嘘つきたちの輪舞


『嘘つきたちの輪舞』(一原みう著/集英社コバルト文庫)★★★★☆

嘘つきたちの輪舞 (コバルト文庫)
嘘つきたちの輪舞 (コバルト文庫)

2015年8月刊。
単巻モノとしては珍しい短編集。しかも1話ごとに別のイラストレーターがついている豪華仕様の1冊です。
内容は、甘さを期待して読んだらダメージを受けそうなお話ばかりなので、ちょっと心して読むことをオススメします。
少しずつ丁寧に心に傷をつけられ、最後は傷だらけの満身創痍となってしまいましたが、とても面白かったです。
ファンタジー、SF、ミステリーに味つけされた3本の短編。どの短編も描写の繊細さと物語の儚さや不条理が、心をピリッと痛ませるのです。
爽快感や糖分はほぼ得られないので(私見)、シリアスで重い話が苦手な方はご注意を。

☆あらすじ☆
憂鬱な毎日を送るアンナのもとに、10年ぶりの手紙が届いた。差出人は、アンナの腹心の侍女だったリリヤ。「今こそ、あの事件の真相についてお話しできるのではないかと思い、筆をとりました」―10年前、名家の子息・キリルに見初められ、誰もが羨む結婚を間近に控えながら、キリルの弟との密会を重ねていたアンナ。その先に起きた、不可解な事件…。リリヤの手紙が明かす、衝撃の真相とは…!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

妖精の庭(イラスト・凪かすみ)

夏の薔薇園で出会い、結婚を誓った少女を忘れられないまま、別の少女との結婚する日を控えていた青年貴族オレグ。そんな彼の前に、あの日の少女が現れて・・・・・・というエピソード。
別の女性と結婚する直前に昔の恋に走る男はどうなんだ?とか、そんなに好きなら名前くらい覚えておくか探しに行けよ!とか、オレグに対しては色々もやもやしたものの、クリスティーナと公爵の物語としてみればおとぎ話的で素敵なロマンスだと思えるお話でした。
いやほんと、公爵が素敵すぎて。願いが叶った妖精の庭で、クリスティーナが再び公爵と円舞を踊れますように。

 

夏の夜の夢 〜八月の幽霊〜(イラスト・雲屋ゆきお)

これが一番まともに少女小説をしていた気がします。でも甘くない。そういう仕様なんですねわかります。
両親を事故で亡くした少女アリシアと、彼女の前に、毎年、夏の一夜だけに現れる「幽霊」とのラブロマンス。タイムリープミステリーな味付けが面白いお話でした。
伏線が徐々に綺麗にかちっと嵌まっていくように、うまく練られた構成が秀逸なんですよね。
が、真相もラストも悲劇的すぎる(´;ω;`)
不運に不運が重なった結果、誰の心にも傷が残るというのが切ないですね・・・・・・。
今際の祖母の「自分で行くのです」という言葉がとても印象的でした。

 

嘘つきたちの輪舞(イラスト・カズアキ)

表題作。これを最後に持ってこられたため、読後感はどこまでも重く暗く、私の心のダメージも半端ないものとなってしまいました。
暗い過去を抱えるアンナのもとに届いた一通の手紙。それによって、アンナは自分の人生を狂わせた10年前の出来事を回想していくのです。

登場人物の誰も彼も嘘つきばかり。
アンナ、キリル、リリヤの関係については序盤で予想がついたものの、それを繊細かつ丁寧に描いていくものだから、ゆっくりゆっくり心にひっかき傷をつけられていく気分になりました。

誠実だったのはエドゥアルドだけでしょうか?
でも彼は兄の婚約者を寝取っていたわけだし・・・・・・。
その恋すら報われなかったのですから、壮絶に苦すぎる後味になってしまいました。彼の塩対応には私まで傷ついた。

考え足らずなアンナは「貴族の結婚」に翻弄された被害者ともいえそうですが、それにしたってエドゥアルドとの結婚のために徐々に思考が黒く塗りつぶされていく姿は背筋が凍りましたし・・・・・・。最後の振る舞いには眉をひそめざるを得ない。

キリルとリリヤの恋も・・・・・・うん・・・・・・。

少しずつ狂った歯車が、その歪みを直せないまま悲劇の結末へ一直線。
ここまで不条理な少女小説は久々に読みました。

あとがきで「少女小説向きではない」と書かれていましたが、うーん、否定できない(ノω<;)
でもこういう少女小説があっても良いと思うんですよね。心に爪痕を残すようなガツンと重い読後感が素晴らしい。

 

重すぎる読後感に疲弊させられる1冊でした。
しかしこのぐたーっとなる読み応えがたまりません。しばらくは読み返したくないけれど、思い出したときに手に取りたくなる1冊かも。
たまにこういう少女小説があると気分転換になって良いですね。まぁ、そこからさらに気分転換しないと浮上できないんですけど。

ああ、枯渇した糖分を可及的速やかに摂取したい・・・・・・(´-ω-`;)

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