毒見師イレーナ (ハーパーBOOKS)【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
評価:★★★★☆
2015年7月刊。
面白かった!
殺人罪で死刑になるはずだった少女が、国の最高司令官の毒見役となることを選ぶところから始まるファンタジー。
過酷な毒見訓練やイレーナ自身の暗い過去、そして彼女を狙う襲撃者や国家を揺るがす陰謀など憂鬱な要素は多いけれど、死に物狂いで生き伸びようと努力するイレーナの強さに惹かれて一気読みしてしまう作品でした。
か弱い少女が生きるために力や技術を手に入れる成長譚として抜群の読み応えがあり、心理的駆け引きを繰り広げるなかで徐々に生まれるラブロマンスも素敵です。
これ三部作なんですよね。早く続きを読みたい!
☆あらすじ☆
ある殺人を犯した罪で死刑囚となった少女イレーナ。ついに絞首台へと送られる日を迎えるも、そこで思わぬ選択肢を与えられる――今すぐ絞首刑か、それとも、国の最高司令官の毒見役になるか。だが毒見役を選んだイレーナを待ち受けていたのは、逃走防止の猛毒だった。かくして少女は毎日与えられる解毒剤なしには生きられぬ身体に。わずかな生きる希望に賭け壮絶な日々に立ち向かうが……。
以下、ネタバレありの感想です。
物語の舞台となるのは、王政に対する革命が成功し軍事政権によって支配された国・イクシア。
軍事政権の有力者・ブラゼル将軍の息子を殺した罪により死刑を待つ身だった主人公・イレーナは、死刑執行直前になって、最高司令官アンブローズの毒見役となるか否かの選択を突きつけられることに。
そうして彼女が選んだのは、毒見役として生きていく道。しかしそれは、毎日解毒剤を与えられねば毒で死ぬことを枷としたもので――
今すぐ絞首刑を執行されて死ぬか。
生涯毒見役として、いずれ最高司令官の代わりに死ぬか。
それとも逃亡して、解毒剤を投与されずに死ぬか。
これに加え、物語が進むにつれて、
魔力持ちのイレーナの暴走を恐れる他国の魔術師に殺されるか。
復讐に燃えるブラゼル将軍によって暗殺されるか。
という未来まで増える始末。
まさにどこを向いてもデッドエンドだらけという恐ろしい状況のなか、イレーナは必死に頭を働かせ、知恵をつけ、力をつけ、技術をつけ、生き延びる手立てを自ら手繰り寄せていくのです。
いやぁ、いいなぁ、修行する少女!戦う少女!
根性のある少女主人公って大好きです。生きるために死に物狂いなイレーナの強さに心を奪われてしまいました。
味方などハナから存在しなくて、ゼロから信頼できる相手を作らねばならない。でも誰も彼も疑わしくて神経を張り詰めさせるイレーナのピリピリする心境も読み応えあり。
そんな過酷な状況から始まるだけに、イレーナがヴァレクや双子と少しずつ打ち解けていく姿にはどうしようもないカタルシスがありました。
特にヴァレク!
上官であるヴァレクを徐々に尊敬して頼りはじめるけれど、そもそもヴァレクがイレーナの命を握っている張本人である以上、彼を絶対的な味方と信じて良いのか迷い続けるのも当然のこと。
でもそれ以上に危険な魅力にクラクラ(むしろグラグラ)してしまうのもわかる・・・! だってこんなに格好いいんだもの。
互いを信じるべきか否かという二人の駆け引きにドキドキしつつ、ラストの展開には悶えまくりでした。あぁ〜たのし〜〜。
成長譚やラブロマンスとしても面白い作品だったけれど、イレーナが飛び込むことになる陰謀劇もそれ以上に読み応えがあって面白かったです。
革命後の安定しきれない軍事政権、排除されているがたしかに存在する魔術師、そして徐々に忍び寄る危険な罠・・・・・・。
予想よりファンタジー色の強い内容なのは大好物だし大歓迎です。イレーナもいつかアイリスみたいな魔術師になるのかな。ワクワクします。
しかし色々あったのに、やっぱりチョコレートは魔性の食べ物だったという印象が強いな・・・・・・バレンタインシーズンに読んだのはすごい偶然でした。
さて、大きな問題を解決して物語は次なるステージへ。
イレーナにこれからどんな運命が待つのか、ヴァレクとの関係はどうなるのか。
色々と楽しみすぎて続きが早く読みたいです。なんで1巻しか買ってなかったのかなぁっ、わたし!