評価:★★☆☆☆
2016年5月刊。
前田珠子原案のファンタジー世界を2人の作家が小説化するというちょっと変わった企画もの。
光の巫女を主人公に2人のヒーローが用意されていて、今回は表紙の黒髪青年が正ヒーロー。
ゲーム的にいうとエイシャラムルートになるのかな。6月刊行予定の「光の巫女を抱く夜」では、表紙奥にいる銀髪のハワルアトを選ぶストーリーになるそうです。
前田珠子作品に触れるのは初めてだったのですが、割と面白そうな世界観だと思います。
うーん、でも魅力に感じるほどではなかったかも・・・・・・途中の展開が腑に落ちなかったからかもしれませんが。
☆あらすじ☆
光闇の化身からの恩寵『ミユキ』にあふれた島・トランキザム。島の特別な守り手に選ばれ、神殿で日々を送る少女ヒアルキト。ある青年との出会いが、運命を変える──前田珠子の新作世界を気鋭が小説化!
以下、ネタバレありの感想です。ネガティブ注意。
光と闇が均等に交差する島・トランキザムで生まれ育ち、恩寵の力である『ミユキ』を世界に巡らせる役目を担う「右手(ゆめ)の君」ヒアルキト。
自分の役目を自覚しながらも窮屈に感じる彼女が、異国から流れ着いた青年・エイシャラムに出会うことで、知らなかった島の真実を目の当たりにしていく、というストーリーです。
ヒアルキトに想いを寄せる「左手(ゆんで)の君」ハワルアトも実はエイシャラムと知り合っていて、3人それぞれ知らぬ間に三角関係を築いていた、という流れは良かったです。こういうのは好き。
許されない恋をひた隠しにするハワルアトと、何でもフルオープンなエイシャラムが、同じ女性に対する想いを語るシーンはハラハラしつつも楽しかったですw
エイシャラムに出会い、外の風を感じる彼に惹かれていくヒアルキトの恋も素敵でした。
役目を大事に思っている彼女だからこそ、巫女としての立場と初めての恋の板挟みにあう悲壮感は読み応えもありましたしね。
ただ、エイシャラムが捕まったあたりの展開がどうにも雑というか読みづらくて、それ以降楽しむことができませんでした(´・ω・`)
読みづらさ自体は途中から薄れていったのですが、その代わりに「カゲリ」の設定が腑に落ちなくて困惑。
「無垢であれ」の戒めを破ったから「カゲリ」をよんだのかと思っていたのに、ヒアルキト自身が呼んだもの??
あのへんの説明がしっくりこないんですよねぇ。結局、どういう心理になれば「カゲリ」がくるのかよくわからない・・・・・・。
うーん、世界観自体は魅力的なのに、思わせぶりな「島の秘密」も小物が私腹を肥やしていたという肩すかしなものだったし、オチも主役カップルについてはハッピーエンドでも人身御供が存在し続けることは変わらないわけだし。そもそも島だけで完結しているから、世界観が広そうで狭いのも残念。
なんだか色々とモヤモヤとしてしまいました。私には合わない作品だったのかなぁ。
6月に発売される方を読めば違った印象を受けるのかもしれませんが、個人的にルート分岐なifストーリーに興味が持てないんですよね。
ハワルアトは報われない不憫さに萌えるんじゃないか!
次巻はとりあえず様子見で。