還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon


『還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon』(野梨原花南著/集英社コバルト文庫)★★★★☆

還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon (コバルト文庫)
還るマルドールの月 The Return of the Mardore Moon (コバルト文庫)

2016年2月刊。
とても久しぶりに野梨原さんの作品を読みました。
独特なテンポで進む会話とストーリー。そして作品を包む不思議と温かい空気。
ああ、そういえば野梨原さんの作品ってこういう雰囲気だったなぁと、しみじみ懐かしい気持ちに。
表紙の黒いドレスの淑女(オードリーみたい!ティファニー!)に惹かれて読んだのですが、どうも1920年代のアメリカがモチーフっぽい世界観?
それでいて怪盗が登場したり主人公に変わった特技があったりと、不思議に溢れた野梨原ワールドが展開するラブロマンスファンタジーでした。
色々と急展開で荒技な部分はありますが、そういうところも含めてすごく好き。
なにより、登場人物の紡ぐセリフの数々が心にすっと馴染む小説でした。面白かった!

☆あらすじ☆
没落貴族の娘ダリアードは16歳の春、爵位と引き替えに元敵国であるツェブ合衆国の大富豪と結婚することとなった。相手の名前も知らないまま赴いた先で待っていたのは、眼光鋭いカタブツ警部、マーク・コリンズ。ダリアードは彼に激しく「運命」を感じてしまって。恋愛とかときめきなんて自分には一生無縁と思っていたダリアードの人生は一転、カーニバルみたいに色とりどりになるのだが!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

長らく続いたマルドール王国とツェブ合衆国の戦争が終結して10年。
その節目としてツェブからマルドールへ、マルドールの魂である宝石「マルドールの月」が返却されることに。
物語は、マルドール貴族の娘ダリアードが、政略結婚相手であるツェブ警察のマーク警部のために、「マルドールの月」を狙う怪盗テレンスジャクソンとその裏に潜む陰謀を追っていく、という形で進んでいきます。

 

主人公であるダリアードはとても小気味好い少女。
金と爵位を引き換えた政略結婚を持ち込んだ祖父に対して「女衒と変わりませんわ」と言い放った段階で、この子すごい!一筋縄ではいかないタイプだ!と楽しくなってしまいました。
キュートでユーモアに溢れた彼女のセリフの数々が読んでいてとても気持ち良いのです。
出会ってすぐに惹かれたマークから、「全て終わったら離婚しても良い」と言われて傷ついても、「それなら彼のために役立つことでつなぎ止めよう!」というポジティブさも魅力的でした。

 

賢く強かな一面を持ちつつも、マークの言葉に一喜一憂する無邪気な少女らしさもあるダリアード。
「恋をしたならカーニバル」という言葉をそのまま体現していく主人公だったと思います。嬉しいことも悲しいことも全力で表現して、全力でマークにぶつけていくのです。

「恋をしたならカーニバルです。悲しみのないカーニバルは、カーニバルではない。カーニバルがあるなら悲しみがあるのなら、カーニバルはいらない。そうかしら?」(中略)「私が花ならやはり咲きたい。散るだろうけれど、やはり咲きたい」(224頁)

恋した人の聞き分け悪さに泣かされても苛立っても、それでもどこか楽しそうなダリアードが素敵でした。

結局、何事も楽しんだものが勝ちなんですよね。
怪盗も陰謀も、恋のあれこれですら楽しみ尽くし、その全てに打ち勝ったダリアード万歳。

 

ダリアード以外のキャラクターも魅力的でした。
なにげにヘマボマがお気に入りなのですが、やはり一番はコンスタンス先生。言動が格好良すぎる。
というか、全体的に女性が強い作品だったと思います。テレンスジャクソンもマークも女性に押されっぱなしでタジタジしてましたしw

 

マークは終盤にかけてグングン格好良くなっていた感じ。
彼が本気になったら、恋愛的な経験が不足してるダリアードは対抗できるのでしょうか。見たいww

 

ストーリーについては、最後がちょっと荒々しい急展開だったのは気になりました。
アッチンソンの正体はやや唐突感があって、それすらマルドール王が強すぎて全部吹っ飛んだという(;`・ω・)
まぁでもそのドンチャン騒ぎっぽさも、「秘術」が大活躍してカーニバルな本作の締めに相応しいかなぁと思えてしまうのですが。

 

独特な雰囲気に惹き込まれる素敵な作品でした。
野梨原さんの作品って「ちょー」シリーズ以来だったんですよねぇ。
「ちょー」シリーズ電子化しないかなぁ。あと積んでる「マルタ・サギー」をいい加減読まねば。

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