『新釈 グリム童話 −めでたし、めでたし?−』(谷瑞恵・白川紺子・響野夏菜・松田志乃ぶ・希多美咲・一原みう著/集英社オレンジ文庫)★★★★☆
新釈 グリム童話 -めでたし、めでたし?- (集英社オレンジ文庫)
2016年3月刊。
面白かったー!!
コバルト文庫とオレンジ文庫で活躍する作家陣による現代版グリム童話アンソロジー。
ほっこりと優しい話、ときめく恋の話、爽やかな友情の話、笑えないレベルのホラーな話などなど、バラエティに富んだ内容の短編集です。
一部作家さんを目当てに読んでみたのですが、予想以上に満足できました(´∀`*)
☆あらすじ☆
誰もが知るグリム童話をベースに、舞台を現代におきかえストーリーを大胆にアレンジ!
ヒロインがふたりの白雪姫、老舗ホテルの一人娘として生まれたの眠り姫、廃屋から届くある依頼に悩むヘンゼルとグレーテル…など、全六編収録。
以下、ネタバレありの感想です。
童話「ルンペルシュティルツヒェン」から。
就活に悩む主人公に届いた不思議なメールをきっかけに、「なくした大切なもの」の名前を探す物語です。
メールの謎かけとヒントをたどって、少しずつ思い出していく過去の記憶。
そこから見えてくる、見失っていた大切なもの。
ささくれ立っていた心を優しく包んでくれるような雰囲気がとても好きでした。
この短編集の中で一番癒されるお話だった気がします。
どうせなら短編集の最後に配置して口直しさせてほしかった気が(この後はなかなかエグみの強い短編が続くので)
童話「白雪姫」から。
ぎゅっと心を掴んでくる、インパクトと勢いのある短編でした。
毒りんごのかけらを喉につまらせたまま「きれい」に執着する主人公。
最初はなんと自惚れの強い子なんだろうと思っていたのに、徐々に彼女の背景が見えてくるとゾッとするやら哀れに思うやらで・・・・・・。
一体どういう方向に進むのかと思っていたら、予想以上に爽やかな少女の友情物語へと着地。
互いをライバル視する2人の少女。彼女達の遠慮のない言葉の応酬がとても気持ち良かったです。
童話「かえるの王様」から。
これは真剣に怖かった・・・・・・!!
そこらのホラーよりもよっぽどホラーな短編でした。
不倫の追及からかばってくれた同僚の男性。
主人公は彼をキモメンでブサメンだと罵っているけれど、「かえるの王様」がモチーフなんだし、どこかで華麗に印象を変えてくるんでしょ? とか甘く見ていたのがいけなかったのか。
いやー。怖い。オチに鳥肌がぶわっと立ちました。
「かえるの王様」って、キスして魔法が解ける話という印象が強かったんですけど、そういえば本当はカエルを壁に叩きつける話なんですっけ。
それで王様になったらあっさり態度翻すとか王女様スゲーなって思うものの、こういう解釈ならアリですね←
童話「眠り姫」から。
一番少女小説的な恋物語だった短編。
直前のカエルさんで心をガシガシ削られたので、すごく癒された気持ちになりました。やっぱり私はこういう王道ラブストーリーの方が好き!
直人さんの不器用な優しさがとても素敵なのです。
ラストシーンも「ねむり姫」を美しくアレンジしていて印象的でした。
しかしこのお父さんはどうにかしないと。ダメ男すぎる。
童話「ヘンゼルとグレーテル」から。
幽霊屋敷の怪に霊能力者が挑む! というオカルトな短編。
ファンタジー色が強すぎて、少し他の作品から浮いていた気がします。
粗は特にないんですけど、薄味かなぁ。各人の掘り下げも甘い。
童話「シンデレラ」から。
愛する母の当たり役を目指して、オーディションに挑む少女の物語。
シンデレラはガラスの靴が幸せを運んできてくれたけれど、彼女の幸せは誰が運んでくれるのか。どこにあるのか。
一番彼女のことを考えていたのは実は・・・・・・っていうどんでん返しは王道ながら読後感が良くて好みでした。
とても満足できる短編集だったと思います。
またこういうアンソロ企画をやってほしいなぁ。