転生少女の履歴書1


『転生少女の履歴書1』(唐澤和希著/ヒーロー文庫)★★★★☆

転生少女の履歴書 1 (ヒーロー文庫)
転生少女の履歴書 1 (ヒーロー文庫)

2016年1月刊。
学業優秀スポーツ万能なハイスペック女子高生の異世界転生ファンタジー。
ややテンションの高い軽快な語り口で綴られていくのですが、その裏から少しずつ滲み出る陰鬱な感情が最高に好みでした。
何でも器用にこなせるけれど肝心なところで不器用な少女が、流されるままにたどり着いた先で何を見つけるのか。
前世で必死に求めたのに手に入らなかったものを、新しい人生の中で手に入れることはできるのか。
1巻は序章的な内容でしたが、主人公の快刀乱麻な大活躍にワクワクできて楽しかったです!
魔法使いのいる世界観も背景が薄暗くてとても好み。
これは続刊も期待できそうです(*^ω^*)

☆あらすじ☆
優秀な成績を収めていた少女は、親の愛に恵まれずに不慮の事故でその人生を終える。転生先は、ろくに畑の知識もなく、魚を捕まえる術さえ知らない農民達が暮らす開拓村。その村の6人兄弟の末娘としてリョウと名付けられる。あまりにも極貧な生活のなか、身売りされないため、飢え死にしないため、また、前世では得られなかった親の愛を求めて、村の改革に奔走する。リョウの活躍で、とりあえず飢え死には免れたと思ったところに、魔法使い達がやってくる。魔法使いが絶対の支配階級である異世界で、リョウは前世の知識や技術を役立たせながら、農家、貴族の小間使い、山賊…居場所を転々としていく―。

以下、ネタバレありの感想です。

 

前世でハイスペック女子高生だった主人公は、事故死したことで異世界の貧農の末娘に転生しリョウと名付けられることに。
誕生直後から前世の記憶を持っていたリョウは、捨てられまいとする努力の甲斐なく、流されるままに様々な場所を転々としていくことになるのです。

 

「履歴書」というタイトル通り、新しい人生におけるリョウの遍歴を描いていく物語です。
訪れた場所の問題を、前世の知識を活用してどんどん解決していくリョウ。
色々とアイディアを出したり道具を作ったりと、完全にドラえ●ん状態なのは笑えましたw
元女子高生なので職人芸を披露するわけではないのですが、うろ覚えの知識で道具類を大まかに再現できるってだけでも十分に凄いと思うんですよね。さすがハイスペック。

 

というか、そんな女子高生のうろ覚え知識でも通じてしまうくらい、リョウが転生した世界の文明レベルが劣悪だということなのですが。

魔法使いが存在し、彼らの魔法に全てを頼りきるために全く道具類の発明・開発が進まない世界。
しかし魔法使いの数は少なく、人々の生活を回しきれずに暮らしは困窮。酷使される魔法使いも疲弊し、ブラック企業状態。

悪循環にはまり行き詰まった世界に現れたのが、道具を作れ!人力を使え!という発想を持ったリョウだったわけです。

 

これだけなら、ちょっと都合が良すぎる世界じゃない?と思うところですが、その設定の掘り下げ方が個人的には好ましい。
魔法使いと武器の関係をみてもそうですが、はるか昔から「魔法使いありきの生活」という価値観が意図的に人間に刻み込まれているっぽいのが気になるところ。牙を抜いた獣の例えは非常に分かりやすかったです。

そういう価値観によってリョウの改革は何度か躓くわけですが、だからこそ彼女が周囲の困惑や無理解をどう乗り越えていくのかに期待が高まるのです。

 

リョウの登場がなくても限界を迎えつつある「魔法使いありきの生活」。
山賊のアレクが動いているのもその一端っぽい雰囲気がありますしね。

きっとリョウが時代の転換点を生み出して、既存の価値観を壊していくのでしょう。
王都で勉強することで今まで以上にこの世界の歪みが見えるだろうし、その解決策も考えていくんじゃないかな。ワクワクします!

 

世界観が面白い作品でしたが、その中心にいるリョウもハイスペックな割に不器用な少女で好感が持てました。
家族からの愛に飢えているのに、前世では結局手に入らず、「リョウ」としても売り飛ばされ・・・・・・。
明るく振る舞う一方で、ふとした瞬間に溢れ出る嫉妬や悲嘆の感情がとても印象的。
地の文でのハイテンションな語り口は躁状態を表しているみたいで、段々悲しくなってくるんですよねぇ。
捨てられないために必死に有用性をアピールし、「利益」という対価をせっせと支払おうとするリョウの姿があまりにも痛々しく、努力が報われなかった瞬間の彼女の絶望には胸を締めつけられました。

おかげで念願の「母」を手に入れたリョウの喜びには、なんだかちょっと泣きたい気持ちに。
・・・・・・母なのか父なのか。いやいや、コウから溢れ出るのは母性だから「母」ですね!

 

転章の度にダークサイドに落ちかけるリョウに不安を感じていたのですが、家族を手に入れたからには安定するかな?
なんか信者もできちゃったし、もうさすがに寂しくないですよね(違)
舞台を王都に移して、これからどういう物語になっていくのか楽しみです。

 

とりあえずカインアレクの兄弟には早く再会してほしいなぁ。
なんとなくアレク押しの雰囲気を感じましたが、私はカイン兄がいい!彼はリョウに似て、放っとくと闇堕ちしそうですからw
そうだ、ジロウさんはどこへ・・・・・・?

 

2巻にも期待してます!

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