戦うパン屋と機械じかけの看板娘7/SOW


戦うパン屋と機械じかけの看板娘7 (HJ文庫)
戦うパン屋と機械じかけの看板娘7 (HJ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★☆☆
2017年9月刊。
元軍人の強面パン屋とアンドロイドの看板娘のパン屋物語第7弾。
今回はルートの過去の因縁にまつわるお話。

☆あらすじ☆
スヴェンの前に広がったのは、強盗犯に立てこもるトッカーブロートの姿だった。立てこもり自体はルート(と、突入したスヴェン)によって無事解決したものの、これは最悪の始まりでしかなかった。“善意”の市民団体による抗議活動で客は減少、証人として出頭した裁判所では、ルートが戦時中に行った作戦が槍玉に上げられる。さらに、死んだとルートが思いこんでいたマリーまでも姿を現し、ルートは再び過去の亡霊に悩まされることに……。パン屋を諦めかけた相棒にスヴェンがとった行動とは!

以下、ネタバレありの感想です。

 

強盗犯によるトッカーブロート立てこもり事件が起こり、なぜか事件が歪曲されて報道。
「正義」のお題目で攻撃してくる人々に困惑するなか、ルートの過去に関わる女弁護士マリー・ヴィル・メイルが現れ―――というのが7巻のストーリー。

 

マリーのルートに対する憎悪は強烈だったけれど、彼女の気持ちを思えば仕方ないよなぁと思わずにいられません。
いくら戦争だったからとか命令だったとか言われても、それで割り切れないのが人間の感情なのだし。
家族同然に過ごした時間があるからこそ「裏切られた」という思いも強くなるわけですしね。
その憎しみの中に幼いころに生まれた愛情が入り混じって、マリー本人にもどうにもならないというのが切ない。
こういう切り口からマリーをメインヒロインにした愛憎劇に仕立てても面白かったんだろうなぁ。

 

ただ、うーん、今回のストーリー自体は面白かったんだけど、マリーの掌返しからの逆転劇が少し駆け足に感じてしまいました。
話を立ち聞きしてルートを許したっていうのは分かるんだけど、微妙に拭えない唐突感。
マリーの中に最初からルートへの愛情があったから、それを下地にしたってことなのかなぁ。
マリーの憎悪の深さは丁寧に描かれていただけに、ルートの心を知ってなお許すか許さないかで葛藤するグレーゾーンが読みたかったかも・・・・・・

 

そんなマリーが全力でルートの過去を暴きにかかった今回の法廷劇。
ルート本人を半ばそっちのけにして繰り広げられるスヴェンVSマリーの女の戦いは面白かったです。
マリーの掌返しからの逆転劇は少し駆け足に感じてしまったけれど、愛情と憎しみが入り混じった複雑な感情を分かち合うような着地も素敵でした。
最後でマリーの心に寄り添ったスヴェンは本当に情緒が成長してるよなぁ・・・・・・
愛憎というカオスな感情まで理解して、しかもスヴェン自身の心にも似た想いを芽生えさせるって・・・・・・それもう人間じゃん・・・・・・

スヴェンとマリーの最後のやり取りは本当に良くて(同じ男を愛しているからこその共感と和解って感じがドラマチック)、だから直後の展開には衝撃を受けたしエピローグで心からホッとしました。
マリーの再登場に期待したいけれど、彼女が何に使われるのかはちょっと怖い・・・・・・

 

そして段々と存在感を増してきた平和教の動きも気になります。
平和教とか平和を愛する市民の話とか、なんだか今回はいつも以上に寓話的だった気がします。元々そういう傾向の強いシリーズではあるのだけど。
平和という名の偏った正義を他者に押し付けることについてはなんとも・・・・・・
社会や政治なんていう広い視野で捉えるまでもなく、すぐ身近で起こる問題だけに耳が痛い・・・・・・

 

どこにでもいる平和教も不気味だけど、保安部も負けず劣らず不穏な雰囲気。
「戦後」の不安定な情勢が今なお続いているんですよね・・・・・・これ、物語のゴールはどこに設定されているのでしょうか?
何かまた大きな事件が起こるのかな?楽しみです。

 

ラストで登場した紫髪赤瞳の少女の正体も気になります。
今回ちょっと間があいたけれど、次は早めに刊行されると嬉しいなぁ。

 

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