血翼王亡命譚1 祈刀のアルナ


『血翼王亡命譚Ⅰ 祈刀のアルナ』(新八角著/電撃文庫)★★★☆☆

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)
血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

2016年3月刊。
第22回電撃小説大賞「銀賞」受賞作。
とても凝っていて読み応えのあるハイファンタジーでした。
キャラクターは魅力的だし、王女と護衛の逃亡劇ってところもすごく好み。
物語の中に設定を自然に溶け込ませながら説明していくところには技量を感じたし、奥行きのある幻想的な世界観は素晴らしかったと思います。
ストーリーは消化不良気味に感じる部分もありましたが、まだ1巻ですしね。続くならアリかな。
そんな感じですごく良い作品だったのですが、結末が・・・・・・

☆あらすじ☆
“私は駄目な王女だからね。自分のために命を使いたいの”耀天祭の終わり、赤燕の国の第一王女が失踪した―。だが、それは嘘だと俺は知っている。太陽を祀る五日間、彼女は王族の在り方に抗い、その想いを尽くしただけ…。突如国を追われた王女アルナリス、刀を振るうしか能のない幼馴染みの護衛ユウファ、猫の血を秘めた放浪娘イルナに人語を解する燕のスゥと軍犬のベオル。森と獣に彩られた「赤燕の国」を、奇妙な顔ぶれで旅することになった一行。予期せぬ策謀と逃走の果て、国を揺るがす真実を目にした時、彼らが胸に宿した祈りとは―。これは歴史の影に消えた、儚き恋の亡命譚。第22回電撃小説大賞“銀賞”受賞作!

以下、ネタバレありの感想です。

 

主人公は、王女アルナリス直属の護衛「護舞官」ユウファ
成人の儀に向かう途中で謎の襲撃に遭ったユウファとアルナリスは、内通者がいるかもしれない王宮には戻らず、味方を名乗るイルナに導かれて逃避行を始めることになり・・・・・・という形で物語はスタートします。

 

この作品の最大の魅力はオリジナリティにあふれた世界観だと思います。

まず「言血」という設定が面白い。
万物に巡る生命力であり、戦う力であり、人々の記憶である「言血」。
序盤は理解するのが難しい設定でしたが、少しずつ物語に馴染むうちに、言血で彩られる物語世界の幻想的な雰囲気に魅入られていました。

「言血」の影響を受けやすいというユウファのキャラ設定も絶妙なんですよね。
彼の動揺を「言血が乱れる」と表現するなど、地の文にまで世界観を徹底させたファンタジー作品は大好物です。

 

「蛇の血」「鳥の血」「猫の血」という設定も面白い。
いわゆる亜人種しかいない世界観なのでしょうか。
後半で登場した「猫」の姿には驚きましたが、蛇や鳥も似たような感じなのかな。
各人種や、それが生まれた経緯、また「鳥」の「発明」など、1巻だけでは不透明な部分が多かったのですが、続刊で少しずつこのあたりの世界観についても掘り下げられていくのでしょう。
この奥行きのある世界観について、どんな真実を見せてもらえるのか楽しみです。

 

キャラクターも生き生きとしていて、特にアルナとユウファの主従関係が素晴らしく好みでした。
王族として言葉を話せないアルナのために「手語」を使って会話するというのが素敵。
誰が傍にいても、どこにいても、手語で話すことであっという間に生まれるふたりの世界。
そこに幼い頃から続く優しくて甘い絆を感じてドキドキしてしまいました。

 

キャラクターが魅力的だっただけに結末が容赦なく心を抉ってくるものの、終盤の展開自体は美しくも儚さを感じて良かったと思います。

 

「王女」との叶わない約束を支えにしてきた「護衛」。
そんなユウファが、逃亡劇の果てに辿り着いた場所で、アルナの隠してきた複雑な想いを知るシーンにはとても胸を打たれました。
そして、どこか影のあったアルナが見せた本当の姿と彼女が選んだ結末は、どうしようもなく涙を誘ってきて・・・・・・。

 

これが単巻作品やシリーズ終盤にくる展開だったら良かったのになぁ。
「哀しくも美しいファンタジーだった」と余韻に浸れただろうに。

 

でも本作はナンバリング通りの第1巻。
喪失から始まる物語なんですね。そう考えるとちょっと複雑な気持ちに。失った後の物語って苦手なので。

ただ、世界観の謎や放置された黒幕など、色々と消化不良なので続刊が出るのは間違いないのでしょう。
このままだとカタルシスという点でも微妙ですからねー・・・。
それにしても、母娘の確執を放り投げた状態でアルナを退場させて本当に良かったのでしょうか。何か救済がないとモヤモヤしたままになるのですが。

 

続きがとても気になりますが、続きを読む気力が出るかは自信がないです(´・ω・`)
あんなに私好みなカップルで萌え転がしておいて、こんな形で梯子を外すなんて酷い。
この喪失感を払拭できるほどのカタルシスがこの先に用意されているなら良いのですが。新人さんだけに未知数すぎる。

 

ああもう、この結末じゃなければ今後に期待したい本格ハイファンタジーだと心置きなくワクワクできたはずなのに・・・・・・!

 

うっかり無念が溢れてしまいましたが、素晴らしいファンタジーであることは間違いありません。
キャラ、設定、世界観には文句なし。むしろ大好きです。最高でした。

この結末で続刊ありきな点については好みの問題ですね。
私はとてもしょんぼりしていますが、これを覆す魅力的な物語が続くことを期待するしかありません。

 

とりあえず、次巻を待ちたいと思います。

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