幻獣調査員2 (ファミ通文庫)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
前巻の感想はこちらから
評価:★★★★☆
2017年6月刊。
人と幻獣の間に介在する幻獣調査員の少女と、彼女を守る従者たちの旅を描くファンタジー第2弾。
人外×少女が好きなら必読の作品ですが(注・私見)、今回も素晴らしく面白かったです。
可愛いおとぎ話のようなエピソードもあれば、残酷さに胸が痛くなるエピソードもあり、また最後の話ではうるうると涙腺が・・・・・・
ほんとにこういうシリーズ大好きです。
1巻同様、2巻も綺麗に終わっているけれどできれば長く続いてほしいなぁ。
☆あらすじ☆
人外×少女でつむがれる残酷で優しい幻想幻獣譚、第2集!
伝説の悪竜に攫われた村娘。その御伽話にも似た事態の真相とは――。かつて海豹乙女を嫁にもらった老人。だが人と幻獣の結婚の先にあったのは……。第一種危険幻獣の中でも伝説級に該当する生物ヒュドラ。行く手を全て毒に染め、不死の体を持つヒュドラを倒すには幻獣、それも「火の王」の炎が必要だという。フェリ達は王都が保護していた“勇者”を連れて「火の王」の元に赴くことになり――。人と幻獣の関わりが生む残酷で優しい幻想幻獣譚、第二集!
以下、ネタバレありの感想です。
悪竜に攫われた娘を助けに行くぞ!という英雄譚的な幕開けながら、最終的な読後感は「泣いた赤鬼」。
ああ、こういうの弱いんです。
悪竜がどうして口の悪いジュリエッタを攫ったのか、どうして彼女を傍に置いたのか、どうして最後の最後で怒ったのか。
簡潔で間接的ではあるのだけど、悪竜の気持ちが伝わってきて、もう、ほんとに・・・・・・
あと超ポジティブで裏表のないギルバートとネガティブ毒舌娘のジュリエッタはすごく上手くいきそうなカップルだなぁと思いましたw
ショートショートな1編。
酒を呑ませて昏倒させるというのは古今東西の怪物退治の定番ですねw
某少女小説(チャラい金髪伯爵が出て来るやつ)のおかげでセルキーと聞くとテンションが上がる私。
しかも美少女セルキーが人間の男に毛皮をとられて嫁取りされたとか、これもう天女の羽衣じゃないですか!
このエピソードが面白いのは、天女ならぬセルキーが帰ってしまったあとのお話であることですね。
残された夫とその家族たちはどんな風に生きていくのか。
結末は苦いといえば苦いかな・・・・・・でも救いも感じられる切なさで私は好きです。
おとぎ話のような語り口で綴られる1編。
クーシュナの「我こそが1番愛されてるに決まってるおるであろうが!」というブチギレが可愛すぎて死にました。
なんかもうこういうちょくちょくクーシュナのフェリに対する溺愛が見えるのが私的には悶えるしかないのですがw
扉絵の凛々しいフェリが素敵です。
初っ端から彼女が苛立っているのが珍しくて「おっ?」と思っていたら・・・・・・
今回、フェリたちが立ち向かうのは幻獣と人間の間に生まれ、行き場を失ってしまった憎悪。
大事な存在を幻獣に奪われた人間の憎しみを受け止めるフェリを見ていると、彼女の仕事の難しさが伝わってくるようです。
そしてそんな大変な仕事に誇りを持ち、ブレないフェリがとても格好いい。
トロー可愛いよトロー回。
そして、なんというか、生理的嫌悪を催す回でした。グロとは違う。普通に気持ち悪い感じ・・・・・・
あと、「前の」フェリやトローの話を不意打ちで出すのやめて・・・・・・思い出して泣いちゃうから・・・・・・
この巻のメインエピソード。
「勇者」を必要とする伝説級の幻獣ヒュドラをどうにかしなければいけないなか、中身が虚ろの勇者の少年に出会ったフェリたち。
幻獣調査官との対立があったり、フェリがなかなかに強かな顔を覗かせたり(詭弁に盗聴!)、話がどんどん緊迫していくのが面白かったです。
しかも前巻のトラウマのためか、いつフェリがあっさり死んでもおかしくないという恐怖にハラハラしっぱなし。今度はクーシュナも後を追うとか言うし(そのまえに世界が滅びそう・・・)、最後まで緊張感に包まれて楽しかったです。
そして幕間で描かれてきた「醜い怪物」と「美しい女王様」の正体も判明。
これ、ほんとラストシーンは泣けるんですけど・・・・・・ああ、そういうことかと。もう涙腺ゆるゆるですよどうしてくれる。
この世界の「勇者」観があまりにも酷くてどうするのかと思っていたのに、こういうオチをもってくるとかずるくないですか!(褒め言葉)
ラストはフェリ、クーシュナ、トローの新たな旅立ちでエンド。
「闇の王様」の存在がバレちゃったフェリが幻獣調査員として活動できるのか心配だけど、きっと彼女はそんな些事にとらわれることなく幻獣と人の間に入っていくのでしょう。
そこにはきっと常にクーシュナとトローが寄り添っていて。
うんうん。素敵な結末でした。
コミカライズ決定したのに3巻発売は不明とのことですが(そういうこともあるんだ?)、私としてはぜひとも長くこの物語の世界に浸っていたいです。
というわけで3巻待ってます!