鎌倉おやつ処の死に神


『鎌倉おやつ処の死に神』(谷崎泉著/富士見L文庫)★★★☆☆

鎌倉おやつ処の死に神 (富士見L文庫)
鎌倉おやつ処の死に神 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2016年1月刊。
おやつ処の店主である妹を手伝う兄と、兄妹の傍に居続ける「死に神」の物語。
主人公が抱える事情が気になってどんどん先を読んでいったのですが、明らかになったそれはとても重くて切なくて。
読後感は悪くないけれど、少し物悲しい気持ちにさせられる作品でした。
内にこもりがちで陰のある主人公と、そんな彼を励ますかのような周囲の人々の明るさのコントラストがとても印象的。それにしても、この主人公、「元気だせよ!」って背中叩きたくなる感ある。
これは是非シリーズ化してほしいなぁ。幸せな未来をください・・・・・・。

☆あらすじ☆
鎌倉には死に神がいる。命を奪い、それを他人に施すことができる死に神が。「私は死んでもいいんです。だから私の寿命を母に与えて」命を賭してでも叶えたい悲痛な願いに寄り添うことを選んだ、哀しい死に神の物語

以下、ネタバレありの感想です。

 

鎌倉の人気店「おやつ処みなと」のオーナーである妹・和花の手伝いをする売れない物書き・柚琉
アイスクリーム作りが得意な犀川さんも加わり、忙しいときには3人で店を切り盛りするものの、柚琉と犀川さんには和花も知らない秘密があり・・・・・・という感じで物語は進んでいきます。

 

「命を延ばしてくれる延命医」を求めて、湊家を訪れる「お客」。
延命医の正体が誰なのか、陰のある柚琉の性格が形作られた原因は何なのかが明らかになっていくと、彼が負っている運命の重さにショックを受けてしまいました。
合わせて明らかになった和花の事情もきつい。これはシスコンになるのも仕方ない。

 

いつか必ず死ぬのだとしても、そのタイミングをコントロールできるとしたら、私ならどうするのかな。
大切な人の死が目の前に迫ったときに「せめてあと少し」と願うことは、痛々しいけれど共感できてしまいます。
ただ、それが本当に叶ってしまう願いになって、代償も重いけれど支払えるものなら・・・・・・ううむ、難しい・・・・・・。

 

そうした苦悩を抱えるのは、当事者の願いを託されてしまう側も同じ。
かつて母親に対して自分がしたことと、その結果である妹の存在。
それだけでも辛いのに、そんな柚琉のもとには今も彼だけを頼りにして悲痛な願いを抱えたお客がやってくるわけで。
こんなにも苦しい運命を背負う柚琉に同情します。これは確かにちょっと病む。
誰かの命を奪うことになっても願いを叶えることが正しいのかどうか、彼はこれからもずっと葛藤し続けるのでしょう。
見知らぬ他者の頼みなんて無視してしまえるくらいドライな性格だったら良かったのに(´・ω・`)

 

そういえば、「死に神」って犀川さんのことだと思ってたんですけど、タイトルが指しているのは柚琉?それとも二人ともかな。
犀川さん自身はあくまで兄妹の傍にいて、アイスを作りながら監視をするだけの人なんですね。人じゃないけど。
それにしても犀川さんのアイスすごく食べたい・・・・・・|ω・)

 

秘密を背負う兄と、秘密そのものである妹と、ふたりを見つめ続ける死に神。
そんな3人だけでは鬱屈した物語になってしまいそうですが、そこに明るさを呼び込むのが柚琉の友人達。

内にこもりがちな柚琉を友人達が必死になって外に引っ張りだそうとする姿にちょっと救われた気持ちになりました。
良い友人を持ったことは、柚琉にとってかけがえのない幸運だったに違いない。
やや強引すぎるきらいはありますが。
当事者が同意しているとはいえ、結婚式をダシにしちゃいかんでしょう・・・・・・あのギリギリ感は(思い当たるところありすぎて)ドキドキしたので本当に勘弁して欲しい((((;゚Д゚))))

 

薄暗くて寂しい雰囲気があるものの、友人関係の明るいムードでうまくバランスをとっている作品だと思いました。
シリーズ化するのかな?
柚琉と和花の兄妹には是非とも幸せになってほしいし、その姿が読めると嬉しいです。

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