くもりのちナイン 破壊少女は貴方のためだけに涙する


『くもりのちナイン 破壊少女は貴方のためだけに涙する』(石川湊著/電撃文庫)★★★☆☆

くもりのちナイン 破壊少女は、貴方のためだけに涙する (電撃文庫)
くもりのちナイン 破壊少女は、貴方のためだけに涙する (電撃文庫)

2015年10月刊。
汚染物質によって空が塞がれた世界を舞台に、人造人間の男と機械人形の少女が出会い、旅をする物語。
終末的な世界観も良かったですし、「人間らしさ」に迷い悩む主人公の変化も興味深いものでした。
「人間」と「機械」の境界線がどこにあるのか、何をもって「人間らしい」といえるのか。
人助けの旅の果てに、主人公はどんな答えを見つけるのか。
彼が見つけ出した答えも含めて、全体として綺麗にまとまった素敵な作品だったと思います。
ちなみに、前作「スカイ・フォール」と共通の世界観の作品とのことですが、前作未読でも楽しめました。舞台が天地に分かれていますし、登場人物もかぶっていないようです。

☆あらすじ☆
汚染物質に覆われた世界で傭兵のカイルが出会ったのは、遺跡の深奥で培養液に浮かぶ少女だった。名前はなく、言葉も上手く理解できない、幼い機械の少女。「お前に名前は無いんだ。分かるか?」「ナイン?わたし、ナイン!」未知の戦闘能力を備えたナインと、なぜか彼女のマスターに認定されてしまったカイル。二人は楽園へと通じているとされるヘブンズゲートを求め、人類に見捨てられた世界を旅することに。ある時は親子のように、またある時は兄妹のように。そして、ある時は恋人のように。旅の中で二人の関係は変わってゆく。そして、未来へ希望を見い出した先に流れる、ナインの涙の理由とは―。世界の終わりに結ばれる、愛の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

全身を機械化していたことから人間扱いされず、人類を空へと運ぶ箱舟に乗せてもらえなかった傭兵カイル
遺跡の中で偶然発見した機械人形「ナイン」を目覚めさせたカイルは、趣味の人助けをしつつ、空につながるヘブンズゲートを探す旅にナインとふたりで出ることになるのです。

 

機械らしくないけれど並の機械以上の戦闘力をもつナイン。
体のほとんどが機械であるけれど、あくまで「人間」であることにこだわるカイル。

旅の中での様々な出会いを通して、「マスターと道具」から始まったカイルとナインの関係は、やがて「家族」へと少しずつ変わっていくのです。

 

少しずつ語彙を増やし人間らしさを身につけていくナインの変化も目を引きましたが、やはり印象的だったのはカイルの変化。

最初の頃のカイルは、人間らしさにこだわる割には人間らしさに欠けた言動ばかり。
「命にかえても守る」と言いながらも救命の可能性を冷徹に計算してあっさり「無駄死にするつもりはない」と見捨てちゃうところとか、とても「人間らしい」とは言えない人物でした。
それがナインとの旅を通して、少しずつ人間性を取り戻していくのです。
最後の方では、こんなに感情豊かな人だったんだと目をみはる変わりようでした。まさかこんな親バカ的なキャラに変わるとはw

 

そんな変化の中でカイルが向き合っていくのは、人間らしさとは何かという漠然とした問いかけ。
「機械=道具であり、それは人間とは明確に線引きされるものである」という価値観が徐々に揺らいでいくカイル。
戸惑う彼の姿に、一体そこからどんな答えを見つけてくれるのかワクワクしていたのですが、予想以上に清々しく前向きな答えを出してくれてとても満足しました。
こういう「まぁいっか!」な答えって好きですよw
古い価値観からを抜けだし、新しい価値観で歩み始めるラストシーンの爽やかな雰囲気はとても素敵でした。

 

全体的に丁寧な作品でしたが、終盤の展開が駆け足気味だったのだけはちょっと残念。
アンビエッタの説得とか、ナインの暴走とか、展開そのものは良かったのですが・・・・・・。
まぁ「涙」云々がよくわからなかったこともあって(感動的ではあるけれど乗れなかった)、終盤の展開が私の中でうまく消化できなくてそう感じたのかもしれません(;・∀・)

 

さて、綺麗にまとまったようですが、これは続くのかな?
最終的に揃ったメンバーで旅をしても面白そうですし、ぜひこのままロードムービー的にシリーズを続けてほしいです。

とりあえず、お空がどうなっているのか気になったので前作「スカイ・フォール」も読んでみようと思いますヾ(*˙︶˙*)

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