ルルル文庫 桜嵐恋絵巻【Amazon】/【BOOK☆WALKER】
評価:★★★★☆
2008年8月刊。
これは良い!すごく良い!!
家族からすら忌み嫌われる「鬼姫」と、偏見にとらわれずに彼女と接する貴族の子息。
ふたりの出会いから始まる恋の物語です。
数々の障害があっても惹かれ合う二人の姿にときめきが止まりません。
平安版ロミジュリな雰囲気も気になる作品。続きを読んでいくのが楽しみです。
☆あらすじ☆
桜の下で雅な恋が始まる! 平安ラブロマン!二条中納言家の詞子姫は、鬼を呼ぶと幼い頃から皆に疎まれ、16歳で無実の罪を着せられ、ついに別邸に移される。そんな詞子が、美しい桜に惹かれて庭に降りると、そこには長身で黒目が印象的な雅遠の姿が…!?
以下、ネタバレありの感想です。
父の愛人から死に際に呪詛され、呪い持ちの「鬼姫」として家族から忌み嫌われてきた中納言家の姫・藤原詞子。
風流な慣習が性に合わず、出来の悪さを理由に親から諦められていた左大臣家の嫡子・源雅遠。
平安京に住まう貴族の家の者でありながら、互いに居場所がなかったふたりは、ある日、猫と桜に導かれるようにして出会うことになるのです。
「鬼姫」である自分から雅遠を遠ざけようとする詞子。常識と風聞にとらわれずにグイグイと距離を縮めていく雅遠。
平安京の奥ゆかしさが吹っ飛ぶような雅遠の行動に笑ってしまいました。この性格は確かに生きづらいだろうなぁw
それでも、互いが抱える孤独が雅遠を突き動かして、詞子にそれを拒絶することを許さなかったのでしょう。
義理のきょうだいとか世間での生きづらさとか、こんなに共通点があって同じ苦悩を抱えているのだから、惹かれ合うのは当然なのかも。
一緒にいるのが日常化していく中で唐突に訪れた会えない日々が決定的な気持ちの変化をもたらす、という展開も王道ながら素敵でした。
初めて恋を知った雅遠と、伝えられない恋しさを募らせる詞子。
ふたりの「逢いたい」という気持ちが重なっていく描写があまりにも切なくて、なんだか泣きそうになってしまいました。あそこの恋心が溢れ出るような演出は最高。
ラストシーンですでに満足しかけてしまったのですが、物語的にはまだまだ序章。
「鬼姫」という醜聞をどうするかも難題ですが、なにげに後々大きな問題となっていきそうなのは家の問題。
政治的に敵対する家にあって、果たして二人の恋は認められるのでしょうか。
これぞ平安版ロミジュリですね。今後の展開がとても気になります。
ところで、脇キャラに「葛葉」と「保名」がいるのは何かの伏線なのでしょうか。
引き続きシリーズを読み進めていこうと思います。