烏に単は似合わない(八咫烏シリーズ1)


『烏に単は似合わない』(阿部智里著/文春文庫)★★★★☆

烏に単は似合わない (文春文庫)
烏に単は似合わない (文春文庫)

2014年6月刊。初出は文藝春秋2012年6月刊。
長らく積んでいたのを後悔するほど面白かったです!!
深窓の姫君が、姉の代わりに皇太子の妃選びの場に出ることになったものの、そこは様々な思惑が絡む権力争いの場で・・・・・・という感じで始まる物語。
少女小説と児童文学を足して2で割ったような世界観の異世界ファンタジー+ミステリー風後宮小説でしたが、なんというか、この作品は少女小説読みにとってトラップだと思うんですよね。
気になる方は是非ネタバレを踏まずに読んでいただきたい。
シリーズの続きもすぐに読もうと思います。

☆あらすじ☆
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎである若宮の后選びが始まった。朝廷で激しく権力を争う大貴族四家から遣わされた四人の后候補。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれ魅力的な姫君たちが、思惑を秘め后の座を競う中、様々な事件が起こり…。史上最年少松本清張賞受賞作。

以下、ネタバレありの感想です。未読の方は要注意!

 

物語は、有力貴族である東家の二の姫(後の「あせび」)が、姉姫の代わりに皇太子「若宮」の后を選出する場所である桜花宮に送り込まれ、そこでお后教育を施された煌びやかな他の姫君たちと出会う、という感じに幕を開けます。

 

大貴族四家の勢力争いを左右する、皇太子の妻「桜の君」。
その座を賭けて対立するのは、4人の美しい姫君なのです。

 

男勝りで女傑な雰囲気の南家の浜木綿
色気ムンムンで高笑いが似合いそうな西家の真赭の薄
清廉な見た目とは裏腹に苛烈な感情をのぞかせる北家の白珠

強烈な存在感を見せる他の姫君に圧倒され(゜Д゜)ポカーンとなるあせびは、后教育など施されてこなかった世間知らず。
その無知ゆえに苛められたりするものの、彼女は彼女で得意の長琴を披露して自分を見下していた他の姫の鼻を明かしたりもするのです。
・・・・・・読み終わった後に思えば、このいかにもな「少女小説的主人公らしさ」がクセ者だったんだよなぁ。

 

あせびの視点で描き出される桜花宮は、まさに姫君達の戦場。

真赭の薄が豪勢な品を披露して西家の財力を誇示したと思えば、浜木綿の背後の南家がそんなものを披露する機会も与えないとばかりに「若宮」の動向に手を回す。
かと思えば、北家の武力を背景に白珠が暗躍して・・・・・・という感じに姫君たちは実家の力を武器に、しのぎを削る政争を繰り広げていくのです。

 

そんな中で、やっぱり(゜Д゜)ポカーンとしているあせび。

おいおい大丈夫かこの子、と心配しつつも、宝物庫での出会いとか花見台の時の若宮の笑顔とか文通とか、その他細々したアレコレで、「ああ、この子の純粋な恋が政争に明け暮れる他の姫君を出し抜くのね」と思ってました。

 

思っちゃってました。

 

終盤で白珠の本性が顕わになり、彼女の悲恋の果てに若宮が登場。そこで若宮が后候補たちを一人ずつバッサバッサ切り捨てていくときだって「これでいよいよハッピーエンドですな!」とか・・・・・・思ったのに・・・・・・

 

こんなの、どう考えても少女小説読みへのトラップじゃないですか!!!
完全に騙された!!!!

 

冒頭のモノローグは何だったんだよ。運命の出会いじゃなかったのかよ・・・・・・と呆然としていたところで終章の種明かし。
もう!もう・・・・・・!

よくよく考えれば宝物庫の出会いであせびは相手の顔を(口元だけとはいえ)見ているはずで、もし「彼」が若宮なら直後の花見台でのあせびの言動はおかしいんですよね。
あんなさも「下男って言ってるけど、どう見ても貴人ですよねー」って書き方してるからてっきりお忍びの若宮だと思ったのに。そうかそっちかー・・・。

 

あれだけ引っ張りまくった若宮も、登場してみたら強烈なお人で、自分の少女小説どっぷりなホカホカした脳みそにたっぷりの氷をぶち込まれた気分です。頭冷えたー。

でもまぁ、最後の浜木綿絡みのアレで、うっかりときめいてしまったんですけどね(〃´ x ` 〃)ホカホカ

 

そういえば、最初は一番イヤミで憎たらしかった真赭の薄。
矜恃の高さゆえの振る舞いであることが分かって、なんだか最後は一番好きなキャラにおさまりました。誰か彼女を幸せにしてあげて・・・・・・

 

ストーリーとキャラに血が上った感想になってしまいましたが、異世界ファンタジーとしても素晴らしい作品でした。
むしろ序盤はこの和風なファンタジー世界に魅了されて夢中になって読んでいましたし。

人間ではなく、人形と鳥形をとれる八咫烏の一族が住まう世界。
文字通りの「烏」の世界でありながら、平安時代を彷彿とさせる艶やかな雰囲気がとても素敵でした。
そして、その舞台が仙境のような現実離れした場所であることもまた魅力。
こういう雰囲気の和風ファンタジーが読みたかったのです。欲求を完璧に満たしてくれて大満足!

 

めちゃくちゃ面白かったです!これは続刊にも期待が高まりますね。
今回は「信頼できない語り手」のイレギュラーな作品でしたが、次巻以降は若宮がメインとのこと。
若宮は勢いにまかせたハッタリが得意そうなので(想像妊娠かよ!とツッコまずにはいられなかったあのシーンは最高に笑いました)彼主体になると躍動感ある物語になりそうで楽しみです。今回決定した「桜の君」とのロマンスもあるといいなー。

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