烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ2)


『烏は主を選ばない』(阿部智里著/文春文庫)★★★★★

烏は主を選ばない (文春文庫)
烏は主を選ばない (文春文庫)

前巻の感想はこちらから
烏に単は似合わない(八咫烏シリーズ1) | 晴れたら読書を
2015年6月刊。初出は文藝春秋2013年7月刊。
第1作「烏に単は似合わない」は若宮を巡るお后候補たちの争いを描いた作品でしたが、こちらはその時に若宮が何をしていたかを描く若宮サイドの物語となります。
1作目と表裏の関係にあたる第2作。単体でもかなり面白いのですが、1作目の直後に読むと2作合わせての傑作ぶりに震えます。

今回の語り手は若宮の近習となる少年。
彼の目から見る若宮は、意地悪で隠し事が多くて、それでも心を惹きつけてやまない魅力的な人物でした。

☆あらすじ☆
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、優秀な兄宮が廃嫡され、日嗣の御子の座についた若宮。世継ぎの后選びには大貴族の勢力争いが絡み、朝廷は一触即発の異常事態に陥る。そんな状況下で、若宮に仕えることになった少年・雪哉は、御身を狙う陰謀に孤立無援の宮廷で巻き込まれていく・・・・・・。

以下、ネタバレありの感想です。

 

北家の領内にある垂氷郷。その郷長の「ぼんくら次男」雪哉
ひょんなことから若宮に仕えることになった雪哉は、彼の側で「うつけ」と呼ばれる若宮の本当の姿を目にすることになるのです。

 

時系列としては、まさに1巻と同じ。
あれだけ桜花宮を放置していた若宮ですが、蓋を開けてみれば多忙っぷりがすごい。うーん、確かに来る暇はないな。

 

長束派との勢力争いに対し、無勢で応じなければならない若宮。
いつでもどこでも足を掬われかねない緊迫した情勢の中、それでも若宮はニヤリと笑って窮地を颯爽と切り抜けていくのです。これがめちゃくちゃ格好いい。
たまに「お前ぇえええ!!」と思うようなうっかりミス(後に計略と分かりますけど)をしてしまうところもご愛敬。
前作ラスト同様に露悪的な態度が目立つものの、1作目よりも人間味が増してさらに魅力的な人物として描かれていたと思います。
ドS皇子っぷりも板に付いてましたしw

 

そんな若宮の無茶振りに散々振り回される、今回の語り手・雪哉
ぼんくらがフェイクなのはともかく、予想以上の優秀さに舌を巻いてしまいます。
若宮の無茶振りに込められた真意を過不足なくあっさり受け取ったり、脅威の記憶力をみせつけたり。
近習になってからの、遠慮のいらない関係も微笑ましくて良かったです。
散々な目にあわされて「こいつ後で絶対に殴る!」って心に決めるのに、若宮の真意が読めちゃうからウヤムヤにするしかない不憫な小烏ww

 

この子が側近になったら鬼に金棒だね!主従萌えもあるしね!・・・・・・とか思ってたんですけどね(´・ω・`)

 

最後に明かされた雪哉の出自の秘密と、そのために生まれた鬱屈した感情には、気分が暗くなってしまいました。
若宮に「雪哉個人」を求めてもらえたこと誇りに思う気持ちがあったからこそ、余計に許せなかったんだろうなぁ。
それでも何とか和解してほしかったのですが、「忠誠心」の都合の良さを見てしまった以上、子どもらしい潔癖さを抑えることはできなかったのか。
それとも、敦房のようになってしまいかねない自分が見えてしまったのか。

利発な少年ですし、腹芸もできそうなのになぁ。醜い部分を見せるのが早すぎた感。
大人になって、もう一度出仕するとか、ないかなぁ・・・・・・。

事あるごとに「本物の金烏だもの」と嘯く若宮の姿には、彼の使命感と孤独が垣間見えたので、少しでも理解者が傍にいてくれることを願わずにはいられなかったのですが。残念です。

 

若宮と雪哉の主従物語としても面白かったのですが、次代の権力を巡るドロドロとした宮廷小説としてもかなり面白かったです。
カギを握る「内通者」については、路近だと思ってたのになぁ。
前作以上に伏線の配置が絶妙で、ラストでの怒濤の回収ターンには脳が熱くなるほどのめり込んで読んでしまいましたw

今回、特に印象的だったのは路近の言葉。

「忠誠だの、自己犠牲だの、綺麗な言葉に惑わされるなよ」
あんなのは、ただのーー
「ただの、美しい言い訳だ」(344頁)

宮廷の醜さを集約したような言葉と、それを体現したかのような敦房の態度に、若宮たちが生きる場所の過酷さをまざまざと見せつけられた気分です。
若宮の戦いはまだまだ続いていくのでしょうね。少しでも信じられる味方が増えると良いのですが。

 

2作目も最高に面白かったです!
引き続き3作目を読もうと思いますヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”

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