クシエルの矢 全3巻(クシエルの遺産シリーズ1)


『クシエルの矢 1〜3』(ジャクリーン・ケアリー著/和爾桃子訳/ハヤカワ文庫FT)★★★★☆

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)
クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)

中世ヨーロッパをモチーフにした壮大な歴史ファンタジー。
天使の末裔が築いた王国を舞台に、神に仕える娼婦フェードルの波乱に満ちた運命を描く物語です。
かなり設定が作り込まれており、登場人物も国内外の勢力図も複雑すぎて一読で理解するのは本当に大変でした。特に1巻は完全な理解を放棄してひたすら文字を追っかけていたレベル。
しかし話が進むにつれて、その細部まで練られた世界観が読み応えにつながっていくのです。2巻3巻は夢中になって読んでしまいました。
苦痛に快感を覚える性癖を神から与えられ、逆境を切り抜ける才覚を養父から与えられた主人公。彼女のその才能は、彼女にどんな運命をもたらすのか。
主人公のマゾヒズムに最後までハラハラさせられましたが、とても面白かったです!

☆第1巻あらすじ☆
天使の血をひく人々の国、テールダンジュ。ここでは、愛の営みは神への捧げ物である。少女フェードルは“クシエルの矢”と呼ばれる印をもって生まれ、それゆえに数奇な運命をたどる。謎めいた貴族デローネイに引きとられ、陰謀渦巻く貴族社会で暗躍するためにあらゆる知識と技術を授けられたのだ…一国の存亡を賭けた裏切りと忠誠が交錯する中、しなやかに生きぬく主人公を描くローカス賞受賞の華麗な歴史絵巻、開幕。

以下、シリーズ第1弾「クシエルの矢」全3巻のネタバレあり感想です。

 

2009年6月刊。
物語の舞台となるのは、天使の末裔が築いた天使国テールダンジュ
主人公フェードルは神に使える娼婦であり、クシエルの矢と呼ばれる印を瞳にもつ特別な存在アングィセットでもある少女。
権謀術数渦巻く貴族社会を生きる養父デローネイのため、フェードルは娼婦として様々な情報を集めていきます。

この第1巻では、地名人名勢力図が頭に入りきらないうちに怒濤の如く情報が飛び交うので3分の2を読んでも何が何だかサッパリ分かりませんでした。話を動かすための予備知識を与えるのが目的なのか、どこか歴史書みたいな雰囲気がありましたし。

設定は良く分からないながら、フェードルがマゾということだけはしっかりと理解。
苦痛を快感に覚えるアングィセットが、様々な客たちとどういう夜を過ごしていくのか・・・・・・。思い出すだけでも痛い〜っ(((゜Д゜;)))と背中がもぞもぞしてしまいます。

そんなマゾ炸裂な主人公ですが、彼女自身はとてもキュートで明るいので結構好みな子だったり。
フェードルのハードすぎる夜のお仕事が続く中、親友ヒアシンスといるときの年相応な雰囲気だけが癒やしでした。

第1部全3巻を読み終えた今、もう一度再読すればこの巻の内容もちゃんと理解出来るのかもしれないなぁ。

 

 

☆あらすじ☆
テールダンジュを司る高貴な人々の秘密を探るべく、謎多き貴族デローネイのもとで神娼として奉仕するフェードル。彼女は、力を増す諸外国に囲まれ、野心に満ちた地方領主たちを抱えて揺れる国家のさまざまな闇を目の当たりにする。老いた王とその孫娘を待つ罠とは、そしてデローネイが忠誠を誓う相手とは?予言によればそれを知った日、フェードルは絶望するだろうという…。

2009年8月刊。
この2巻からついにフェードルを中心に物語が動き始めます。
1巻では蚊帳の外だった主人公が波乱の運命に叩き込まれることによって面白さは格段に跳ね上がっていくのです。

庇護者を失い、罪をなすりつけられ、奴隷に落とされてしまうフェードル。
彼女の過酷な旅路のお供になるのは、頑固者のキャシリーヌ修道士ジョスラン

過酷な冬の国を舞台に、フェードルとジョスランの苦難が描かれていくわけですが、キツい状況に陥れば陥るほどフェードルの有能さが開花していくのです。

娼婦の技を駆使して、窮地を文字通り体を張って切り抜けていくフェードル。
(悦びながら)痛い思いをしまくっているのはアングィセットな彼女らしいのですが、そんな自分の性癖に心底うんざりしているのが印象的でした。

1巻時点では印象が薄かったジョスランもこの巻から格好良く目立ち始め、フェードルの騎士として立派に成長。
それが死亡フラグに思えてならなかったのは内緒です。

 

 

☆あらすじ☆
最愛の家族を失い、修道士ジョスランとともにスカルディアの蛮族に売られたフェードル。だが、鍛えた洞察力と生来の才能、そして故国への忠誠心によって二人は死地を乗り越え、辛くもテールダンジュに帰還した。しかし、王国はすでに分裂の途にあった。スカルディア来襲の報を告げられた女王の密命により、フェードルは国を救うため、幼なじみのヒアシンスを伴い新たな旅に出る…華麗なる叙事詩、激動の第1部完結篇。

2009年10月刊。
過酷な真冬の逃避行を乗り越え、テールランジュに帰還したフェードルとジョスラン。
裏切りの脅威にさらされる国を救うため、女王イサンドルの密命を受けたフェードルは、ジョスランとヒアシンスを供として、再び旅に出ることに。

歴史の動きを感じさせるほど、スケールの大きさを示した第3巻。
戦記的な読み応えにファンタジーなノリも入ってきて、550頁超の厚さをものともさせない面白さでした。

そして今回もやっぱりフェードルの武器は、娼婦の技とデローネイ仕込みの知略。
女の武器をフル活用しつつも、男顔負けな頭の回転が素晴らしい。
マゾ気質だけは理解できませんが、それ以外は本当に格好良さを感じる主人公です。

そうやってフェードルが頑張りつつも、またも試練の連続となる今回の旅路。

そのなかでも、まず衝撃だったのはヒアシンスの結末でしょうか。
最後にしっかり救済の余地を残してくれたのには安堵しましたが、彼の呪縛が解ける展開がくることを本当に期待しています・・・・・・。

次に衝撃を受けたのはフェードルとジョスランの関係。
娼婦であるフェードルが一人の男性を選ぶとは思っていなかったので。選んでもシリーズの終わりの方かなー、と。
まぁ堅物修道士も大分世間にすれてきましたからね。今までの彼らの道のりを思えば当然のなりゆきなのか。

この展開自体はとても嬉しかったのですが、なんかやっぱりジョスランの死亡フラグが見えるのは私だけでしょうか。
ラストのメリザンドからの挑戦状を思えば、フェードルの波瀾万丈はまだまだ続きそうだからなぁ(´・ω・`)
できれば最後までジョスランがお供として寄り添ってくれますように。

 

 

非常に満足度の高い第一部でした。
第二部、第三部も引き続き読んでいこうと思います。

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。