紅霞後宮物語3


『紅霞後宮物語 第三幕』(雪村花菜著/富士見L文庫)★★★★★

紅霞後宮物語 第三幕 (富士見L文庫)
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前巻の感想はこちらから


2016年2月刊。
中華後宮小説の傑作シリーズ第3弾。
今回も最高に面白く、そして最高にヘビーでした。
こんなに軽快な語り口なのに、どうしてこうも胸が苦しくなるのか。

☆あらすじ☆
皇帝に新たな寵姫登場!? 揺らぐ後宮に、小玉は――?
文林が謝充媛のもとに足繁く通うようになった。「文林に新たな出会いをあげよう計画」が成功したと喜ぶ小玉だったが、後宮内は微妙な空気に……。そこで小玉は二人のもとに自ら赴き、ある決意を表明する――!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

冒頭からなんと不穏な・・・・・・!

冷たい亡骸と泣く子ども。
呆然とする小玉が見る「彼女」が一体誰を指すのか分からないまま、不安感をこびりつかせて物語は幕を開けるのです。

 

3巻目となる今回は、小玉プレゼンツ「文林に新たな出会いをあげよう計画」から始まり、発案者本人すら期待していなかった「文林の春」(?)がやってきたものの、そこには文林のある狙いが隠されていて・・・・・・というストーリー。

 

あんなにねちっこい執着を見せてきた文林が今さら他の女に目を向けるわけないじゃん。むしろそれができたなら彼も苦労しなかっただろうに(同情)って、あらすじを読んで真っ先に思いました。

予想通りすぎてドヤることもできない(´・ω・`)

ただ、そういう機微に気づかない小玉(目を背けているだけだろうけれど)に対して、文林が何気ない態で身の潔白を訴えたのには笑いましたw
せっかく保証したのに心底余計とか思われる文林ほんと文林。

 

そんなラブコメめいたノリを挟みつつ、今回の本題に入るのは寵姫騒動の内幕が発覚してから。

謝月枝の正体が発覚し、文林の狙いが明らかになってからはまさに怒濤の展開でした。

黒幕を追い、戦いに身を投じる中で、小玉が胸に抱き始める不安感。
読んでいるこちらの脳裏によぎるのは、冒頭の「彼女」。

いや、まさか、それはやめてほしい・・・・・・という願いは届かず、あまりにも重すぎる喪失感を味わう羽目になってしまいました。

 

読むまで気にしていなかったのですが、今回の表紙にいる大きな女性は明慧だったんですね。
小玉と背中合わせに凜として立つ姿が、戦友であり親友である彼女達の関係性を端的に表しているようで、本文を読んだ後に見返すと胸が詰まってしまいます。

 

思えば今回の明慧は印象的な言葉をたくさん残していました。

「春なら来てるだろ。お前さんと結婚した時点で、あいつは悲惨な春を年中過ごしてると思う」

「小玉の言動はとても理想的な皇后のものなんだろうな」(中略)「完璧すぎて・・・・・・あたしはそれが、小玉の不幸に思えてならない。」

「小玉、お前は好きに生きていい」

最初のセリフは笑ったけれど、どれも小玉と文林のことをしっかりと見てくれているからこそ出てくる言葉なんですよね。最後の言葉が切なすぎる。

 

夫婦にとって、かけがえのない友人であり理解者だった明慧。

そんな明慧の死を、小玉はどうして最初から泣くことができなかったのでしょうか。

 

「武官」として任務を果たした同僚の死に様を嘆くべきではないと思ったからなのか。
明慧が愛してくれていた自分がどういうものかわからないまま、悲しみという衝動にすら突き動かされるべきではないと考えたからなのか。
「明慧の死」に意味を求めずにはいられず、未だその喪失を受け止めることができていないからなのか。

 

少なくとも、感情を露わにせず冷静に事後処理にあたれる小玉は、あまりにも正しく完璧に「皇后」であるように私には見えました。

寵姫騒動の最中も、鴻の実母の件で悩んでいるときも、「皇后」として物事にあたってきた小玉。
「皇后」として感情を麻痺させ、親友の死すらうまく悼むことができない彼女の姿は、まさに明慧の心配した通りの「理想的な皇后」であり、そのまま張り詰めた末に壊れてしまうのではないかと危うさを感じずにはいられませんでした。

 

だからこそ、最後の最後で涙を流すことができた小玉をみて、とても安心してしまうのです。
後宮ではない思い出の場所で、「皇后」の姿ではない小玉を通して、文林が在りし日の小玉と明慧の姿を見る。
文林の目を介して皇后ではない自分に戻ることで、ようやく小玉は「小玉」として親友の死を悼むことができたのではないでしょうか。
「皇后」であることを意識し続けた小玉がようやく好きに泣くことができたなら、きっと明慧も安心しているに違いありません。

 

文林、たまには良いところを見せますね。この調子で頑張れ。小玉にはもう文林しかいないのだから。
でも、芝生に寝転がって話すシーンといい、麺屋のシーンといい、この夫婦は立ち直れないほど傷つかないと素直に心を寄り添えることができないのでしょうか。そう思うと寂しい。

 

一連の陰謀劇自体はこの巻だけでは全て解決しなかったので、次巻以降で更に掘り下げられていくのでしょう。
スッキリしない終わり方にはモヤモヤとする気持ちもありますが、シリーズがまだまだ続くのだと思うと嬉しくもあったり。
4巻も楽しみに待っています!

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