竜に選ばれし者イオン 上・下


『竜に選ばれし者イオン(上・下)』(アリソン・グッドマン著/佐田千織訳/ハヤカワ文庫FT)★★★☆☆

竜に選ばれし者イオン(上) (ハヤカワ文庫FT)
竜に選ばれし者イオン(上) (ハヤカワ文庫FT)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2016年1月刊。
アジア風な世界を舞台に、竜に選ばれた少女の試練を描くドラゴンファンタジー。
ちょっとエンジンかかるまでに時間がかかりましたが、性別という大きな秘密を抱えた少女の葛藤を描きつつ、竜の力を手に入れた人々の思惑が渦巻く権力闘争の物語としても読み応えがありました。
ただ、訳文のせいか原文のせいか、作中の描写が分かりづらい部分があったのは残念。
2部作の第1弾ということですが、下巻まで読んでもかなり中途半端なところで終わっています。3月に刊行される第2弾が待ち遠しい。

☆あらすじ☆
十二頭の竜の力によって守られる国で、竜に選ばれた者は〈竜眼卿〉となり、皇帝に次ぐ高い地位が与えられる。竜に選ばれるべく厳しい修行を積んでいた男装の少女イオンは、長らく姿を消していた幻の竜に選ばれ、権謀術数渦巻く宮城へとその身を投じることになる……。華麗なる中華風ファンタジイ二部作第一弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、十二頭の竜と、それぞれの竜と絆を結ぶ竜眼卿によって守られる帝国。
主人公イオナは、男しかなれない竜眼卿に選ばれるため、性別を隠し「イオン」という名で候補者になった男装の少女です。

 

竜眼卿の見習いを選ぶ儀式の中で、500年以上失われていた鏡の竜に選ばれてしまったイオン。
女だとバレたら殺されるかもしれない状況のなかで、しかも肝心の竜との絆は不完全な状態。
秘密を抱えたまま竜眼卿という地位を得たイオンは、様々な立場の人にかけられる期待を背負いながら、宮城の政争に巻き込まれていくことになるのです。

 

中国や日本の歴史や文化に着想を得たとのことで、そこかしこに面影はありますが(十二支など)、登場人物の名前などを考えると中華風というよりアジア風なファンタジーでした。
個人的には、中華風世界観ならではの小道具類などをもっと作り込んでほしかった気がします。
英語の限界なのか、翻訳の限界なのか、世界観が細かい部分で少しぼんやりとしていたのは残念。

 

このアジア風な世界で、過酷な運命を生きることになる主人公イオン。
全編を通してイオンの苦悩・葛藤・成長を描いていく物語なのですが、鏡の竜眼卿にかけられる期待の大きさと、それに応えられない自分の現状の齟齬に苦しむ彼女の姿はとてももどかしく感じてしまいました。

イオン自身は流されるまま試練の連続に放り込まれる感じなのが余計に辛い。いくら本人に覚悟があるとはいえ、彼女が自らたぐりよせた運命じゃないんですよね・・・・・・不自由な足の原因が明らかになったシーンとか、本当に怒りしかありませんでした。
しかし奴隷的な立場だったイオンに抵抗する術があったわけでもないしなぁ。
結局これは、他人によって運命を弄られてしまった少女が竜という力を得ることで、突きつけられた運命に自ら立ち向かう物語だったのでしょう。

 

スローな展開をしていく上巻とは打って変わり、下巻では後ろ盾を失い政敵に弱味を握られ・・・・・・といった感じで怒濤の展開に入っていきます。連発する窮地の中で、必死に生にしがみつこうとするイオンの姿は(彼女の内心はさておき)意外と頼もしく見えたのが印象的でした。

 

さて、終盤で起こってしまった内乱。イオナとなった竜眼卿はどう立ち向かっていくのでしょうか。
かなり気になるところで下巻が終わっているので、二部作の完結編がとても楽しみです。

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