筺底のエルピス5 迷い子たちの一歩/オキシタケヒコ


筺底のエルピス5 -迷い子たちの一歩- (ガガガ文庫)
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前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2017年8月刊。
待ちに待っていたSF鬼退治シリーズ第5弾!
第四話「標なき道」の開幕編ということで内容的にはまさにプロローグ。
これまで疑問を挟む余地(余裕)がなかった前提を直球でガシガシと揺さぶってくる展開、これぞまさにSFって感じですね!たのしい!!
そして前巻ラストの絶望感に心が死んだ私としては今回の話に泣くしかありません。
本当に今回は人間ドラマが最高すぎて・・・・・・

☆あらすじ☆
癒やせぬ傷を抱え、狩人たちは前を向く。
殺戮因果連鎖憑依体――
古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれてきたその存在は、感染する殺意であり、次元の裏側から送り込まれた人類絶滅のプログラム。
だが、その脅威に立ち向かうべき狩人たちは、断絶を経た長い歴史の結果として、不毛な衝突を続けていた。
白い鬼の出現によって口火が切られた組織間抗争こそ無事終結したものの、未来を切り捨てる戦の果てに、多くの者が傷つき、道を見失う。
背負う重責に震える者。慢心の罠に陥る者。無能さを悔やむ者。自身との軋轢に苦しむ者。欲望へと走る者。救いたい者を救えぬ者。そして地獄から流れ着き、独房でひとり、静かな狂気に沈もうとする者。そんな彼らを立ち上がらせるのは、はたして誰による、いかなる選択なのか。
新たなる鬼の脅威。秘密の開示の先に待つ、太古の闇。
時を超える旅によって増殖し、この世にふたり存在することになった乾叶を渦の中心として、歴史の背後に潜んでいた数多の謎も浮上を始める。
残酷な運命に抗うべく、傷だらけの迷い子たちがそれぞれ踏み出す、新たな一歩とは。
人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩。再起と転換の第5弾。

以下、ネタバレありの感想です。

 

叶の絶望と引き換えに捨環戦を乗り越え、未来を廃棄し、平穏を取り戻した「門部」の面々。
廃棄した未来に比べればマシではあるものの、それでも大きな損害が痛手となりつつも、少しずつ態勢を整えていく――という感じで5巻がスタート。

 

まず第一に気になったのは未来から叶(カナエ)の運命。

 

大事な人達から託された使命を背負い、多くの死を積み重ねながら逃げて逃げて希望を掴み取った彼女に待っていた絶望。
ヒロインに対する容赦なさに白目むいたのが前巻ラストだったわけだけど、それだけに今回のカナエ救済には心が震えました・・・!

 

彼女の絶望の深さは前巻で散々描かれてきたのだから簡単に救えるわけがなくて。
さらにカナエ本人が救いを望まず、叶もカナエを忌避し、門部も彼女の扱いに困惑。
うわー!絶望の地獄がまだ続いてるよ!!って心が死にそうな状況のなかで、希望の光をみせてくれたのは圭と結。

 

頑としてカナエを「乾叶」として扱う圭の行動は優しいなぁと思いつつ「いや、その優しさは残酷すぎるのでは・・・」と冷や汗ものだったんですよね・・・・・・カナエも叶も圭が何か言う度に心がドス黒くなってるやん・・・やめてあげて・・・・・・と何度思ったことか。

でも圭の優しさは無神経なものなんかじゃなかった。
「カナエ=乾叶」にこだわることこそが叶の救済につながる終盤の展開はもう涙なしに読めない・・・!

 

そして、てっきり投げやりなカナエに怒っているのかと思っていた結の謝罪が・・・!
そうだった!それがあったんだった・・・!とボロボロ涙が出てきました。
つらい。でもようやく素直に泣けたカナエと結の姿が尊すぎて最高でした・・・・・・

 

全てを失って自分も見失って、地獄だけを求める空っぽの修羅に堕ちかけていたカナエにただ一つ残ったもの。
未来を廃棄してでもカナエが繋いだ「希望」が意味するもの。

 

圭が用意した救済の道でカナエがみつけた答えが本当に素敵すぎて、ラスト一文にまたも涙腺が決壊。

空っぽの手は――未来を掴み取れるように、空けられているのだと。

もうね、この一文にたどり着くためにカナエの地獄と涙の救済があったのだと思うと感無量ですよ!!
未来を捨てて、未来を掴む。
そのための戦いだったはずなのに、深すぎる絶望に目がくらんで忘れていました。
未来がある!これこそが希望なんだ!

 

カナエ救済だけでも胸がいっぱいになったのだけど、まさかラブコメ的にも救済があるとは嬉しい誤算。
自覚即失恋の叶ちゃんは可哀想だけど・・・・・・私的にはもはやカナエの方に愛着が大きくなってるからごめんね・・・・・・あ、合法重婚展開は勘弁してください(燈のセリフは不意打ちすぎて笑ったw)

 

今回はカナエ救済のドラマがメインって感じだったけれど、SF的にも面白すぎる展開へ。

式務がひかえを残して全滅したことで、大幅な意識改革が可能となった門部。
そこに投げかけられた、部外者である天文部のメンバーからの疑問。

「星の神」である異星知性体の正体。
彼らはなぜ人類に手を貸しているのか。

当たり前にそこにあるものに「なぜそれがあるのか?」という疑問を投げかける展開がまさにSFって感じですごく楽しい〜〜!
というか、疑問ではあったのだけど、そこに手をつける場合じゃなかったんですよね。ずっと。
ようやくここまでたどり着けた感。

それと、敵は鬼なのになんで鬼狩り同士で争ってんだ?不毛すぎるだろ?とも思っていたので、そのへんも回収してくれる展開はワクワクしかありませんw

 

大きな疑問を投げかけるだけ投げかけて次巻に続いたので、今回はSF的には序章という感じ。
ようやく人同士の争いが落ち着いたので、今度は神の正体に迫っていくわけですね?
まさかの式務に就任した圭に覚醒フラグが立ったし、ここからどう進んでいくのか楽しみで仕方ありません。

 

ちなみにこのシリーズの構成ってこんな感じらしいです。

「ヒトと歴史」の連作・・・!
もうこれ絶対に面白くなるやつ!!(確信)

 

次巻はいつかなぁ。
今回は1年待ったけれど、いつまでも続きを待っています!!

 

余談。
今回でまた一段と「貴治崎女医門部最恐説」が私の中で定説化したので、彼女をけしかけることができる圭のカード強すぎるな、と思いました。
あれは逆らったらいかんやつ。

 

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