『正直バカはラブコメほど甘くない青春に挑む』(慶野由志著/集英社ダッシュエックス文庫)★★★☆☆
正直バカはラブコメほど甘くない青春に挑む (ダッシュエックス文庫)
2015年11月刊。
付喪神の持ち主となった主人公が、付喪神によって起こされた事件の謎を追うというシースルー青春ラブコメ!
何がシースルーって主人公の思考が開けっぴろげなんですよね。
思考欲望ダダ漏れですが、びっくりするくらい気持ちよく真っ直ぐな主人公。
そして、そんな彼の性質がストーリーそのものの大きな要となっている物語です。優しさをここまで愚直に貫けるのはとても素敵。
主人公のキャラがかなり面白かったので、ぜひシリーズ化してほしいです(^▽^)
☆あらすじ☆
考えたことすべてが言葉と表情に出てしまう「正直バカ」の高校生・春先真太郎は、転校してきたばかりの憧れの美少女、神楽琴葉や、エロス探求に燃える十月九日、常時暴走気味の更級燐子といった残念美少女たちとの青春生活を送っていた。だが生徒や先生が急に意識を失って倒れる『連続昏倒事件』が学校で頻発していて、ある日燐子も昏倒してしまう。そんな中、真太郎の自宅に「鏡の付喪神」だという少女が現れる。“心の姿を映す能力“を持つ彼女と共同生活を送ることにする真太郎だったが、その翌日、突然自宅を訪ねてきた神楽が「その付喪神を今すぐ渡せ」と要求してきて――!?
以下、ネタバレありの感想です。
嘘が全くつけず、バカ正直なまでに思ったことが顔にも口にも出てしまう「正直バカ」春先真太郎。
祖父から送られた鏡の付喪神・雪香との出会いや、転入生・神楽琴葉の正体を知ったことで、真太郎は学校で連続する昏倒事件に関わっている付喪神を探すことになる、というのが本作のストーリーです。
真太郎の正直者っぷりが本当にすごいw
普通の高校生らしくえっちなことを考えても全部ダダ漏れって・・・・・・本当に日常生活が困難になりそうなレベル。
周囲がそれを笑って受け入れてくれるなんて優しい世界だなぁとか思っていたのですが、それこそが例外的な箱庭だったんですね・・・・・・。
そんな優しい箱庭を愛しているからこそ、どうにかして昏倒事件を解決したかった真太郎。
けれど、優しい箱庭を愛していたのは真太郎だけじゃなかったからこそ起こってしまった昏倒事件。
昏倒事件の犯人については(そこまで登場キャラが多くないので)割と簡単に察することができるのですが、その動機は予想以上に切ないものでした。
優しくない世界から、優しい箱庭に逃げ込んだ彼女を誰が責められるものか。
確かにやり方はまずかったかもしれないけれど、彼女を否定して追い出すのはあまりにも悲しすぎます。
だからこそ、真太郎が彼女を否定せずに、ただ彼女が幸せであることを心から祈ると叫んだシーンはとても感動的でした。
愚直なまでに他人の心に寄り添える優しい真太郎と、その優しさが真実であることを相手に伝えられる雪香の能力。
とっても素敵なコンビだと思います。バカ正直もここまで貫けれるならとても尊くて素晴らしい。
本当に優しくて温かいストーリーでした。
真太郎と雪香のキャラも良かったですしね。二人の絆が少しずつ強くなっていく様子にとても癒やされました。
個人的には雪香アダルトVerが好みなのでもっと出番がほしいのですが・・・・・・まぁ幼女可愛いしね!雪香はこのままでもいっか!
強いて言えば、メインヒロインだと思っていた琴葉をもうちょっと掘り下げてほしかったかなぁ。
いえ、ギャップがすごくて十分可愛かったですし、彼女の背負っている事情の重さは薄々伝わってくるのですが。
そこらへんはシリーズ化して続刊で掘り下げてくれることを期待したいです。
そういえば、これって前作「付喪神は青春をもてなさんとす」と繋がりのある世界っぽいんですが、どうなんでしょう。
確認するために前作も読まなければ!
こんにちは。
慶野さんの新作、『つくも神』ものだったんですか?前作とテーマが一緒ですから、場合によっては前作のキャラが出てくるかもしれませんね。楽しみ楽しみ。
はにまるさん、こんにちは!
たぶん「つくも神」の登場人物の誰かが、本作主人公の親族なんだと思います。
主人公・真太郎の祖父が熊本で骨董屋をしていて(名字が物部。この祖父が付喪神を送りつけてくる)、祖父に店番を押しつけられている従兄弟の話がちょっとだけ出てくるのです。
「つくも神は青春〜」は先日はにまるさんにオススメしていただいたことですし、近いうちに読んでみるつもりです。
12月にダッシュエックス文庫電子版の1周年セールが各電子書籍ストアで予定されているらしく、そこに「つくも神」もラインナップされていたので、それを狙おうかとw
本作とどんな風につながっているのか、とても楽しみです(^o^)