絶望同盟


『絶望同盟』(十文字青著/一迅社文庫)★★★★★

絶望同盟 (一迅社文庫)
絶望同盟 (一迅社文庫)

前巻の感想はこちらから


2010年2月刊。
第九シリーズ第3弾。
昼休み、何気なく一つの場所に集まってご飯を食べる4人の高校生。
他者からちょっとだけはみ出した彼らの小さな青春を描く物語です。
外野からみれば本当に小さなお話でかなり淡々と進む物語ですが、最終話のあまりの爽やかさに泣きたくなる小説でした。

☆あらすじ☆
ロリコンである自分に絶望している。―当真ネンジ。女としての自分に絶望している。―蓮井カオル。世界すべてに絶望している。―木羽ミキオ。なんとなく絶望している。―雫石サナ。第九高校で絶望する、はみ出し者4人の青春ストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

他者には理解してもらえない部分を抱えていた4人の高校生。
校舎の目立たない一角に集まって昼ご飯を食べる彼らは、友だちではなく約束もなく、ただ同じ場所にいるだけのつながり。
これは、そんな彼らの小さな「絶望」を順に描いていく物語です。

 

好きになる女性がいつも小学生のネンジ
好きになるのがいつも女性のカオル
幸福がわからないミキオ
無気力すぎるサナ

 

「絶望」という言葉は強烈ですが、彼らの抱える「絶望」は客観的にはそれほど大げさなものとは言えないかもしれません。
けれど本人たちにとっては決して小さな問題ではない「絶望」。
それを振り払いたくて、足掻いて、ままならなくて、膝を抱えて。
そうして昼休みになると、彼らは絶望を引きずったまま「靴脱ぎ」でご飯を食べるのです。

 

幼児性愛、同性愛。
一般的にはそんな言葉に当てはめられるものでも、本人達にとっては自分の感情がコントロールできないという一大事。
それをどうにかしたいという気持ちがあるからこそ、どうにもできないことに絶望してしまうんですよね・・・・・・

特にカオルの場合、これから自分自身を受け止めなければならないわけで、その多難さはネンジの比ではないのかも。
ただでさえ美醜へのコンプレックスと摂食障害を抱えて生きづらそうな女の子なのに(´・ω・`)

 

すぐに心がガス欠するサナについては、「絶望」という心の動きすら緩慢で無自覚っぽいのが何とも哀れに感じてしまいました。
「そうだ子作りしよう!」という突飛な発想にすがりついてしまうほどには、彼女も「このままではいたくない」という想いが強かったのかなぁ。

もっともその結果としてミキオとの関係が生まれるわけで、予想外に恋愛小説になっていったのは嬉しい誤算でした(´∀`*)
ミキオの声だけはっきり聞こえるとか少女漫画かww このふたり好きだww

 

まぁそのミキオについては、なにげに一番病んでいる人で驚きましたが(;`・ω・)
ネンジの独り言に対して「心療内科を受診したほうがいい」という華麗なブーメランを放っていたミキオ。
「幸福」という言葉に取り憑かれ、「幸福」が何かもわからないままに「幸福」を求める姿はあまりにも痛々しかったです。
あれはどうみても鬱病だよなぁ。

 

そんなミキオが主導したからこそ、最終話で語られる結末に胸が締めつけられたのかもしれません。
正直、淡々とした物語が最後にここまでグッと盛り上がるとは思っていませんでした。
この最終話のためだけにある1冊といっても過言ではないです。

 

単なる「場所」に集まっていただけの4人が、自分たちで新しい「居場所」を作り出したラストシーン。

 

絶望感が生み出す憂鬱な雰囲気を吹き飛ばす、あまりにも爽やかで輝かしい青春の1ページ。
それぞれが抱える絶望が根本から解決したわけではないけれど、小さな絶望感を胸に寄り添い合う4人の姿があまりにも美しくて目がくらみそうでした。
ミキオが求めた「幸福」のひとつの形は、間違いなくここにあるのでしょうね。きっと彼らはもう大丈夫。

なんだか泣きたくなるような、胸を締めつける幸せを感じる物語でした。

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