぎた時代。何にもなれない「俺」たちに贈る、新・青春ラノベ開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

楽しくオタク活動できると期待して上京したのに、結果的に自分はオタクじゃないと悟り、リア充になることを決意した高校生・荒川亮太
クラスのリア充グループに入ることができた亮太はリア充女子の上井恵久と仲良くなる一方、かつてのオタク仲間・一奈々子の現状を知ることになる――という感じで物語は進んでいきます。

 

「リア充」と「オタク」を別次元の存在として描くわりに、スクールカースト的な上下関係は存在せず、ゆるやかに共存しているのが割と印象的でした。
むしろOTA団ほどのウザい系オタクが教室内で幅を利かせてても何も言わないところをみるに、この作品のリア充たちってとても優しいのでは?と思ったり。
いや、特に何もアクションを起こさないリア充が聖人にみえるくらいOTA団ウザすぎるだけかもしれないけれど。
他の人もいる教室で平然とオタサー化するオタクの気持ち悪さ・・・・・・オタクの悪い部分を凝縮してるみたいな集団で少しウッとなる・・・・・・

 

そんなオタクを見下す描写がないぶん(逆はあるが)、リア充グループの方が人として数倍マシだと思うんですよね。
それなのに主人公である亮太は「リア充は頭からっぽ」みたいな価値観をなかなか崩さないから(この偏見にもっとツッコミを入れてほしかった)、やたら違和感を覚えてしまいました。こういうスタンスの主人公は割とよくいるのだけど、リア充を貶す理由が亮太の思考停止としか思えないから正直きつい。
オタク側に近い亮太はリア充の価値観を共有できなくて大変だってことなんだろうけど、亮太のリア充への蔑視は相手にも伝わっちゃうんじゃないかなぁ。それじゃ仲間にはなれないよ・・・・・・

 

そういうところもあって個人的には亮太を好きになれませんでした。
だいたい奈々子に対する「イナゴさん」っていうのもすごい蔑称な気がするし・・・・・・
覇権の人気キャラを3か月でどんどん乗り換えるオタク女子を「イナゴ」って・・・・・・実りを食い尽くす害虫的な見下しニュアンスがない・・・?
最初は名前呼びだったのに途中で「イナゴ」呼びに変わったっていうのが、なんかもう陰湿すぎて。
リア充に対する偏見もそうだけど、この主人公って自分の価値観とか無自覚な悪意とかにあまり疑問を持たないんですよね。そこが怖い。
「こんな奴らがオタクなら俺はオタクじゃなくていい」っていう発想なのだろうけど、なんで彼は常に上から目線なんだろう?
同調圧力が息苦しい「オタク」にも「リア充」にもなれないから自分らしくいれる場所をつくろう!って感じの話なのは分かるけど、なんだかなぁ。

 

あー・・・亮太に対する不満を書き連ねてしまったから作品disみたいな感想になってしまった。
物語自体は悪くなかったんですよ!
「オタク」と「リア充」という違いはあっても、集団に所属していると同調圧力で辛くなることもあるよねっていう話はすごく共感しやすかったですし。
それに亮太の語り口自体は軽快で読んでて楽しかったです。

 

あとヒロインがとても魅力的だったのはすごく良かった。
「みんなが嫌いなものは自分も嫌いにならなきゃいけない」って好きなものへの愛情を日陰に追いやってしまう奈々子の苦しみは切なかったし、それでも溢れ出る作品愛やキャラ愛にはオタクのあるべき姿を見た気分になりました。

 

そしてリア充女子のメグはガチ天使。彼女は作中最も尊い存在なのでは。
全てを「ウケる」の一言で受け入れるってすごいですよね。メグはなにひとつ否定しないところが素敵です。
分からないものは分からないって言うけど、分からないから拒絶したり貶めたりは絶対にしない女の子。
人間ができすぎてるとも思うけれど、彼女がその性格を獲得した背景を知ると辛い経験を人間力に昇華したメグのことがますます好きになりました。

亮太は偽装でもメグの恋人役に選ばれたことをもっともっと喜んで・・・!

 

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