公爵夫妻の面倒な事情 (講談社X文庫)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
評価:★★★☆☆
2017年2月刊。
契約結婚+男装学園ものという、女性向けラノベの人気設定を両取りするチャレンジャーなラブコメ。
そのチャレンジ精神は尊重するけれど、1冊でどちらの魅力も引き出すのは難しかったようです。ストーリーは面白いものの、各要素があと一歩物足りない。
ただ、内容的にシリーズ化前提の作品だから巻を重ねれば不満点も解消されると期待しています。
まっすぐな気性のヒロイン、彼女をペット扱いするものぐさ公爵、個性豊かな公爵家の使用人たちなど、登場キャラクターもなかなか魅力的でしたしね。
面白いシリーズになってくれるといいなぁ。
☆あらすじ☆
ノエルは画家見習いの少女。王家お抱えの画家だったという父を捜すため、自分も宮廷画家になることが夢だ。でも、宮廷画家は男しかなれない花形職業……。性別詐称は厳罰と知りつつも、ノエルは男の姿で画家を目指すが、仕事先で出会ったひきこもり公爵リュシアンに、女であることがバレてしまう! そこで秘密を守るのと引き替えに提示されたのは、リュシアンの花嫁になり仮面夫婦生活を送るという条件で……!?
以下、ネタバレありの感想です。
画家であることしか知らない父を探すため、宮廷画家を目指す少女・ノエル。
しかし女性は宮廷画家になることができないため、ノエルは男のフリをして画家の叔父を手伝う日々。
そんなある日、ノエルはある依頼で出会った公爵・リュシアンに気に入られ、彼から「援助」を受ける代わりに偽りの妻役を引き受けることになるのです。
そして、この「援助」というのが王立芸術アカデミーに入学させてもらうこと。
これにより、ノエルは女装して公爵夫人、男装してアカデミーの学生、という二重生活を送ることになるのです。
見合い避けのための契約結婚による仮面夫婦生活。性別詐称がバレたら重罰に処される男装学園生活。
どちらも女性向けラノベでは頻繁にみられる設定ですが、同時に使われるのは珍しい気がします。というか、難しいんじゃないかなぁと思っていたら案の定・・・・・・。
続刊ありきだからかもしれないけれど、どちらの生活もダイジェスト気味に駆け足な展開に感じてしまいました。ストーリーそのものは面白いからもったいない。
特に芸術系学園モノは割りと珍しいのだし、そこが宮廷闘争の前哨戦が繰り広げられる特殊な場所なら尚のこと更に掘り下げた描写がほしかったです。
でもラストで宮廷画家選抜の展覧会に話が進んでしまったのだけど、学園パートはもう終了なのかな?
うーん、最初からメインでやるつもりがなくて中継地点でしかないのなら、構成的にこれくらいの扱いなのも仕方ないのか。
また、仮面夫婦要素についても、その設定が光ったのは一瞬だけ。お披露目の後は夫婦設定がほとんど死んでいた気がするんですよね。
どちらかというと雰囲気は主従モノっぽい感じ。これももったいないなー。
まぁでもリュシアンがノエルに惹かれて手放すかどうか悩むところとか、ノエルを犬扱いしてやたらスキンシップが多かったりするところは楽しかったです。このカップル自体は好きなんだよなー。
そんなわけで色々物足りなさはあるのだけど、設定そのものは面白いのであとは続刊次第だと思います。
キャラはとても良いから、続けば面白くなりそうな予感。
特にものぐさ公爵リュシアンとその愉快な使用人たちが魅力的ですからね。
面倒くさがりな彼らに生真面目なノエルがツッコミまくるという関係性がすごく楽しかったです。
リュシアンとノエルの関係も、過去の件も含めて、その行方にワクワクしますし!
気がかりなのは父親の件だけど、そこはまだ謎のまま。リュシアンの義母の問題が変に絡んできたら怖いなぁ。
未回収の伏線があるので、続刊前提の作品なのは間違いないと思います。
果たしてノエルは無事に宮廷画家となって父を探し出せるのか。リュシアンとの関係がどうなるのか。
2巻を楽しみに待ってます。