薔薇十字叢書 ジュリエット・ゲェム


『薔薇十字叢書 ジュリエット・ゲェム』(佐々原史緒著/Founder:京極夏彦/講談社X文庫ホワイトハート)★★★★☆

薔薇十字叢書 ジュリエット・ゲェム (講談社X文庫ホワイトハート)
薔薇十字叢書 ジュリエット・ゲェム (講談社X文庫ホワイトハート)

2015年10月刊。
京極夏彦公認「百鬼夜行」公式シェアード・ワールド「薔薇十字叢書」(公式サイト)のトップバッターな1作。
百鬼夜行シリーズは途中までしか読んでないし内容もうろ覚えなのですが、本作はそんな私でも問題なくとても楽しめました。ただ、本編に全く触れたことがないとちょっと厳しいかもしれません(中禅寺兄妹、榎木津、千鶴子が誰か分かればOK)。

主人公は京極堂の妹・敦子。12歳の彼女が在籍した女学校での不思議な事件を描く、3章立ての物語です。
(原作の関係上当然なのですが)第二次世界大戦の真っ最中という少女小説には珍しい時代設定も新鮮でしたし、「百鬼夜行」シリーズのキャラクターたちをうまくライトに仕上げているところも良かったです。
ていうか!榎さんが!超絶イケメン!!!!

☆あらすじ☆
昭和十七年四月、中禅寺敦子は兄・秋彦の薦めで、横浜の港蘭女学院に入学し、寮生活をはじめる。同室の麗しい先輩・紗江子と万里にかわいがられ、学校にも慣れた頃、教室で『天使様』というゲームが流行りはじめる。天使様のお告げで、紗江子が万引きの常習犯だと噂されるようになり、敦子は兄の知識も借りて、天使様の存在を否定する。ところがその翌日から敦子の周囲で不気味な事件が相次ぎ……。少女探偵・敦子登場!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

ジュリエット・ゲェム

兄・秋彦によって、横浜の女学校へ送り込まれた12歳の敦子
寮のルームメイトである二人の先輩紗江子万里と親しくなる一方、紗江子が万引きしているという噂と「天使様」という不気味なゲームが発端となり、敦子の身の回りで不審な出来事が頻発するようになる、というのが最初の事件です。

女学校の閉鎖的な空気は怖いですね。それが仕組まれたものであるなら尚更。
敦子の12歳らしからぬ利発さや行動力には感心したものの、それにも増して紗江子の凄まじさたるや・・・・・・蜘蛛ちぎる女学生怖い。友人の恋のためとはいえ、そこまでやるの!?って戦慄してしまいました。

敦子がメインではあるものの、時折出てきた秋彦や榎木津が良い感じに存在感も抜群。
敦子からの問い合わせに分厚い封筒で返信しちゃう京極堂にちょっと笑ってしまいましたw溢れ出る蘊蓄ww
榎さんは、「ああ榎さんってこんな感じだった!」と頷いちゃうキャラでしたが、すがはらさんの挿絵力のためにやたらイケメンでした。この残念イケメンっぷりこそ榎木津だ!

 

空の初音

さらに幼い頃の敦子と秋彦のギクシャクとした関係を描くエピソード。
なんで敦子の物心つくまで秋彦と会わなかったんでしたっけ?本編読み直さなきゃなー(´・ω・`)
それはそうと、このエピソード自体はとても素敵でした。
雨の中、小さな妹を迎えに行くお兄ちゃん。そんな兄の姿に、やっとわだかまりをなくせた妹。
秋彦の不器用だけど真摯な優しさがしっとりと心に沁みました。

 

花めぐりのドッペルゲンガー

時系列戻って、再び12歳の敦子。
なぜか敦子によく似た少女の写真が雑誌に載って・・・・・・というエピソードでしたが、やや普遍的なイメージで女学校を描いた「ジュリエット・ゲェム」よりもさらに舞台が「戦時中の女学校」であることを印象づけるものでした。

少女小説って(ライトノベル全般に言えることですが)、戦時中を舞台にする作品ってあまりないんですよね(あるのかな?)。女学校モノであれば現代や大正時代といった華やかな時代が選ばれることがほとんどでしょう。
昭和17年(1942年)という暗い時代の女学生が主人公の少女小説なんてこういう企画モノじゃなければ読めなかったでしょうし、そういう意味で「薔薇十字叢書」というのは面白い企画なのだと改めて感じました。

そんな「戦時中の女学生」たちの雁字搦めな不自由さが垣間見えるエピソード。
年頃の女の子らしいお洒落すらも批判され封じ込めなければならない息苦しさに、思わず眉根が寄ってしまいます。
敦子の「ドッペルゲンガー」だった彼女に自業自得な面はあったとしても、そうなってしまった原因が時代にあるのだと思うとやるせない気持ちになりました。

それでも陰鬱な雰囲気で終わらないのは良かったです。
不自由さの中で「花」を見つけ出して輝く少女達。着物姿で演舞を披露する姿は美しく、逆境に負けない強さと気高さにとても心が惹かれました。

 

期待以上に面白かったです!
佐々原史緒さんの作品って「見習い神官レベル1」シリーズしか読んだことがなかったのですが、こういう雰囲気の作品も良いですね。ぜひ富士見L文庫あたりのライト文芸で新作を書いて欲しいと思いました。

薔薇十字叢書の他の作品も随時読む予定です。
本編の方も(鈍器なのでアレですが)時間を見つけて読んでいきたいなぁ。どこまで読んだかわからないので、どうせなら最初から。

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