MONUMENT あるいは自分自身の怪物


『MONUMENT〈モニュメント〉 あるいは自分自身の怪物』(滝川廉治著/集英社ダッシュエックス文庫)★★★☆☆

MONUMENT あるいは自分自身の怪物 (ダッシュエックス文庫)
MONUMENT あるいは自分自身の怪物 (ダッシュエックス文庫)

2015年11月刊。
魔術が存在するけれど、結局は似たような歴史を歩んできた世界を舞台にしたダークファンタジー。
謎めく展開と凝った伏線が面白い作品でした。
言い回しが難解に感じられて読むのに時間がかかってしまいましたが、それだけ読み応えは抜群でした。
終わり方が微妙にスッキリしないのですが、続きはあるのだろうか・・・・・・

☆あらすじ☆
人類が火を熾すよりも先に、発火の魔術に目覚めた世界。 旧ソ連出身の孤独な少年工作員ボリス・カルノフは、とある少女の護衛依頼を受ける。少女の名前は千種トウコ。一億人に一人といわれている『賢者』の魔力資質を持った魔術師らしい。ボリスの任務は彼女が『ピラミス魔法学院』を卒業するまで、あらゆる危険から護り抜く事だという。 どうにも不透明な依頼を怪しむボリスだが、訪れたピラミス島の地下に眠る超古代魔法文明の遺跡『モニュメント』をめぐる戦いに巻き込まれて、自分自身と世界に秘められた真実に邂逅する!! 絶望からはじまり、未来に挑むネオ・ファンタジー、開幕!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

不思議な力が存在しても、結局は似たような歴史を歩んできた世界。
魔法は存在しても、ソクラテスも手塚治虫もいるし、冷戦は起きて、ソ連は崩壊する、そんな世界。

こういう世界観はあるようでなかった気がします。
主人公であるボリス・カルノフが旧ソ連で鍛えられた工作員というのも面白い。
彼のシニカルなキャラクターも背景にぴったり合っていました。打算しかない裏表ありすぎるキャラもちょっと新鮮でした。

 

そして本作の舞台となるのはソ連崩壊から5年後、つまり1996年
共産主義体制の崩壊とか時系列を察する事柄は並べてあるものの途中まで頑なに西暦を書かなかったのは、最後のオチにより効果的につなげるためだったんですかねー?

 

それは置いといて。

 

不審な点がある護衛の依頼を引き受け、古代遺跡〈モニュメント〉を調査研究するピラミス魔法学院に入学するボリス。
そこで彼は、謎めいた事件に巻き込まれ、矛盾する「依頼人」の言動に翻弄されていくのです。

 

結末まで読んでしまえば、実はとてもシンプルな物語だったといえるのかもしれません。
最初に読んだ時はヴィオレッタルゴシュの謎めいた言動に散々翻弄されたのですが、解き明かす鍵さえ揃えば、彼らの行動に理解不能な部分はなくなるんですよね。
一読では理解できなかった分、もう一度読み返す楽しみがありました。

 

そして、「結局は似たような歴史を歩んできた世界」という前提こそがミスリードだったというのはとても面白い構成だと思います。
前述の通り西暦を明言されていなかったこともあって、終盤で言われるまで全く思い出しもしなかったあの予言
世間的にも忘れ去られた今だからこそ意表を突く真相だといえるのではないでしょうか。
少なくとも私は「それか!!」って驚愕しました(;`・ω・)

 

今回の一連の騒動のオチについては、「こんなに頑張ったのに・・・・・・」と悲しい徒労感を味わいましたが、彼らの戦いはまだまだ続くのですよね。
果たして運命を変えることはできるのか。不確定要素のもたらすバタフライエフェクトをどこまで期待できるのか。
もしかしたら単巻ものかもしれませんが、シリーズ化したら更に壮大なファンタジーになりそうな予感。

 

そんな感じで面白い作品ではあったのですが、私にとっては難解で難読な作品でもありました。

聖書、哲学、文学からの引用がとても多く、台詞回しも思わせぶり。
それが生み出すミステリアスな雰囲気を最初は楽しめていたのですが、中盤に入る頃には疲弊。
弱冠やりすぎてテンポを悪くしていた気がするのですが、まぁそこは好みの問題ですかねー(´・ω・`)

たまに引用した理由が分からないところがあったのは、私の教養が足りないせいかな・・・・・・。難しいなぁ。

ただ、こういう構成と文体の作品だからこそ、読み応えにつながっているのは間違いないと思います。
難しいし疲れる作品でしたが、面白かったです。

 

さて、今回はなかなか絶望的なラストを迎えましたが、この先に希望はあるのか。
もし次巻があれば、ぜひ読んでみたいです。

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