夜桜ヴァンパネルラ


『夜桜ヴァンパネルラ』(杉井光著/電撃文庫)★★★☆☆

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)
夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

2015年9月刊。
吸血鬼である女刑事と相棒の新米刑事が、人間を脅かす吸血鬼に立ち向かっていくという内容のポリスアクション。
なかなか面白かったのです。
主人公(?)の新米くんが近年稀にみるレベルのおばかさんで驚いたのですが、正直、彼の底抜けな明るさがなければやっていけないレベルで物語は暗く、そして読後感は重たいです。
爽快感を期待できるタイプの作品ではありませんが、このダークで憂鬱な世界観はとても好み。
ぜひシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
人の血を啜る怪物の存在が科学的に認められた近未来。人々を“吸血種”から護るために設立された『捜査第九課』の唯一の課員は、美しき“真祖”の少女、櫻夜倫子―吸血種を狩る吸血種だった。彼女の相棒として第九課に配属された、バカだが熱心な新人・桐崎紅朗の仕事は、倫子に血を吸われることだけ!?それでも二人は少しずつコンビの絆を深め、吸血種感染を広める組織“王国”を追い詰めていく―血塗られた夜を疾るイノセント・ヴァンパイア・アクション開幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、吸血種が伝染病として認知された社会。
そこでは、吸血種は一部を除いて凶暴化するため「処理」することが許されており、主人公櫻夜倫子は、吸血種でありながら吸血種専門課である9課の捜査員でもある特別な存在です。
そんな彼女のもとに配属されたのは、もうひとりの主人公である新米刑事桐崎紅朗
紅朗にペースを狂わせられながらも、倫子は彼と共に吸血鬼になる薬をばらまく謎の組織を追っていく、というのが本作の大まかなストーリーです。

 

いやぁ、予想以上に重い物語でした(´・ω・`;)

 

まず、9課の仕事内容がきつすぎる。
吸血鬼を「処理」すればいいといっても、元は人間。当然、その傍には家族などの関係者がいて、時には彼らの目の前で吸血鬼を射殺しなければならなかったりするのです。
何も知らなかった紅朗に現実を突きつけるシーンの絶望感といったらない。バケモノだと割り切って「処理」してきた行為が、実は人殺しにほかならないって・・・・・・なんて残酷な・・・・・・

 

そして、そんな9課を支える倫子の立ち位置も惨い。
吸血種からは裏切者として、警察仲間からは憎悪の対象としてみられる倫子の孤独。
そもそも種族が違う彼女が、なぜ人間の手先として同族狩りをしているのかという理由が語られるシーンはもう・・・・・・母親たちの愛情に縛り付けられた倫子の姿は、こちらまで息苦しさを覚えるほどでした。
矢神や大村といった理解者がいるからまだマシなのかな。
それに紅朗の明るさに救われるシーンにはとてもホッとしましたし。

 

その紅朗ですが、何がどうして彼はこんな人間に成長したのか。
おバカ系主人公というのはちらほら見てきましたが、群を抜いてますw なぜ刑事になれたのww
最初は「紅朗がこんなにおバカなのには何か理由が隠されているに違いない!」と穿った見方をしていたんですが、何もありませんでした。あれ!?天然なの!?
まぁでも正直、紅朗が明るいムードを作ってくれないとどこまでも暗く沈む込むタイプの物語ですしね。良いバランサーになっていたと思います。

 

紅朗の脳天気さに助けられつつも、それでもやはり物語は陰鬱。
今回の「キングダム」の事件にしても、爽快感とはほど遠い結末でしたし・・・・・・この世界でハッピーエンドはどこにあるのだろうと悲しくなりました。吸血種か人間か、どちらかが殲滅されるまで戦いは終わらないような。それとも何か他に道はあるのか。
吸血種が人間にとって処理すべき脅威でしかない以上、倫子の苦しみは終わらないわけですよね。一体彼女の未来はどうなってしまうのか。

 

とても続きが気になります!ぜひシリーズ化してほしい作品でした。

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)
杉井光
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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