ヴァンパイア・サマータイム


『ヴァンパイア・サマータイム』(石川博品著/ファミ通文庫)★★★★☆

ヴァンパイア・サマータイム<ヴァンパイア・サマータイム> (ファミ通文庫)
ヴァンパイア・サマータイム<ヴァンパイア・サマータイム> (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2013年7月刊。
人間と吸血鬼のラブストーリー。
一瞬だけ重なり合う時間で逢瀬を重ねる2人の高校生、っていうのが情緒的で素敵でした。
蒸し暑い夏の雨の日に読みたい感じ。面白かったです。

☆あらすじ☆
人間と吸血鬼が、昼と夜を分け合う世界。山森頼雅は両親が営むコンビニを手伝う高校生。夕方を迎えると毎日、自分と同じ蓮大付属に通う少女が紅茶を買っていく。それを冷蔵庫の奥から確認するのが彼の日課になっていた。そんなある日、その少女、冴原綾萌と出会い、吸血鬼も自分たちと同じ、いわゆる普通の高校生なのだと知る。普通に出会い、普通に惹かれ合う二人だが、夜の中で寄せ合う想いが彼らを悩ませていく……。夏の夜を焦がすラブストーリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

まず舞台設定が面白い。
吸血鬼が当たり前に存在し、昼に人間が、夜に吸血鬼が、時間が違うだけで同じ生活を営む世界。
高校にも昼間部と夜間部が存在し、主人公は同じ高校に昼に通う男子高校生山森頼雅と、夜に通う吸血鬼女子高生冴原綾萌の2人。

 

物語は、過ごす時間がほとんど異なる2人が、ヨリマサが手伝うコンビニを介して少しだけ重なる時間を通して、互いに恋していく姿が描かれていきます。

最初にちょっとミステリっぽい話を絡めて、この世界での「人」と「吸血鬼」の種族のにある壁のようなものを見せてくれました。
昼と夜とに分かれているとは言え、(現代人が日の入りと共に就寝するなんて思えないし)重なる時間だってあるはずなのに、人と吸血鬼の間には明確な距離感がある様子。
まぁ、高校生以下の学生は目が覚めている時間のほとんどを学校生活に費やしてしまうため、学校以外の世界にはどうしても疎くなってしまうもの。
だからこそ、余計に距離感を抱いてしまうのかもしれませんね。
この世界の大学生とか社会人が、他の種族とどう付き合っているのかちょっと気になるところ。

 

そんな近くて遠いお隣さんという感じの、人間と吸血鬼。
本来は違う時間を生きているはずだったのに、吸血鬼用の「サマータイム」によって生まれたほんの少し重なった時間に、ヨリマサと冴原は距離を縮めていくのです。

 

ヨリマサ視点と冴原視点を交互に描いていくのですが、これがほんっとうに可愛いw
互いにちょっと認識のズレがあるのがいいんです。
例えば、別れのシーン。ふりかえらない冴原を、ヨリマサが「サバサバしてるなぁ」と好感を持って見送る一方で、冴原は「媚びた女」に見られないように振り返らないルールを自身に課している。
本当にサバサバしているんじゃなくて、ヨリマサの視線を意識して作ってる姿なんですよね。
分かる分かる!って思ってちょっとニヤっとしてしまいましたw

こういうちょっとした認識のすれ違いがたくさんあって、そこから相手に理想を抱いて、+α的妄想込みでどんどん好きになっていって。
でも現実を知ったからといって嫌いになるという話でもない。

女の子が吸血鬼というだけで、これは普通の高校生の、普通の青春恋愛小説なんだなぁと思いました。

 

ただ吸血鬼ならではの悩みもあって、それが終盤に爆発するわけですが。
でもあれ、吸血鬼だから「吸血衝動=好き!?」っていう悩みになるわけですが、人間同士でも似たようなことがあるのでは?
たとえば「顔」が好きとか「身長」が好きとか、そういう外面的なところを好きだと思うことが本当に「好き」といえるのか、悩んだことがある人は結構いるのではないでしょうか。
「好き」という気持ちの正体を探ろうとして、自分で良く分からなくなると言うか。あれは混乱する。

なんにせよ、「好き」という気持ちに一生懸命向き合って、必死に考えないと「この気持ちは好きと言えるのか!?」なんて悩みは出てこないものだと思います。必死に悩んで、泣いちゃう冴原はとても可愛い。

 

そんな「好き」への苦悩を乗り越えたラストシーン。
両想いでそのままハッピーエンドを迎えるのかと思いきや、「ここでいっしょに灰になろう」というセリフにはびっくりしました。
え、心中エンドなの!?と焦りましたが、・・・・・・よかったー(;`・ω・)

個人的には、ヨリマサと冴原が一番すれ違ってしまっている部分があそこなのではないかと思っています。

ヨリマサは、サマータイムも夏休みも終わって、重なった時間が失われることが悲しくて寂しくて仕方ない。だから同じ時間を生きるために吸血鬼になりたくて、それが法に違反するから一緒に灰になりたかったのでしょう。かなり本気で心中したかったようですし。

でも冴原は「それいいね」と言いつつ、朝になる前に寝ているヨリマサを置いてあっさり帰宅。

うーんドライww
とはいえ、エピローグの冴原の返信に彼女の本心が全て詰まっているのだと思います。

別の時間にいるみたいだけど、その時間は重なりあっているんだね。
だから寂しくなんかないんだよ。
ずっといっしょなんだから。
もう夏休みみたいには会えないけど、私はいつでもヨリマサのことを思っている。(本文より引用)

冴原ほどにヨリマサが割り切れるかどうかが、このカップルの未来を左右するのでは。
でも価値観が少しズレてる方が意外にうまくいきそうな気もしたりします。

ヨリマサみたいに刹那的で内向的&後ろ向きな人間は、冴原みたいなコに引っ張ってもらったほうが良いに違いない。

 

2人の恋はまだ始まったばかりで、きっと少し重なる時間をこれからも大事に積み重ねていくのでしょう。
それを予感させるほのぼのとしたエピローグに癒されました。

良い夏の恋の物語でした。面白かったです(´∀`*)

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