かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月/カミツキレイニー


かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月 (角川スニーカー文庫)
かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月 (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年6月刊。
面白かったー!
とある呪いをかけられた高校生が助けを求めて訪れたのは沖縄にある「神々の住む島」。
そこで出会った「花人」の少女と共に行動することになった主人公の目を通して、人と神の繋がりから生まれるトラブルや、異国情緒あふれる沖縄の鮮やかな風景が描かれていく物語です。
カミツキレイニーさんらしいズシッとくる人間ドラマも読み応えあり。
明るくコメディタッチな前半と様々な真実が明らかになるシリアスな後半の落差が激しいのだけど、後半からの流れが好きすぎて思わず物語に引き込まれてしまいました。
担当絵師の白狼さんのキャラありきで始まった企画ものらしいのだけど、単体で十分に楽しめる作品だと思います。
あー!沖縄行きたい!!

☆あらすじ☆
悪童〈ヤナワラバー〉が切り結ぶ、神様とのちょっと不思議な“縁”の話。
「人間の上でもなく、下でもなく。私たちのすぐそばにいるもの。それが沖縄の神々さ」
怪異を祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた春秋の前に現れたのは、地元の少女、空。天真爛漫で島想い、どこまでもフリーダムな彼女に呆れる春秋だったが、空は神様との縁を切ることで怪異を祓う“花人”の後継者――春秋が島を訪れた理由そのものだった。未熟ながらも、島の人々とともに怪異解決に挑む少年少女の、沖縄青春ファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

ある恋愛トラブルから「いなり寿司以外のものを食べると吐いてしまう呪い」にかかってしまった高校生・三鷹春秋
罪を犯して祟られた「触り人」と神の縁を切ることができる「花人」に助けてもらうために神々の住む島・白結木島を訪れた春秋は、そこで花人の少女・蒼囲空と出会い――というストーリー。

 

舞台が沖縄、著者の出身地も沖縄。
しかも季節は真夏の8月!
ということで、陽気な南国のトロピカルな雰囲気に包まれた1冊となっていました。

日本国内であるはずなのに醸し出される異国情緒が素晴らしい。

それは外国語にしか思えない方言だったり、見慣れないし耳慣れない沖縄グルメの数々だったり(いなり寿司しか食べられない春秋に食レポさせるとか作者はドSかな?)、生真面目な日本人性からズレた「テキトー」で朗らかな現地の人々だったり。
沖縄特有の、見知らぬようでいて不思議と落ち着く独特な空気はなんなのでしょうか。好き。

 

そんな独特な雰囲気を持つ沖縄という舞台に「神様」「ニライカナイ」「花人」といったご当地ファンタジー要素がぐるぐると混ぜられることで、現代でありながら異世界のような不思議な世界観を生んでいる本作。

 

第一話「盗っ人×ンブー・イナグ」第二話「のぞき魔×カタキラウヮ」は沖縄的な騒がしさや楽しさを濃縮した雰囲気で「花人」の仕事ぶりが描かれる短編。
沖縄のゆる〜い空気のなか、空や流威奈が神様と騒がしくも楽しそうに対峙する姿にワクワクしました。
そして盗撮魔は許しがたい。ルーチン野郎もたいがいだったけれど、新婚男が一番のクズだったか・・・。
豚の児女は女性の味方だったんですね。

 

明るくテンポの良い1話と2話も楽しかったけれど、個人的に「うわっ!カミツキレイニー節きた!」と一気に物語に引き込まれたのは第三話「ストーカー×弧狗裏」

春秋が「いなり男」となった原因の過去が語られるエピソードなのだけど、これがもう単体でめっちゃ好きでした。

孤高の人ぶっていた春秋に恋を教えた少女・千賀春波
春秋と春波の恋は、「こころ」の引用が実に印象的で素敵。
ゆっくりと近づいていき重なった二人の関係が、時間の経過とともにすれ違っていく様は1本の悲恋譚としてとても読み応えを感じました。

恋に狂っていく春秋の心情が良いんですよね〜。特にこのくだり。

君がこの恋を始めたくせに。僕を好きだと言ったくせに。つらいときは、いつだってそばにいてくれたくせに。本当につらい今、一番そばにいてほしいときに、君は僕に気づかない。

女は星の数だけいるというが、太陽はたった一つであろう。僕には彼女しかいなかった。彼女でなくてはだめだった。僕はまだ、彼女を傷つけ足りないというのか。
心が言うことをきかない。やはり恋は罪悪だった。
君を嫌いになれない僕は、せめて君のために僕を嫌った。

悲恋ソングの歌詞かな??
というのは冗談として、この未練タラタラで恨みがましく、一途であるがゆえに恋の醜さや汚さがドロドロと煮詰められていく感じ、正直めっちゃ好きですね・・・!

 

それにしても、春波の心が離れていく過程はハッキリした理由がないぶん、なんともリアルで切ない。
物理的に距離が離れて、それに伴って心の距離も離れて、希薄化する関係に耐えきれずに春秋が起こした行動がさらに二人の距離を遠ざける。
春秋がもがき苦しむ恋の泥沼に胸が痛くなりつつ、「まぁ、うん、これは振られる・・・」とも思ってしまいました。

あるあるすぎる苦い青春がここに・・・・・・。

この苦い記憶が彼の中から消えてしまったのは勿体ないのかも?
この痛みこそ経験にして思い出なのになー、とかなんとか知ったかぶって言ってみる。

 

そこまで思い至って、最初の亀浜オバーの言葉を思い出しました。

縁を切ることで全てを忘れ、罪も罰もなかったことにする。
だから人間は反省も後悔もしない。

「花人」の在り方を根幹から否定するような亀浜氏の言葉は、そのまま物語の苦味の一部となっていたように感じました。

 

かといって春秋の物語自体が苦いだけで終わらず、むしろ晴れやかなものとなったのは、空や沖縄の神様たちとの騒がしい日々が彼の中に残っているからなのかな。
そして何より、恋に狂い罪を犯した自分を忘れても、春波を助け自分の罪を償おうと懸命に戦ったことで得られたものがあるからに違いありません。

 

爽やかさとほろ苦さの絶妙な塩梅。
とても良い読後感だったと思います。
シリーズ化するのか分からないけれど、カミツキレイニーさんの次回作も楽しみに待ちたいと思います。

 

スポンサーリンク
 
1

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。