異人館画廊3 幻想庭園と罠のある風景


『異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景』(谷瑞恵著/集英社オレンジ文庫)★★★★☆

異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景 (集英社オレンジ文庫)
異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景 (集英社オレンジ文庫)

2015年8月刊。
孤独を抱える天才少女が、人の無意識を操る図像を解き明かす絵画ミステリーの第3弾。
今回出てくるのはブリューゲルの絵。そして、それを模した広大な庭園。
庭園に欠けているものを探すうちに、千景はある家族の問題に巻き込まれていくのです。
意外な真実を隠したミステリーも、千景と透磨の焦れったい恋愛も、どちらもとても面白かったです(*´ω`)

☆あらすじ☆
図像術の絵を求めて離島に住むブリューゲルのコレクターを訪ねた千景。波田野は邸の庭園でブリューゲルの絵を再現し、そこに図像術を込めようとしていた。庭園を完成させれば絵を見せると言われた千景は庭園の謎を追うが、透磨はそれが千景の父・伸郎の設計だと気づく。父の見えない悪意に苦しむ千景は、さらに波田野の息子が起こした事件に巻き込まれてゆき…。

以下、ネタバレありの感想です。

 

今回、図像術が込められているのは、ブリューゲルの絵。
これまでと同様にブリューゲルの様々な絵が登場し、そこに込められた図像の意味が千景によって解き明かされていきます。これが本当に面白い。
どんな絵なのか画像を見ながら読むと、さらに勉強になります。実際に鑑賞しに行ってみたいなぁ・・・・・・

ピーテル・ブリューゲルの作品一覧(Wikipedia)

 

ブリューゲルのコレクター波田野が持つ「イカロスの墜落」の真作を見せてもらう条件に、波田野が作ったブリューゲルの庭園に欠けているものを見つけ完成させなければならなくなった千景。
これをきっかけに、千景は波多野親子の問題に巻き込まれ、さらには父親・伸郎の悪意にさらされることにもなるのです。

 

波多野親子の問題に千景と父の問題を交錯させたストーリーは、なかなかに苦みが強く、千景や務の孤独に胸が苦しくなりました。

父親に逆らい、道を踏み外した「イカロス」。
断罪されるべき「イカロス」は誰なのか、という問いかけが父親から発せられていること自体に怒りを禁じ得ません。
子を愛せないことを、子の罪にするかのような欺瞞が許せない。
結局、波田野は子を愛せないことを図像術のせいだと思い込んでいただけなんですよね・・・・・・それがさらにやるせないのです。

 

千景の父親については、今後も罠を仕掛けてきそうな予感がします。
「毒」となりうる図像術を知る千景を、ただ危険視するだけの父親。
うーん。透磨の心配性をさらに過剰にしつつ、愛情を薄くした感じなのでしょうか。
にしても、やり口が陰険で腹が立つ!
いずれ直接対決する日がきそうですが、千景は立ち向かえるでしょうか。

 

愛を抱けない父がいる一方で、愛に突き動かされた母がいる。
それがあるからこそ、苦いだけの物語では終わらず、こちらまでなんだか救われた気がして、とても癒やされました。
まぁ、「母」の正体は意外でしたがw
がむしゃらに子を助けようとする彼女の勇姿がとても印象的でした。
千景の母は、どうなんでしょうね・・・・・・。

 

気になっていた千景と透磨の関係は、相変わらずのじっくりゆっくりw

ただ、透磨は1歩ずつ慎重に踏み込んでいってます。

「思い出せなくていいんです。おぼえてくれませんか。もういちど」(218頁)

失われてしまった思い出に複雑な感情を抱きつつ、それでも自分は味方なのだと必死に訴えかける透磨の健気さが・・・っ!(´;ω;`)

透磨の想いが早く報われてほしいものの、異質さゆえに孤独を飼い慣らそうとしてきた千景が簡単に心を開くことができないのも仕方ないのかもしれません。

固くこわばった深い傷が、あたたかく癒やされていくかのようで、千景は怖くなる。傷は、自分を支えている芯になった。今はそうして立っているのに、癒やされたらもろくも崩れてしまいそうだ。
そうなったら、どうやって生きていけばいいのだろう。(219頁)

透磨に支えてもらって生きていけばいいんですよ!!
・・・・・・と内心めっちゃ叫んでいたのですが、そうはいっても今はまだ怖いのでしょう。

それでも、千景は、透磨が自分を信じてくれていることを信じることができているわけだし、ゆっくりでも着実にふたりの距離は縮まっているんですよね。その焦れったさともどかしさに身悶えしつつ、この距離感にニヨニヨとしてしまいます( ´艸`)

 

あー・・・あと、空気を読まなすぎてイライラさせる京一については、「うん、わかった。こいつは透磨の踏み台なんだ」とやっと思えるようになりました。今では生あたたかい気持ちで登場シーンを読むことができてる・・・たぶん・・・。

 

今回もとても面白かったです。
長く続くシリーズになってほしいと思いつつも、透磨さん健気すぎて早く報われてと思わずにいられません。
4巻も楽しみ!!

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