賭博師は祈らない/周藤蓮


賭博師は祈らない (電撃文庫)
賭博師は祈らない (電撃文庫)

評価:★★★★☆
2017年3月刊。
第23回電撃小説大賞「金賞」受賞作。
18世紀末のロンドンを舞台に、奴隷の少女と孤独な賭博師の出会いから始まる物語です。
明日をも知れぬ賭博師の悲哀とか、少女が沈む絶望とか、そういう重く苦々しい側面の描き方が秀逸な作品でした。
一方で、メイン二人の距離感の変化が生み出す雰囲気は、泣きたいくらいに優しくて温かいもの。
その明暗のコントラストが、物語を情緒豊かに彩っていくのです。
また、史実に基づく世界観は奥行きまでしっかり描かれていて、当時のロンドンの日常風景が目に浮かぶようでした。
そして伏線の張り方は絶妙で構成も丁寧。青年と少女の不器用で愛おしい日常が、やがて一世一代のギャンブルにつながる1本の物語として文句なしの完成度だったと思います。
いやほんと素晴らしかった。ぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
十八世紀末、ロンドン。賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。―それは、奴隷の少女だった。喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想い通わせていくが…。やがて訪れるのは二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。第23回電撃小説大賞・金賞受賞作!

以下、ネタバレありの感想です。

 

賭博で勝ちすぎた金を賭場に還元するため、奴隷を買うことにした賭博師の青年・ラザルス
こうして奴隷の少女・リーラと出会ったラザルスは、彼女との共同生活をぎこちなくスタートさせることになるのです。

 

まず印象的だったのは18世紀末のロンドンの風景。
人々がそこかしこで賭け事に熱中し、お世辞にも清潔とはいえない生活環境で、すぐ隣に後ろ暗い闇社会が存在する帝都ロンドン。
ボクシングの原型としてストリートファイトがあったり、貴族階級から流れてきた古着を庶民が買い求めたり、うっかり食べたら酷い目にあう食品が路上で売られていたり、動物園のようなロンドン塔に観光客が押し寄せたりーー

ラザルスとリーラの日常を通して描かれるロンドンの風景は、憧れるような綺麗なものではないけれど、人々の息づかいが聞こえてくるリアルな描写に思わず夢中になってしまいました。雑多で小汚い異国情緒にすごく惹かれる。

それくらい丁寧に背景が描写されていることに、著者の地力を感じます。
たぶん何を書いても読み応えのある世界観を作れるのでは。将来有望ですね!

 

さて、そんな泥臭くも賑やかな世界で出会ったラザルスとリーラ。
奴隷として表情と声を奪われたリーラはわかりやすく不憫な身の上。
けれど、不器用な優しさで彼女を癒やしていくラザルスもまた、賭博師ゆえの業を抱える悲しい男なのです。

賭場のご機嫌を損ねないように、「負けない」ように「勝たない」ように小銭を稼ぐラザルス。
口癖は「どうでもいい」で、判断に迷ったらコイン頼り。

そんなちょっと情けない男と思わせておきながら、賭博師としての腕は確かで行動には優しさがあって面倒見も良い。
これだけで好きになれるキャラクターなのだけど、ラザルスという男の最大の魅力は、儚く揺れ動く心を持った人間性にあると思うのです。

友人の死に自分の末路を見て、先の見えない将来に怯え、酒を飲んでどうにか不安な夜をやり過ごす。
そんなに辛いなら賭博師なんてやめればいいのに、養父の遺した願いに義理立てして、それだけは選ばない。

リーラへの接し方だけでなく、彼の不器用な生き方そのものにとても惹かれました。
めんどくさい男め!って思うのだけど、そういうところが愛おしくなる。

 

こんなに面倒な性分の男が「どうでもいい」と投げ捨てることができずに挑んだ一世一代の大勝負。
奪われた少女を取り戻すために男が全てを賭ける展開に、心が熱くならないわけがありません・・・!
ここに至るまでにラザルスとリーラがゆっくりと育てた日常があって、それを理不尽に壊された怒りがあるからこそ、余計にラザルスが大勝負に挑む展開に燃えるのです。

意識して身軽に生きてきたラザルスが、リーラのために「賭博師」の決まりを捨て、「一人の男」として賭場に挑んだっていうのもグッとくる。もう全部最高すぎ。こういうの大好き。

 

ラザルスとリーラだけでなく、彼らに関わっていく脇役たちもまた魅力たっぷりのキャラクターでした。
脳筋と思わせて実は色々と考えているジョンとか、軽薄なナンパ男だけど憎めないキースとか。思えば男率ちょっと高い??
そういえば、ラザルスの元カノは次巻のゲストヒロインだと勝手に予想していたのだけど、意外すぎる場所で登場して驚きました。結構好きなキャラだったからまた登場してほしいなー。

 

この元カノの件もそうだけど、伏線の張り方というか、構成の妙が光る作品だったと思います。
特にお気に入りはタイトル回収。
冒頭で「3つめ」について言及されていないことに気づいた人は多いかもしれない。でも物語の随所で宗教や祈りについて触れられているからこそ「祈らない」ことの意味が深くなると思うんですよね。うーん、上手い!

 

とても綺麗に終わっているけれど、ラストの展開的にシリーズ化できるはず。
諸国漫遊するのであれば各国の風景をこの作品ならではの視点からぜひ見せてほしいなぁ。
もちろんラザルスとリーラの優しくて愛おしい関係の行く末も気になります。

というわけで次巻を楽しみに待ってます!

 

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「賭博師は祈らない/周藤蓮」への2件のフィードバック

  1. 『賭博師は祈らない』、とても面白かったですよね。
    先月出た『~2』も面白かったです。

    1. えたんだーるさん、コメントありがとうございます。

      「賭博師は祈らない」すごく面白いですよね!
      2巻は買ってあるので近々読む予定ですー。
      めちゃくちゃ楽しみ!(*´∀`)

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