流離の花嫁


『流離の花嫁』(貴嶋啓著/講談社X文庫ホワイトハート)★★★☆☆

流離の花嫁 (講談社X文庫ホワイトハート)
流離の花嫁 (講談社X文庫ホワイトハート)

2015年8月刊。
祖国への復讐心を胸に、敵国に嫁ぐ人質の花嫁の物語。
終盤が少し駆け足でしたが、設定は面白く、主人公2人の陰のある雰囲気は好みでした。
惜しい点もありますが、軽く楽しめる良いラブロマンスだったと思います。

☆あらすじ☆
かつて大国として栄華を極めたラスカリス帝国の皇女イレーネは、先帝と踊り子との間に生まれた望まれぬ子として、蔑ろにされて育った。新興国家ファルーク王国の侵攻から免れるために、和睦の証として人質として嫁ぐことを皇帝から命じられるイレーネ。だが逃亡を図ったために従弟を皇帝に殺されてしまう。故国への憎しみを抱えてファルーク王国に送られたイレーネの前に現れた王ジャファルは、漆黒の髪と琥珀の瞳を持つ美貌の主。その夜イレーネはジャファルに斬りかかり……! 一方、イレーネの真意がわからないジャファルは彼女に興味を抱くようになり、ふたりは次第に距離を縮めていく。

以下、ネタバレありの感想です。

 

衰退した祖国ラスカリスに命じられ、新興国家ファルークの国王ジャファルへ人質として嫁ぐことになったイレーネ
従弟を殺した祖国を憎んでいたイレーネは、ジャファルを暗殺することで祖国を滅ぼそうと画策。それは失敗に終わるも、ジャファルはイレーネの復讐に協力するようなことを言い出し、イレーネを困惑させるのです。

 

という感じに復讐譚っぽいスタートを切るのですが、その一方でジャファルの母后の問題も発覚。
内と外に火種を抱えた状態の中、イレーネとジャファルのラブロマンスも展開していきます。

 

1つ1つの要素がとても面白く、復讐心の背後にあるイレーネの不安定な感情や自責の念には、ぐっと惹きつける魅力がありました。
この作品って、イレーネが自分の迷いによって従弟を死なせたという自責の念から立ち直る物語だったわけですよね。最初は復讐譚だと思い込んでいて、復讐するのかしないのかに気を取られてしまったのですが、イレーネがトラウマから解放される物語としてうまくまとまっていたと思います。

そうはいっても、イレーネの祖国の問題や、母后の問題について、最後の最後で詰め込み&駆け足な纏め方になってしまったのは残念でしたが。もう少し盛り上げてくれても良かったかなぁ、と。

 

イレーネとジャファルのラブロマンスな部分は良かったです。
ゆっくりと互いに興味を持ち、それがもっと甘い気持ちに変化していく流れは素敵でした。
少女小説としてはもっと糖度があった方が好みでしたが、復讐や親子問題を抱えるふたりは脳天気に恋を楽しめない状況。糖度薄めなのは仕方ないですね。

 

貴嶋さんの次回作にも期待しています。
今回はエルトゥールル帝国シリーズに比べると世界観そのものの描写がやや薄めだった気がするので、またがっつりアラビアンな話が読みたいなぁとか思ったり。

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