廃線上のアリス2 廃駅の天使


『廃駅の天使 -廃線上のアリス2nd-』(マサト真希著/ぽにきゃんBOOKS)★★★★★

廃駅の天使 -廃線上のアリス2nd- (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
廃駅の天使 -廃線上のアリス2nd- (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)

前巻の感想はこちらから
廃線上のアリス | 晴れたら読書を

2015年8月刊。
「廃線上のアリス」のまさかの続編。といっても、単巻ものとして楽しめるようになっており、主人公も違います。ただ世界観は共通で、前作との繋がりがみえてくるところも。
前作のイメージが夏の晴れ渡る青空なら、本作はどこまでも広がる真っ白な雪景色。
作品世界が相変わらず美しい色彩を放っていて素晴らしかったです。
雪の中の廃駅で出会った少年と少女。互いに暗い過去を抱える二人の哀しくて切ないラブストーリー。それでいて救いのある物語となっていて、爽やかな読後感でした。

☆あらすじ☆
雪国の廃駅で、少年は死を願う少女に出会う。
岩手県花巻市――宮沢賢治の生誕地。他人と深く交流せず生きてきた十七歳の少年・遠峰谷晴は、雪の廃駅に佇む一人の少女と遭遇する。彼女の名は春告久芙美。孤独を選び、けっして笑みを見せない彼女に惹かれる晴。
一方、彼女との出会いがきっかけのように、晴の周囲で不可解な脅迫事件が起こる。少女の心を殺したのは誰か。死を願う理由はなにか。謎の脅迫者の真意とは……?宮沢賢治の物語が二人を結び、その過去を解いていく。切なく鮮烈な青春ラブストーリー、第二弾!

以下、ネタバレありの感想です。

 

舞台は宮沢賢治縁の地、岩手県花巻市。
主人公遠峰谷晴は、そんな町にある無人の廃駅で、どこか印象的な少女春告久芙美と出会います。
その後、晴のクラスに転校してきた芙美に対して、晴は次第に心惹かれていくようになるのです。

 

頑なに他者との交流を避ける芙美。
芙美ほどでないにしても、他者と一線を引いている晴。

似たもの同士のふたりは、宮沢賢治の作品世界を通して次第に距離を縮め、かと思えば距離を置き、つかず離れずのもどかしい関係を作っていきます。
なぜあと一歩、踏み込むことができないのか。二人はそれぞれ何を隠しているのか。
物語が進むにつれて、謎めいた「釘」の存在が不穏な影を落とし、二人の過去が生み出した心の闇を暴いていくのです。

 

芙美は、「事故」によって前作主人公・朗と一緒に深く傷ついたもうひとり。
愛した恋人の死に責任を感じる彼女の姿は前作でも少し描かれていますが、当人が出てくるとその想いの苦しさに胸が詰まるようでした。

そんな彼女にまとわりつく悪意の醜悪さには言葉もなく。
実態のない「噂」という名の悪意。無責任なそれが、どれだけ人の心を傷つけるのか。
今のSNSでどこまでも繋がれる社会って、逃げ場がどこにもないってことなんだよなぁ(´-ω-`)

 

一方の晴の過去も予想以上に重くて、読んでいて苦しかったです。
勘違いの連鎖が様々なトラブルを招いたわけですが、その根っこにある「自分がもし釘の存在を伝えたていたら」という晴の後悔はどうにもならないものですし・・・・・・。

 

芙美も晴も、客観的には何も悪くないはず。
それなのに他人が自分を許すことも、自分が自分も許すことも、どちらも受け入れることができない。
断罪されなければ前に進めない二人の姿が、とても哀しい。

だからこそ、二人の心を軽くした祖母の言葉がとても優しく心に響いたのでしょう。

「ただ生きるために生きていくだけで、かまわないの」

生きているだけといっても、これって結構難しいことだと思います。人は生きること以外も色々考えてしまうものですから。
でも、「生きているだけで良い、幸せでなくとも生きていれば良い」と人から言われて自分も思うことができるなら、もうちょっとこのまま生きてみようかなって考えることができそうですよね。そして、それはとても大事なことだと思うのです。生きていれば、良いことだってあるさ。

 

再び前を向き始めたふたりが迎えたハッピーエンド。
辛くて重たい過去を乗り越えて、明るい未来を語る晴と芙美の姿に心からホッとしました。
ただ単純に過去を忘れたということではなく、「名前を捧げる」ことで前を向いたというのが印象的。
彼女の一部は過去にすでに欠けていて、だけど晴が愛したのはそんな今の彼女。切なくて儚くて綺麗な恋だなぁ。実ってくれて良かったです。

 

今回も本当に素晴らしかったです。
前作のラストは心に引っかかりを残すものだっただけに(あれはあれでドラマとして面白いのですが)、終わり方をみれば本作の方が好みかな。それと、祖母の言葉に私もちょっと救われた気持ちになりましたしね。もうちょい頑張って生きてみよう!

 

さて、3巻は出るのでしょうか?

気になるのは最後に出てきた朗。
電話の様子からすると鑑定結果は望まないもののようでしたが・・・・・・これを続刊フラグとみるべきなのかどうか(朗とアリサの関係をさらに掘り下げていくのは見たいような怖いようなw)

1巻が夏、2巻が冬。そして「輝く春の海」という言葉的に、もし3巻が出るとしたら春の物語になるのでしょうか。
3巻が出るなら、読むのを楽しみしたいと思いますヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”

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