ノベルダムと本の虫


『ノベルダムと本の虫』(天川栄人著/KADOKAWA)★★★☆☆

ノベルダムと本の虫
ノベルダムと本の虫【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2016年2月刊。
第13回ビーンズ小説大賞「審査員特別賞」受賞作。
気の弱い少女が憧れの「物語の王国」に招かれ、そこで起こる様々な出来事を通して成長していく物語です。
なぜ受賞作なのに単行本?と思っていたのですが、恋愛色はなく内容的にも児童文学寄りな感じなので、たしかに今のビーンズ文庫っぽくはないのかも。
世界観や設定はとても凝っていて魅力的でした。大きな図書館ってそれだけでワクワクするのに、物語からの「引用」が楽しすぎる。
説明過多になっている部分や演出が過剰な部分が気になりましたが、今後に期待したい新人さんだと思います。ビーンズ文庫の新作の方も読む予定です。

☆あらすじ☆
「物語の王国へおいでなさい、アミル」本好きな少女・アミルが招かれたのは、『物語機関(ノベルエンジン)』という独自の技術を使って本を独占し、長い戦争の中で中立を保つイストリヤ王国――通称『物語の王国(ノベルダム)』。遅刻魔の上司・ディレイや個性的な同僚とともに王立図書館司書『本の虫』として働き始めるアミルだが、広大な図書館には未完の傑作『五國物語』の謎が隠されていて……!?
物語を愛するすべての人へ贈る、異世界ビブリオファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

戦争が終わらない世界の中で、中立を保つ国「物語の王国(ノベルダム)」
ノベルダムにある王立図書館の館長に勧誘された少女アミルは、王立図書館の司書「本の虫」となり、ノベルダムを支える物語機関(ノベルエンジン)」の使い方など「本の虫」としての仕事を覚えていきます。
一方で、アミルは小さな頃から愛読していた未完の傑作「五國物語」の最終章が図書館のどこかに隠されているという話を聞いて・・・・・・という感じで物語は進んでいきます。

 

「物語」を「引用」する、という設定がとても幻想的でワクワクしました。
物語の中の一文を想像力によって力にする。
それは車を動かしたり、「駆動虫」で飛べるようにしたり、暗い室内を光で満たしたりだったりと、イメージの広がりの分だけ多種多様な魔法になるのです。

迷宮のように大きな図書館というだけでも魅力的ですが、静謐で落ち着いた印象を抱く図書館を「冒険の舞台」として彩るのがこの「引用」という設定だったのだと思います。
司書として縦横無尽に館内を飛び回ったり、紙魚と激闘したりと、アミルたちが「引用」をする姿には強い憧れを抱いてしまいました。
私も見上げるほどに高い書棚から、駆動虫に乗って本を探してみたい!

 

そんな感じで「引用」そのものは良かったのですが、その表現方法はイマイチ合わなくて残念。
IMG_2977
表現自体は興味深い試みだとは思いますが、如何せん「引用」の登場回数が多いので、その度にこれをやられるのは正直辛かったです。1回とか2回なら新鮮に楽しめたのかもしれないですけど。
写真にはないですが、ラストの剣のシルエットとか本当に読みづらかった。

 

加えて、ちょっと惜しいと思ったのは設定の説明。
確かに魅力的に作り込まれた世界観・設定ではありますが、それを一気に説明されるので序盤は読むのが辛かったです。説明自体も冗長でしたし。
新人のレクチャーという形で一度に説明するよりは、アミル自身が「本の虫」として働く中で少しずつ小出しに教えてほしかったかなぁ。

 

ネガティブな意見を書いてしまいましたが、物語そのものはアミルの成長を丁寧に描いていて面白かったです。
辛い外の世界から逃げるようにして「五國物語」の世界を愛してきた少女が、自分のダメなところに必死で向き合い、歯を食いしばって壁を乗り越えようとする。
「五國物語」とノベルダムに隠された秘密を追いつつも、軸にあるのは王道的な成長物語だったと思います。
「本の虫」としての居場所を見つけることもできずに、うじうじと後ろ向きだったアミルが、最後には立派に「本の虫」として凜とした姿を見せてくれたのはとても感慨深い気持ちになりました。

 

アミルが直面する「現実の世界」と、アミルが逃げ込んだ「物語の世界」。
終わらない戦争に苦しむ「外の世界」と、戦争を知らない平和な「物語の王国」。

この2つの二項対立を軸に、何も知らなかったアミルの成長を見事に描ききった作品だと思います。
面白かったです。

 

できれば続編が欲しいところですが、どうなるんでしょう。
とりあえずは、天川さんがビーンズ文庫から発売した新作も読んでみようと思います(´∀`*)

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