弥栄の烏(八咫烏シリーズ6)/阿部智里


弥栄の烏 八咫烏シリーズ6
弥栄の烏 八咫烏シリーズ6【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2017年8月刊。
和風ファンタジー・八咫烏シリーズ第6弾。
前巻「玉依姫」の八咫烏サイドのお話ですね。1・2巻と同じ構成だけど、「玉依姫」の補完という側面が強いかも。
「玉依姫」の段階でかなり酷いことになってる感じだったので覚悟していたけれど、八咫烏視点だとまぁ苦い苦い・・・・・・
そして真赭の薄、ほんと好きです。
完結巻と帯にはあるけれど、たしかこれって第一部完だったはず。次はどんな話になるのでしょうか。

☆あらすじ☆
八咫烏の一族が支配する異世界・山内。
「うつけ」の若宮と「ぼんくら」近習の少年・雪哉という若き主従の活躍を中心に、賢く華やかな宮廷の姫君、若宮を取り巻く護衛の青年たちが繰り広げる、お妃選びと権力争い、友情と断絶、成長と再生を描いた壮大な和風ファンタジー。
一冊ごとに表情を変えながら読者を魅了、80万部を突破したこの物語の第一部完結篇「弥栄の烏」は、主人公・雪哉の弟が武官訓練所である剄草院に入学準備する場面から。その実力を認められ、全軍の参謀役にまでなった雪哉、敵対する勢力を抑えて朝廷の実権を掌握した若宮が治める山内を大地震が襲い、開かれた禁門の扉の向こうには、山内を恐怖に陥れた「人喰い大猿」が現れた。
ついに始まった、猿と八咫烏の最終決戦。若宮は名前を取り戻し、真の金烏となれるのか。山内は栄えるのか、それとも滅びに向かうのか――

以下、ネタバレありの感想です。

 

前作『玉依姫』で、主人公・志帆のお世話をしたり「山神」の正体を探っていた若宮たち八咫烏。
第6巻「弥栄の烏」は、その八咫烏たちの視点から『玉依姫』の前後の時系列を追っていくストーリーとなっていました。

 

若宮たちはどのような経緯を経て「山神」に仕えるようになったのか。
山神、猿、そして八咫烏に隠された因縁とは何なのか。
依然として若宮が取り戻せない「真の金烏」の記憶には何が隠されているのか。

 

シリーズが進むに連れて少しずつ置かれてきた疑問や伏線を一挙に回収していくわけだけど、『玉依姫』でも色々と紐解かれていた内容を更に掘り下げていく感じでしょうか。
だいぶ『玉依姫』本編の記憶が薄れていたので「これって前作でも書いてた話だっけ・・・・・・それとも初耳・・・?」と戸惑いながら読むことになってしまいました。
『玉依姫』を再読してから読めばよかったなぁと思いつつ、逆に新鮮な気持ちで楽しめた!と思うことにします。

 

さて、そんな八咫烏サイドの物語。

 

もう序盤から雰囲気が重苦しすぎて死にそうだったのだけど、茂丸死亡で雪哉の心が死んだあたりから暗鬱とした空気がますます酷くなり(てか茂丸・・・!玉依姫のときに書いてったっけ!?普通にショック受けたんですけど!)、終盤になるほどに気持ちは沈むばかり。

 

特に八咫烏と猿の最終決戦が・・・・・・

 

雪哉おまえ本当にゲスだな・・・・・・と思いつつ、仲間への愛情と敵への憎悪を渦巻かせる雪哉の心は感じ取れるから憎めない。
どんなに倫理に悖る選択でも彼にとっては間違いなく最善手だったのでしょう。
でも恨み節を感じるのは気のせいじゃないと思う。雪哉はそういう奴(偏見)

 

未だに記憶を取り戻せずにアイデンティティが迷子になっている若宮はいまいち頼りなく、山神・椿は怖いし、猿は不気味だし、浜木綿は流産で精神が参ってるしで鬱々と話が進むなか、私の心の光は真赭の薄だけでした。
真赭の薄って、作中で最も成長したヒトなんじゃないかと思うんですよね。
世間知らずで失敗も多いし、彼女に望まれた在り方ではないけれど、自分はこうありたいっていう強い想いを貫く姿はとても格好いい。

 

そんな彼女の輝きに助けられつつ最後まで読んだけれど、まぁ後味の苦いこと・・・・・・

 

八咫烏と猿の間にあった確執の正体が、もう、ね。
何が悪で、何が正しいのか。
復讐は復讐しか生まないなんていう綺麗事を丸呑みするような虚無感を覚える終盤のアレコレに胸が苦しくなります。
猿を蔑みながら、まるで若宮を糾弾するかのような最後の雪哉の姿がつらい。
絶望しない、後悔しない、過去を顧みたりしない、という雪哉のセリフのどこに前向きさがあるんだろう。
ドス黒くなるばかりの気持ちの持って行き場に困る展開に絶句してしまいました。
特に「弥栄」の言葉に込められた欺瞞とかね・・・・・・うわぁってなるしかないでしょ・・・・・・

 

が、それで終わらないのが素晴らしい。

 

確かに山内の滅びは避けられない。
神の出来損ないという金烏の正体も変わらない。

それでも、だからどうしたとばかりに笑う浜木綿が頼もしすぎて・・・!
「己の絶望に過信するな」って良い言葉ですね。
自分で勝手に決めた絶望に足踏みしている暇があれば希望と未来を探せ、何事もどうにでもなるのだから、と励まされる気持ちになりました。

実際問題、山内がなくなってしまったら八咫烏たちがどうなるのか分からないけれど、なんかもうどうにでもなるんじゃない?という気楽さを匂わせるのが良い。
新しい命によって雪哉の闇が拭われたように、前に進めば希望がつかめるかもしれないのだし。
そう信じて進むしかないのです。そうすれば、いつかきっと、なるようになるさ!

 

苦い後味を残しつつも、光を感じさせるラストが秀逸だったと思います。

山内の崩壊の未来を示唆して第一部は終わったわけだけど、第二部からどんな物語になるのか楽しみです。
「八咫烏シリーズ」だから八咫烏の話が続くのかな?
楽しみです。

とりあえず次巻が出るまでに電子版の番外編でも読んでいようかな!

今のところ3作あるのかな。
浜木綿主人公の番外編。

 

雪哉の出生の秘密。

 

6巻でちょっと出てきた縁談のエピソード。

 

とりあえず「しのぶひと」から読みたいかも。

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