時砂の王


『時砂の王』(小川一水著/ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

時砂の王
時砂の王【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2007年10月刊。
面白かった!!
時空を超えて人類の敵と戦う男と、彼と友に戦うことになる卑弥呼。
彼らの出会いから始まる、壮大な時間SF。男が戦いに懸ける想いが切なく、戦いの中で築く卑弥呼との哀しくも美しい絆がとても印象的な作品でした。

☆あらすじ☆
西暦248年、不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼を救った“使いの王”は、彼女の想像を絶する物語を語る。2300年後の未来において、謎の増殖型戦闘機械群により地球は壊滅、さらに人類の完全殲滅を狙う機械群を追って、彼ら人型人工知性体たちは絶望的な時間遡行戦を開始した。そして3世紀の邪馬台国こそが全人類史の存亡を懸けた最終防衛戦であるとーー。期待の作家が満を持して挑む、初の時間SF長篇

以下、ネタバレありの感想です。

 

邪馬台国×時間遡行SF、というのがもうテンション上がりますねw

 

邪馬台国の女王・卑弥呼である彌与が出会ったのは、2300年後の未来からやってきた人型人工知性体・メッセンジャー・O(オーヴィル)
彼らの敵は、人類の殲滅のために時間を超えて襲い来るET
物語は、彌与とOの出会いから始まり、「Oのこれまでの戦いの軌跡」と「彌与とOの戦い」が交互に描かれていきます。

 

この作品で特に面白かったのは「時間枝」という概念。

時間を遡行し、過去に干渉することで「未来」は枝分かれしていく。
オーヴィルがどれだけ「人類の未来を守る」という使命を果たそうと戦い続けても、彼が愛したサヤカの待つ未来は失われたまま。
しかもETとの戦いに負けるたびに、その時間枝を見捨てて時間遡行しなければならないのです。

この報われない悲壮感がたまりません。

 

さらには遡行が進むことで、新たに生まれた時間枝の先にある「未来」から敵にも味方にも援軍が送られてきたりして、戦いはますます壮絶なものとなっていくのです。
このややこしさ半端ないです。イタチごっこか(・ω・;)

 

辛い戦いの中でオーヴィルが抱える葛藤は、読んでるこちらまで苦しくなるような重さがありました。
人類とは過去から未来に至る大きな流れであり、個々人の人生をより合わせた大樹のようなものである。
そんなサヤカの価値観を尊重するからこそ、彼の中の虚無感は根深く、より苦しい形で自分の使命と向き合わなければならなくなったんですよね・・・・・・たったひとつの枝を未来へつなげられれば良いと割り切ることができれば、もっと楽だったのかもしれないのに。

 

そうして、オーヴィルたちの戦いの「最後の防衛戦」となった西暦248年。

彌与とOが少しずつ絆を築いていく姿は少しニヤニヤできたりもして和んだのですが、彼らの足を引っ張る内輪争いにはげんなり。
というか、Oたちがここまで苦戦したのも人類側の不理解不協力と、利権争いのせいなんですよね・・・・・・。なんかもう「こんな祖先でごめんなさいホントごめんなさい」って謝りたくなりました(´・ω・`)

 

内の火種だけでなく、ETもどんどん強くなり、窮地に追いやられる彌与とオーヴィル。
最後の戦いの盛り上がりはとにかく素晴らしかったです。
ここに至るまではどちらかというと静かで哀しい雰囲気が強かったのですが、それだけに最後の熱さにグっとくるというか。
特に彌与の「黄幡を立てよ!」という号令から、王を失った人々の心に熱い思いが戻っていくシーンは鳥肌ものでした。ほんとに最後まで強い女性だったなぁ。

 

素晴らしい作品でした。とても面白かったです。
ちなみに次は「天冥の標」シリーズに挑戦する予定(`・ω・´)ノ

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。