前作の感想はこちらから
評価:★★★★☆
2016年9月刊。
前作「死にかけ花嫁と革命の鐘」から20年後の世界を舞台にしたヒストリカルロマン第2弾。
今作のヒーローは前作カップルの息子ですが、前作を読んでいなくても問題なく楽しめるストーリーだと思います。
そしてまたも主人公は「死にかけ」ヒロイン。
前作ヒロインとは違った方向性で死にかけていて、清らかなのに陰の強いキャラクターが印象的な「聖女」でした。
そんな彼女にペースを崩される腹黒皇子の奮闘にも注目。ラブロマンスは安定の糖度に大満足です。
☆あらすじ☆
ブルグ帝国辺境の修道院で働く〈紅の聖女〉ルチア。奇跡を起こすと評判だが、実はその力は偽物。だが、皇子クラウディオに拉致され、次期教皇の不正選挙阻止の協力を頼まれて!? 激動のヒストリカルラブ!
以下、ネタバレありの感想です。
本作の主人公は、貧しい修道院を助けるために「紅の聖女」として奇跡という名のペテンを駆使する少女・ルチア。
そんな彼女をブルグ帝国の皇太子クラウディオが颯爽と拉致したことから、ルチアは教皇国の教皇選の裏側で起こる陰謀に巻き込まれ、その騒動のなかで自分の出自に隠された秘密を知っていくことになるのです。
今回もタイトルに偽りなく、正しく「死にかけ」のヒロイン。
「死にかけ」と言っても色んな切り口があるものですね。前作は病弱少女でしたが、今作のルチアの「死にかけ」方はあまりにも痛々しくてゾッとしてしまいました。
「聖女」と書いて「ペテン師」と読むルチア。
彼女の起こす奇跡はタネも仕掛けもあるものばかりで、その存在は嘘と虚飾にまみれた偽りの聖女。
それでも彼女の心根はとても清らかで、自己犠牲と信仰心に裏付けられた佇まいは神秘的ですらあるのです。
そのギャップこそが彼女自身を傷つけ、苦しめ、さらに「死にかけ」の運命に追いやっていくわけで、そこがとても痛々しくて哀しいな、と。
ルチアのそういう負の側面をクラウディオがどんどん暴いていき、原因に切り込んでいくと同時に二人の距離を縮めていく展開はとても読み応えがありました。
ルチアの心を救うためにクラウディオが口にする「ともに地獄へ堕ちよう」という誓いが良いんだよなぁ。繰り返される度にそこに込められる想いが強くなり、よりロマンチックなセリフへと昇華していくんです。これは素敵すぎる。
ルチアの罪悪感や、婚姻を許されない彼女の生まれのこともあり、最後までハラハラさせるルチアとクラウディオの恋。
障害の多い二人の恋の行方が気になりつつも、次期教皇選挙を巡る陰謀劇は二転三転する緊迫感に夢中になって読んでいました。
特にクライマックスの弾劾シーンで炸裂するペテンが本当に痛快。挿絵のルチアの必死な形相が可愛いけれど、流血流血ーー!とドキドキしたw
余談ですが、お母さん生きていてくれて本当によかった・・・・・・件の3人に何があったのかはちょっと気になりますけどね。
お母さんといえば、ヘルミナは母になっても落ち着かなかったのかー。さもありなん。
クラウディオの口から語られる両親のバカップルぶりには笑いましたw
家族の団らんがないとか言うからヒヤッとしちゃったじゃないか!
さて、最近のコバルトは連作シリーズブームだと思っているのですが、本作もさらに続きが登場したりするのでしょうか。
縦に続いていくヒストリカルロマンがもっと読みたいので、3作目を楽しみに待ちたいと思います。