ぷりるん。 特殊相対性幸福論序説


『ぷりるん。 〜特殊相対性幸福論序説〜』(十文字青著/一迅社文庫)★★★★★

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)
ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

2009年7月刊。
ずっと読みたいと思っていた第九シリーズの第1作。
ライトノベルの枠内でここまで描くとは、と戦慄しました(;`・ω・)
本作は全般的に病的だしアブノーマルな性描写や鬱要素が盛りだくさんで、ぶっちゃけ地雷要素ばかりです。人によっては嫌悪が勝って途中で投げ出したくなるかもしれません。

でも私は好きだ。とっても好きだ。

「薔薇のマリア」や「灰と幻想のグリムガル」で十文字青の描く青春に心を奪われてきた私ですが、そんな私が読むべき青春小説はこれだったのですね。
高校生の憂鬱な恋と性を描ききった傑作であり、「ぷりるん。」というタイトルにたどり着くまでに、たくさん間違って悩み苦しんで傷つけて傷つけられる物語。
陰気で重い展開に心を削られながらも読み進め、ようやくたどり着いた結末には胸がいっぱいになりました。なんて爽やかな読後感・・・・・・最高でした。

☆あらすじ☆
ラブラブ光線絶賛放射中な妹―うずみ(♀)。元・天才美少女、自由奔放な姉―綾(♀)。みんなのアイドル、気になるクラスメイト―桃川みう(♀)。脚がステキな憧れの先輩―小野塚那智(♀)。彼女たちに振り回される人―ユラキ(♂)。ユラキの悩みは今日もつきることなく、“ぷりるん”はまた現れる。新感覚系ラブストーリー誕生。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語を動かすのは、主人公ユラキと彼を取り囲む5人の少女たち。
「おにいちゃん」が大好きなことを隠さない妹・うずみ
ユラキに性的なトラウマを植えつけた奔放すぎる姉・
ユラキが想いを寄せていて、みんなに好かれていて、だけど裏では「有名」だと噂されるクラスメイト・桃川みう
ユラキがかつて好きだった美人の先輩・小野塚那智
そして、ある日突然「ぷりるん」以外の言葉を喋らなくなった幼なじみ・「ぷりるん」

 

誰もが演技をしているかのような不気味さ・不自然さを漂わせつつも、見かけは平穏だったユラキの日常。
しかし、ユラキがみうとの距離を縮め、綾が帰国したことで、ユラキの平穏な日常はボロボロに傷つけられながら崩れていくのです。

 

一度何かが壊れると、こうも徹底的に全てが崩れてしまうのか。
みうの正体を知り、うずみの気持ちの意味を知り、精神的にも肉体的にも立ち直れなくなるほど傷つけられたユラキ。
この「精神的」「肉体的」なダメージの描写があまりにも生々しく、すり減っていくユラキと一緒に私の心まですり減っていきそうでした。
露骨な性的描写は、それがそのままユラキの心を傷つける凶器の描写なんですよね。エロいのではなくエグい。

暗闇を恐怖のままに全力で迷走するような、疲弊感だけを抱えて暴走する物語の中で、ユラキはただひたすらに苦悩に苛まれていくのです。

 

この物語に出てくる誰もが何かを間違っていて、その間違いのせいで誰かを傷つけて、同じように誰かから傷つけられて。
あまりにも痛くて辛い傷に苦しんで、それをどうにか治したい、元に戻したいと足掻いて。
そうして元に戻るために剥き出しの傷をさらけ出して、この傷を見ろ!と傷つけた相手に叫びながら訴える。

深く深くつけられた傷を、そうやってユラキは元に戻そうとするのです。そしてそれは相手も同じ。

 

特に印象的だったのは、加賀知とのカラオケシーンでした。
一番の友だちだと思っていた相手から、不意打ちで聞いてしまった悪口。それに傷ついていたことをぶちまけたユラキに対して、加賀地は言うのです。

「俺はべつに、聖人君子じゃねーし」

怒濤の如く感情を爆発させるユラキに対して、負けじと同じだけの感情を返した加賀地。

自分は裏表のある普通の人間で、おまえが聖人君子みたいな友だちがほしいなら無理だけれど、自分はユラキの友だちだと思っていた。
その友情は一方的なものだったのかもしれないけれど、それでも友だちだと思っていたのだ、と。

もうね。この無様ともいえる感情のぶつけあい、そこからの友情の再確認の流れが私の心をガンガン抉るんですよ。
加賀地のいうように友情って簡単に感じられる割にあくまで一方通行。こんな泥臭くて恥ずかしい確認行為なんて普通はしませんからね。

だから時折無性に不安になる。

「自分が友だちだと思っているあの人は、本当に自分のことを友だちだと思ってくれているのだろうか」って。

あああああああ、友だちに会わなきゃ・・・・・・!!!っていう焦燥感に駆られました。

 

この加賀地との和解や、最後の「ぷりるん」が伝えるものこそ、この物語のテーマなのだと私は受け取りました。

言葉が通じていても気持ちが通じているとは限らない。分かり合えているとはいえないかもしれない。
それなら言葉なんてなくてもいいのかもしれない。

けれど、言葉でしか通じないものは確かにはあって、言葉だからこそ届く気持ちも確かにある。

もうほんと、恥ずかしくなるくらい青くさいテーマですが、これこそが青春小説ですよ。最高か・・・・・・!

 

加賀地とのカラオケを経て、物語は少しずつ上向きに進んでいくことになります。
壊れてしまった日常を、丁寧に、少しずつ修復していくのです。

 

みうは、まぁ落ち着くべきところに落ち着いたのではないでしょうか。
メ●ヘラビッ●というラノベにあるまじき衝撃のヒロインでしたが、彼女は彼女なりに苦しんで助けを求めて藻掻いていたことも察してしまえて、結局あまり憎めませんでした。お近づきになりたくはないけれど。
最後に生まれた距離感こそ、彼女にとってのハッピーエンドなのは間違いないと思います。

 

姉に関しては、ユラキをギリギリのところで支えていた唯一の「オトナ」だったわけですが、このラストに正直安堵しました。
姉の存在はショック療法に近い気がするんですよね。死にそうなときはともかく、元気なときは刺激が強すぎる。たまに帰ってくるくらいが丁度良いはず。

 

うずみの家出先は意外でした( ´ ▽ ` )
みうがあまりにも強烈すぎて、そのイメージに引っ張られていたんでしょうね。
そうだよなー。普通はそうだよなぁーって脱力。

 

那智先輩は、ちょっとよく分かりませんでしたw
第九シリーズに共通して登場するキャラということで、顔見せかな?

 

そして、「ぷりるん」。
ぷりるんの行動に隠された気持ちだけは、割と初期の段階で察することができます。
けれど、「ぷりるん」に込められた願いがあまりにも純粋で一途すぎて、これを感動せずにはいられませんでした。
やってることはエキセントリックだし、いや他に方法なかったの?とか、この子もちょっと病気だな、とか思わないでもないですが、細かいことは良いんです。
彼女の必死な祈りに、ただただ胸がいっぱいになる。それだけでいいのです。

 

あまりにも過酷な鬱展開が続くのに、やはりあの中毒性のある文章ですいすいと読めてしまう本作。
ラストは予想以上に爽やかで、スッキリとした読後感でした。
これは私の中で名作入りです。宝物にします。

ぷりるん!

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「ぷりるん。 特殊相対性幸福論序説」への6件のフィードバック

  1. みかこさん こんばんわ。

    「ぷりるん。」読みました~! 途中、桃川さんのユラキくんへの追い詰めっぷりにマジ恐怖したりしましたが、、 (^-^;)  最後まで読んでみると、このお話の伝えたいことは、とてもストレートなものだったんだなと思いました。 
    ほんとに真っ正面から相手と向き合ったから、あの結末に辿り着けたのではないかなーと思いました。 そしてそれが大変なのですよね・・。
       
    加賀地くんとのやりとり、ほんとによかったですね・・! 胸が熱くなる、名シーンだと思いました・・!(><) 
    個人的に、最後の方の、淡々と日常を語っていく場面で、「2人」の名前が出てくるところも、印象的でした。

    全部読んだ後に、みかこさんの感想を読ませて頂いて、ちょう頷いていました・・! ラストのふたり、良かったです!(´▽`)

    1. トウさん、コメントありがとうございます。

      「ぷりるん。」読まれたのですね!

      人とぶつかるのは誰だって怖いけれど、ぶつからなきゃ分からないものってありますもんね。
      青先生らしい剥き出しのストレートさがたまらない気持ちにさせる作品でしたw

      加賀池くんとのシーン、本当に最高でしたよね!
      私もあそこが大好きです!!何度読んでも胸が熱くなります。

      最後の方の「2人」の名前というと、

      もういっそのこと、死んでしまおう、と思う。 でもそんなとき、〜(221頁)

      のところでしょうか?違っていたらすみません。
      私はあの一行に、ユラキの未だ繊細で折れやすそうな気持ちと、それを拾い上げてくれる友達の存在に救いをみたんですよね。とても心に残ってるくだりです。

      感想に共感していただけてとても嬉しいです!
      ラストシーンは本当に本当に素晴らしいですよね。幸せな読後感に浸れる名シーンです(^_^)

  2. みかこさん こんばんわ。
    ご返信ありがとうございます~!

    221頁のところであってます~! 自分ではどうしようもなくて、思い詰めてしまうとき、「友達の存在がある」ということ、そしてその存在に救われているユラキくんに、その一文でなんだかほっとしたのでした・・(´o`)

    余談ですが、原作グリムガルも読み始めましたー!めちゃくちゃおもしろいですね!!(*´∇`*) そしてアニメのありがたさがより染みます・・・。  
    シホルがアニメより毒舌で驚いたのですが、反面、やっぱり十文字先生んちの子だな・・と妙に納得した自分がいました(笑) 
    そして モグゾー・・?!!(((;゚Д゚))) ってなりました・・。

    今は「純潔ブルースプリング」が読みたい!→絶版 で古書を買うか悩んでるところです・・。

      

    1. トウさん、こんにちは!

      合ってましたか。あの一文、さりげないのにとても目を惹きますよね〜。すごく印象に残った箇所でした。

      原作グリムガルとアニメグリムガルは両方を知ると、どちらも引き立ちますよね。
      原作はハルヒロの内面の苦悩とか葛藤とかを知れていいし、アニメはもう少し俯瞰的視点からグリムガルを美麗に表現していて、どちらもそれぞれ魅力がありますし。

      原作シホルの毒舌はどんどん加速していきますw むしろシホルの毒がないと物足りない気分になるはずww

      モグゾー・・・・・・(ノД`)

      「純潔ブルースプリング」もめちゃくちゃオススメですよ!!
      私は電子書籍で読んだのですが、古書でもいいので読んでみてほしい作品です(>_<)

  3. みかこさん こんばんわ。 ご返信ありがとうございます~!

    原作グリムガルは読んでて、よりハルヒロに 親近感が沸きました・・!
    判断して決断して、行動を指示して、それが仲間に係ってくるってほんとに胃が痛くなる・・ ハルヒロ めちゃくちゃがんばってるよ ハルヒロ・・!!(;´Д`)  って応援しながら読んでます・・!!

    シホルの毒舌は だんだんクセになってきましたww

    「純潔~」 オススメありがとうございます!! 
    ちょっと古書で探してみます・・!╭( ・ㅂ・)و  
    読むの楽しみです~!

    1. トウさん、こんにちは!

      原作グリムガルはハルヒロを応援したくてたまらなくなりますよね!
      シホルの毒舌と、ランタのうざ絡みはセットで大好きですw

      純潔ぜひぜひ〜〜(^^)

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