図書館ドラゴンは火を吹かない


『図書館ドラゴンは火を吹かない』(東雲佑著/宝島社)★★★★☆

図書館ドラゴンは火を吹かない
図書館ドラゴンは火を吹かない

2016年2月刊。
第3回なろうコン選出作。
なんて優しくて、悲しくて、美しい物語なのでしょうか。
図書館を守る孤独なドラゴンが、在りし日の親友との旅路を懐古する物語。
すでに失われた日々を語ることの寂しさが胸を締めつけると同時に、思い出の中の彼らの笑顔に心が温かく癒される作品でした。
物語師であり魔法使いである少年の旅を描く物語としても、児童文学的な懐かしい雰囲気のあるファンタジーとして魅力的。出会いと別れを繰り返す旅人たちが歩む、広大な世界に胸のときめきが止まりません。
この巻は気になるところで終わっているので、続きがとても楽しみです!( ´ ▽ ` )

☆あらすじ☆
とある司書王の遺した図書館で、百年の孤独に耐えながら書物を守る火竜がいた。書物の庇護者たる彼女は、火竜であるにもかかわらず、炎は本を燃やすものとして決して炎を吐かなかった。彼女は夢を見る。それはまだ幼き司書王・ユカと旅した輝かしい思い出。
さぁ、説話を司る神の忘れられた御名において、はじめましょう。少年ユカと竜のリエッキの出会い、そしてその旅路の物語を。

以下、ネタバレありの感想です。

 

この物語は物語師の少年ユカと親友のリエッキを主人公として、大まかに2つの時間軸を並行して描いていきます。

 

ひとつは、司書王の遺した図書館を守り続ける孤独なドラゴン・リエッキの「現在」。
今はいない親友との約束を律儀に守りながらも、孤独に苛まれて嘆く彼女の姿にとても胸が痛みます。
序盤は見るに忍びないほど辛そうなリエッキでしたが、牛頭と養い子の登場によって彼女の孤独が和らいでいく姿にはホッとしました。
リエッキの孤独が簡単に癒えるものではないとしても、このままの状態で永遠を過ごすのはあまりにも悲しすぎますから。
リエッキの「現在」がどうなっていくのかは続きを待つしかないですね。どうかリエッキにもう一度幸せを!

 

そしてもうひとつは、ユカとリエッキの在りし日の姿を描く「過去」。
こちらは、捨て子のユカが養母のために物語師を志し、リエッキと出会い、彼女と共に物語を譚る旅をしていくという物語。
現在の寂しいリエッキの姿とは対照的に、ユカとリエッキの旅路はとても笑顔に満ちていて、あたたかくて賑やかな雰囲気の中を進んでいきます(そしてこの落差が結構辛い)

 

広大な世界観を感じさせる、彼らの旅路の風景はとても素敵でした。
ロードムービー的なファンタジーは個人的に大好物なのですが、本作はそんな旅物語の魅力に溢れる作品だと思います。

なんといっても旅物語に欠かせないのは、人と人との出会いと別れ。そこから生まれる鮮やかなドラマ。

優しい人と出会い、様々な苦難も幸福も分かち合い、時として訪れる別れを寂しく笑い、懐かしき幸せな日々に想いを馳せ、そうしてまた新たな出会いがあって。
これですよ!これこそ旅の醍醐味!
リエッキの回想と共に、私自身が彼らの旅を追体験しているような気持ちになりました。そんな風に読めること自体が幸せ。

 

物語師が譚るかのような文体も、作品の雰囲気にピッタリ合っていたと思います。
「説話を司る神の忘れられた御名において、はじめましょう」と言われれば、さぁ物語に集中しようと思わず姿勢を正してしまいますし、「読者よ。親愛なる読み手よ。」と語りかけられれば物語の方から読み手への愛を感じて、ああこちらも愛を返さねば、と思ってしまうのです。

 

また、この物語が魅力的なのは、その物語の中を生きる登場人物が魅力的だということでもあるんですよね。

優しいユカと、素直にひねくれてるリエッキ。
二人の親友の可愛らしくも睦まじい友情にとてもによによとしてしまいました。素敵!しかし「現在」を思い出して切ないなこれ・・・・・・!

彼らを取り巻く人々もまた魅力にあふれた人ばかり。
特に踊り子は良いお姉さんでしたねー。
彼女と色の魔法使いの恋物語である最後の挿話は、とてもとても胸がときめきました(*´∀`)

 

さてさて、ラストはちょっぴり不穏な引き。
魔法使いへの偏見を払拭するには、やはり呪使いは超えねばならない壁なのでしょう。
左利きの存在が、ユカとリエッキの今後の旅路にどんな影響を及ぼしていくのかドキドキします。

 

Twitter上で以前から話題になっていたのでチェックはしていたのですが、読んでみて大正解でした。電子書籍派の私ですが、これは紙本で手元に置いておきたい作品。
そして懐かしき児童文学の風を感じる作品でもありました。こういうファンタジーを待っていたんだ・・・・・・(´;ω;`)

次巻もとても楽しみです!

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