魔女殺しの英雄と裏切りの勇者


『魔女殺しの英雄と裏切りの勇者』(永野水貴著/MF文庫J)★★★☆☆

魔女殺しの英雄と裏切りの勇者 (MF文庫J)
魔女殺しの英雄と裏切りの勇者 (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

2015年7月刊。
「白竜の花嫁」(一迅社文庫アイリス)の永野水貴さんが少年向けライトノベルを書くということで(しかもMF文庫J)、ちょっとドキドキしながら発売をまっていた1冊。
作風的に予想はしていたんですけど、予想以上に暗い話でした。なかなか辛い・・・・・・。
殺すはずの魔女に寝返った裏切りの勇者。その弟子である主人公は師に真意を問いただし魔女を殺すため、次代の勇者になることを目指す、という物語です。
少年向けレーベルに進出した心意気を買いたい作品でした。

☆あらすじ☆
“裏切りの勇者”。―それが、ルカの師であるエスベルトの呼び名だった。魔物を引き連れ世界へ侵攻する厄災“魔女”。それを討ち倒し世界を救う“勇者”。勇者が魔女を討伐する―何度も繰り返されてきたその歴史は唐突に終わりを迎える。世界を救うはずだった勇者は、世界を脅かす魔女に下り、人類の敵となった―。人々は次なる勇者を求めた。魔女を―そして裏切りの勇者を殺せる“英雄”を。ルカは剣を振るい続ける。師匠を追い、真実を知り、師を奪った魔女を殺すために。これは決して語られざる物語。魔女と勇者と英雄の紡ぐ、この世界最後の英雄譚。

以下、ネタバレありの感想です。

 

主人公は魔女を殺すことを目的として日々鍛錬に励む勇者候補生ルカ
ルカは「魔女」に寝返った「勇者」エスベルトの弟子であり、そのために他の候補生たちから蔑まれ続けて過ごしてきました。
しかし彼女の心にあるのは師匠の裏切りに対する疑問と、魔女への強烈な憎悪だけ。
そうしてルカは魔女を殺して師匠に会うため、次代の「勇者」を目指すのです。

 

一方、物語は少し時間を遡り、「裏切りの勇者」エスベルトの人生も描いていきます。
彼がどういう人間で、どういう女と恋をし、ルカを連れた旅の果てになぜ魔女へ寝返ったのか。
ルカが知りたかった謎が、ルカの物語に挟み込まれる形で少しずつ明かされていくのです。

 

この構成は面白かったと思います。
エスベルトの人間性や過去を知れば、ルカが師匠が魔女に寝返るはずがないと主張することにも納得するし、現状への疑問は深まりますから。

 

ただ、それにしても暗かった・・・・・・。
全編に立ちこめる陰鬱な雰囲気が苦しい。
これが少女小説のときの永野さんであれば「ヒーローとの恋」という要素が重要な位置に置かれて、それによってシリアスが緩和されたりもするのですが、今回はそれがなくて個人的には寂しかったりしました。
いえ、恋愛自体はこの物語上も重要なんですけど、少女小説のときとはだいぶ毛色が違いましたので・・・・・・。

 

ルカが師弟関係以上に想うのはエスベルトで、その想いはそのまま魔女への憎悪に転換し、それを動力源にルカはがむしゃらに突き進むのです。
でも、その突き進んだ先に待つのは、ルカにとってあまりにも残酷な真実。

 

エスベルトの過去を知り、メイディの存在が出てきた段階で察することができる結末ではあるんですが、いざ激突のシーンがやってくると重すぎて苦しい。
しかも、そこからさらに明かされる事実とエスベルトたちの願いも更に残酷なんですよね・・・・・・。

 

人類全体からすれば、これは悪循環を断ち切ったハッピーエンドなのでしょう。
でもルカ当人からすればハッピーエンドなんて言えるのかな?
魔女との対決後の展開はバッドエンドの後のエピローグのような、どうしようもない雰囲気を感じてしまいました。頑張ってきた主人公の報われなさがきつい。

 

うーん、アランとの関係については付け足し感が気になってしまいました。
でもあれでルカも少しは救われたと言えるのか。ううむ。

 

ちょっと力が入りすぎた作品のように感じました。
悲劇として一貫しており、最初に設定された結末へと突き進むスピード感も素晴らしかったのですが、正直、読んでいてとても疲れる物語でした。

今回は重い物語で感想も暗いものになってしまいましたが、少女小説作家がレーベルを超えて少年向けを書いたという、そのチャレンジ精神を讃えたいです。
次はもう少し力を抜いた新作をお待ちしています(`・ω・´)ノ

魔女殺しの英雄と裏切りの勇者 (MF文庫J)
永野 水貴
KADOKAWA/メディアファクトリー
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